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Willem Kuyken博士インタビュー(Part1/3)

Oxford Mindfulness Center長であるWillem Kuyken博士への、Amir Imani氏によるインタビュー(Part1/3)です。
※なお、下記はInternational Mindfulness Center Japan担当者が概訳したものであり、内容の詳細に不正確な部分があり得ることをあらかじめご了解の上、ご覧ください。

Amir:みなさん、再びご参加いただき有難うございます。
みなさんにお届けしているこのマインドフルネスに関するウェビナーは、マインドフルネスの実践と科学について理解を深める機会を提供するために企画されました。このシリーズの初回にはJon Kabat-Zinn博士にお話しをいただきました。博士はマインドフルネスの基礎的な理論と実践についてお話しされました。そして、本日は、Oxford大学のWillem Kuyken博士をお招きしています。
皆さんのご質問にもお答えしていきたいと思います。時間の限りがあり全ての質問にはお答えできないと思いますので、特に関連の深いものに絞らせていただくことになると思います。

Kuyken:Amir、このような機会をいただき光栄です。本日は、マインドフルネス認知療法について科学的、実践的な側面からお話ししたいと思います。今日は50名を超える方々がご参加いただいています。私は、このような時にはいつも、人間性の普遍さというものを感じます。
本日お話するのは、マインドフルネスの4つの異なる領域についてです。すなわち、マインドフルネスとは何か。マインドフルネス認知療法(MBCT)とは何か。MBCTの理論的、科学的な背景について。最後にMBCTのこれまでと今後の進化について。マインドフルネスを言葉で表現したり定義したりすることは、言葉でレモンの味を表現しようとすることに少し似ています。一番よいのは、実際に味わってもらう機会を提供することです。それではまずは数分間、マインドフルネスの練習をすることから始めたいと思います。

(目を閉じる)
まず、画面とそこから聞こえる音に向いている注意をそこから離し、その注意を集め、一度内側に向けます。そして、もしよければ姿勢を整えて、しっかりと目覚め、気づきをもって安定した姿勢をとります。自分の体験に目覚め、以下のような考えを手放していきます。概念的な考えとしての「この人はどういうことを言うだろうか、このウェビナーではどういうことが話されるのだろか」といったことを。そして、自らの体験に直接気づきます。よければ呼吸の感覚に意識を向けてみてください。自分自身への素晴らしい贈り物によって、何かを行うとか理解するということを手放し、ただ、自分が今ここあることに安んじます。この瞬間に呼吸や体の感覚とともにあります。それらの感覚は何も変える必要が無いもので、今この瞬間の自らの体験や呼吸とともにあることをただ眺めるようにします。ベルに音が鳴ったら、それがそのまま耳に入ってくるままにさせます。
(目を開け、鐘を鳴らす)

ここで少し時間をとって、マインドフルネスという言葉の解釈について触れたいと思います。その情景を理解することが重要だと思うからです。私達が実際にトレーニングを行い、養っているものは何かということについて。マインドフルネスの理解に関する解釈の最初の部分は、注意と気づきです。
先ほどの練習でやっていたことは、その瞬間に感じる体や呼吸の感覚に注意を向けることです。これがマインドフルネスというものであり、重要なことは気づきを保とうとする態度であり、その実践において好奇心と興味、そしてコンパッションをもって取り組むことです。
これがマインドフルネスとは何か、マインドフルネスとはどういうものか、ということです。そして、なぜマインドフルネスが必要なのか、ということもあります。マインドフルネスのトレーニングは大きな意味で意図を必要とします。意図的であることは、自らの心のトレーニングについてより良く理解することの助けになり、それにより、私達はより大きな智恵、情熱、コンパッションをもって生きることができるようになります。

