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ウォーキング・メディテーション(歩く瞑想)

先日、「ストレスが軽減するマインドフルコーヒータイム」というタイトルでコーヒーを淹れて飲む時間に感情や身体の感覚に意識を集中したり、呼吸に集中したりすることについて書きました。コーヒーを淹れて飲むという日常の動作の中でできるものなので、時間がない人や気軽にメディテーションを取り入れたいという人にはとても便利かと思います。今回は、歩くという最も日常的な動作の時に心を集中してマインドフルになることができる「ウォーキングメディテーション」というマインドフルネスのエクササイズを紹介したいと思います。

ウォーキング・メディテーションも座って行うメディテーションと同様に心を今に集中するのが目的です。普通は歩くというのは、目指しているところに着くことが目的です。歩いている間にすでに目的地のことについて考えたり、通勤時だったら会社に着いてからやることを考えたり、歩くという行為だけに集中することはないかと思います。ウォーキングメディテーションでは、歩いている時の筋肉を始め自分の身体の中に起きる感覚、足と地面がふれあう時の感覚などに意識を向けて観察します。

私は2015年にベトナム出身の僧侶、ティク・ナット・ハン師率いるプラムヴィレッジのお坊さんたちが来日した時に、ご縁で通訳のボランディアをさせていただき、そこでウォーキング・メディテーションを教えていただきました。参加者とお坊さんたち全員で会場の増上寺の周りをゆっくりと一歩ずつ歩き、貴重な体験をさせていただきました。残念ながらこの時すでにハン師は身体の調子が悪く来日がかなわず...。

ウォーキング・メディテーションのやり方

では、ウォーキング・メディテーションのやり方です。部屋の中でもできます。部屋を行ったり来たりしてやってみて下さい。少なくとも10分は続けてみてください。

① このメディテーションでは両足が前後離れないように歩きます。手は右手で左手を握り身体の前か後ろで手を組みます。目は開けたまま2メートルくらい先を見ます。
② 左足を前に出します。ちょうど足の右足のつま先と左足のかかとが一直線になる歩幅です。足を動かしながら、心の中で「左足を前に」と心の中で言い、ゆっくりと足を前に出します。足が地面に着く感覚、足を動かした時の筋肉の動きなどをじっくり観察します。
③ 右足も同様に前に出して進みます。
④ 行き止まりに着いたら、足を揃えて「止る止る」と心の中で言ってください。折り返す時は、90度ずつ足の方向を変えて、心の中で「右に曲がる、右に曲がる」と言います。逆方向に向いたら、また「止まる、止まる」と言います。
⑤ そして、最初と同じように、「右足を前に」、「左足を前に」と心の中で言いながら、ゆっくりと歩きます。動きと言葉は同時にします。動き出す前や動きを始めてからではなく、同時です。
⑥ 何か思考が浮かんで来たり、感情が変化したり、身体に感覚を感じたら、一瞬立ち止まって、それらを観察して、「疲れた、疲れた」や「ハッピー、ハッピー」、「眠い、眠い」など、心の中で言葉に出して言ってみて下さい。痛かったら「痛い、痛い」と言ってください。それらの思考や感覚が収まってきたら、また歩き出してください。

普段、オフィスなどで座っていることが多いと思うので、ウォーキング・メディテーションをすることは歩くよい機会になります。昔は1日20キロや30キロくらい平気で歩いていたそうなので、現代人は本当に歩くことが少ないかと思います。また、とてもゆっくりと繰り返し同じところを歩くので、このメディテーションを続けると我慢強さを養うことになります。あと、ゆっくりと筋肉を刺激するので、消化器官にいい影響があります。ウォーキング・メディテーションをすると、終わった後の集中力が持続することを実感するかと思います。

*写真は数年前に京都の御所で撮った桜と、増上寺で撮ったプラムビレッジのお坊さんたちです。