Week 6-1 脳が変化する
マインドフルネスを少し積み重ねるだけで脳に大きな変化がもたらされます。
マインドフルネスを短期間行った効果についての研究結果が報告されています。(Tang, 2007)
研究者らは、無作為に選び出した生徒に対して1日20分のマインドフルネスプラクティスを行いました。コントロールグループ(対照群)と比べて、プラクティスを行った生徒は、葛藤の解決など脳の注意統合機能(executive attention)の向上が見られた他、気分やエネルギー(やる気)に関わるポイントが上昇しました。一方で、ストレスに関係する反応(唾液中コルチゾール値)には減少が見られました。
対象者;学生40名
介入;1日20分5日間のマインドフルネスを含む瞑想トレーニングintegrative body–mind training (IBMT)
Tang, Y.-T., Ma, Y., Wang, J., Feng, S., Lu, Q., Yu, Q., Sui, D., Rothbart, M.K., Fan, M., & Posner, M.I. (2007). Short-term meditation training improves attention and self-regulation. Proc Natl Acad Sci,. 104, 17152-17156.
この研究では、これまでマインドフルネスを行ったことのない人でも、その効果を享受できるということが示されています。
では、どうしてそのようなことが実際に起こり得るのでしょうか。
マインドフルネスのトレーニングと脳内機能の統合作用について、ダン・シーゲル氏は次のように説明しています。
「マインドフルネスが幸福感を高める理由は、プラクティスを行うことで、思考、感情、習慣付いた思考回路などのマインドの働きをより正確に理解することができるようになるからです。これはアウェアネスの高まりによるものであって、マインドに起こってくる流れを意図的に変えることができるようになるからです。マインドフルネスによってマインドに生理的な変化がもたらされるのです。」
彼は更にこう続けています。
「神経細胞のニューロン発火は習慣化しているため、同じ反応と感情が長きに渡って刻み込まれることによって鬱や不安障害などが起こるのです。従って、もしこの脳内の反応を断ち切ることができれば精神的な苦しみを軽減し、内側の世界を精神的な健康の方向へ成長し高めて行くことができるのです。このアテンションシフトは、マインドを用いて脳内の様々な回路を巡るエネルギーと情報の流れのチャンネルを合わせることによって、脳内の活動パターンを変えることができるということです。このようなマインドフルプラクティスは脳内の活動を意図的に作り出していき、それを繰り返し行っていくことで、延いては個人の性質へと導きます。これを”脳の可塑性”といいます。このようにして新しい脳内の回路が繰り返し活性化されることで、シナプスの結合が高まり、強化され、成長していくのです。マインドフルネスプラクティスが脳の可塑性に働きかけ、シナプスの結合を変えていき、個人の性質として定着するメカニズムです。」
気づき(アウェアネス)を多く向けると、習癖が変わるだけでなく、プラクティスを繰り返し行うと、新しく、より健康的な習癖を作り出すことができるというのです。
つまり、マインドフルネスのプラクティスを持続的に行うことが、たとえ1日に20分でも、様々な事柄に対するあなたの人生への対応が生理的に変わってくるということです。
<参照>
Siegel, D. J. (2007). Mindfulness training and neural integration: differentiation of distinct streams of awareness and cultivation of well-being. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 2, 259-263. [Article]
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