35年ほど前のことになりますが、私の祖父が若くして心臓発作でなくなりました。今と同じような環境であれば、おそらく、祖父は、あと25年は生きていただろうと思います。高血圧のほうが先に影響していたでしょう。心臓発作に見舞われたとしても、より良く治療が行われ、生き延びた可能性が高いと思います。心臓の病やその治療について、この50年間で、私達の理解は高まりました。同じように、自らの人生を心理学やうつ、マインドフルネスに捧げてきた人もいます。
これからの50年間も、心についての理解やトレーニングに同じような進歩があればと願っています。私が考えるに、Jon Kabat-Zinnが成し遂げた業績や、それらを応用したマインドフルネス認知療法といったものは、心の理解、トレーニングに関するものです。その心というものは、より大きな智恵についての理解、研ぎ澄まされた感性を持って生きることに資するものです。

ある一人の男性の話をしましょう。15~20年前のことになります。彼の名前はCohenといいます。彼は20年に渡って、鬱になったり、回復したりを繰り返していました。その彼が私に会いに来て言うには、10代のころからずっと鬱に苦しんでいるということでした。彼は鬱が再発するパターンから脱する方法を探していました。彼は学校の先生で、10代の子供を二人もつ既婚者でしたが、鬱になるたびに何ヶ月も学校を休んで家にいなければならず、そのようなことが起きないように、私のマインドフルネス認知療法のクラスに参加しました。そのコースを通じて、彼は自分の鬱再発の引き金になるものが何かということについて理解する力を身につけました。それらの引き金となるような事柄に違うように対応することができるようになったのです。彼はどのようにして、自分自身の人生を変え、長期的な鬱を乗り越えることができるようになったのでしょうか。

マインドフルネス認知療法は8週間のコースで、週2時間インストラクターの指導のもと行うものです。そこでは参加者は、鬱予防のためにマインドフルネスと認知行動のトレーニングを行います。その内容は、いま画面でお見せしている本のなかに全て書かれています。この本が出版されてから18年ほど経ちますが、その間にMBCTの効果を示すエビデンスが示されて来ました。スクリーンでシェアしているスライドを見ながら少しその話をしたいと思います。

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これは数年前に医学雑誌のJAMA psychiatryに掲載したメタ分析です。これは9つのランダム化比較試験の結果です。もし、このPDFにアクセスできないとか、図書館に行けないという方は、メールをいただければ喜んでお送りします。この分析は、MBCTを他の9つの比較対象と比べた結果を示しています。
そして、疑いなく、MBCTは効果のある治療方法であると言えます。このスライドは、最も厳格な条件下で行われたMBCTのテストのものです。

というのも、これは3つのテストと比較したもので、MBCTは他のすでに行われている治療とともに画面の上にあります。そして、下の方は、最も良い治療法である抗うつ薬を用いたものと比べたものです。ここでわかることは、MBCTプログラムを通じてマインドフルネスを学ぶと、1年間に渡り、抗うつ薬を適量服用するのに匹敵するくらいに、良い状態でい続けるスキルが身につくようになるということです。

次にご紹介するのはとても印象深い研究です。この研究はとてもたくさんのランダム化比較試験を用いて様々なタイプの精神疾患に対するマインドフルネスベースの介入を比較したものです。

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142の研究と12,000人の参加者によるものです。これは、その試験がどのくらい厳格であるかという観点から、比較する対象のない試験から、現状の最も厳密なレベルの試験までと比べて、グレードづけしました。その結果を見ると、精神疾患に対するマインドフルネスベースの介入はとても有望であることがわかりました。しかし、そのほかの現行の治療に比べると、それらの効果量が小さく、そのことは予め予想していたことではありました。なぜなら、私たちがすでに知っている業績と比較したからです。

2/3へ続く

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募集中のプログラム

◎MBCT(マインドフルネス認知療法) 2020年8月22日

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開講日:2020年8月22日〜10月17日 毎週土曜日19:45-22:15
講師:井上清子(MBCT Certified Teacher / University of California San Diego)
場所:オンラインZoom
詳細はこちらより

◎MBCL(コンパッションのマインドフルネス) 2020年9月14日

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開講日:2020年9月14日〜11月9日 毎週月曜日19:45-22:15
講師:井上清子(MBCL Certified Teacher)
場所:オンラインZoom
詳細はこちらより

最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!