デンマークで子どもが不登校になったら。
先日、デンマークで子どもの精神の課題に取り組む団体が主催する「不登校」がテーマの勉強会に参加した。そこで団体の代表の方が、自身の子供が不登校になった際の体験談を語ってくれた。(※時代や自治体によって対応が異なっている可能性がありますが、あくまでも私が聞いた内容から記述しています)
息子が小学3年生の頃から学校を休みがちになり、頭痛、腹痛、朝起きられないという症状を訴えるようになったという。学校には友達も居て楽しそうにしているのになぜ?と疑問に思ったそう。
その背景には、離婚による家庭環境の変化等、あらゆる環境の要因があったそうだが、学校に関しては、担任の先生が病欠になると頻繁に代理の先生が変わること、集団行動が苦手なこと等があったという。
最初の頃、息子が学校を休みがちになると、先生から「病気じゃないなら学校に来させてください」と言われたという。そして自身も親として、息子を学校に行かそうとプレッシャーをかけてしまった時期もあったという。
しかし息子の様子を側で見て、これは何か支援が必要だと、まずは学校の先生に相談。そこでは「配慮が必要な授業では事前に『準備』をする等して対応していきます」と言われたものの、先生との間で『準備』の解釈や具体的な対応についての擦り合わせは行われず、息子は学校生活でのストレスを訴え続けたという。
次に自治体に直接助けを求めることを決めた際には「母親としてのスティグマを感じた」と語った。そうしたやっとの思いで助けを求めたものの、自治体の専門チームからは「ここに連絡するのはあなたではなく学校の先生です」と言われ対応してもらえなかったという。
その時は「誰も助けてくれない」という絶望感や「この先息子の将来はどうなってしまうのか」という不安感でいっぱいになったそう。
そうした苦労の中、自身で民間のカウンセリングプログラムを見つけ、そこに通うようになってから息子の状態が徐々に改善していったという。2年後には再び学校に行けるようになり、今では成人を超え、大学に通っているという。
この経験から彼女は団体を立ち上げ、精神的な課題を抱える子どもとその親へのカウンセリングや啓蒙活動を行っている。
この一連のストーリーを聞いて少し驚いた。勝手なイメージで、デンマークでは公的なサポートが充実しているから、そもそも不登校っているのかな?と思ってしまっていた。
でも彼女のストーリーを聞き、会場に集まった当事者の親御さんたちの姿を見て、デンマークにも不登校で苦しむ当事者とその家族は確かにいることを実感した。公的なサポートが充実していても、実際に利用しようとなると、高度にシステム化されているがゆえに柔軟性がなく、適切なサポートが届かないということも起こり得るのだと。
そして何よりも感じたのは、彼女が語ってくれた親としての葛藤・苦悩は、日本で同じ状況にある親御さんたちと通ずるものがあるのではないかということ。だからこそ「デンマークから学ぶ」というよりも、互いに手を取り合って、子どもの幸福について一緒に考えていくこともできるのではないかと、そんな未来を想像した。
その一歩として、代表の方が仰った「子ども自身に問題があるのではなく、その問題は関係性や文脈によって生まれているものというパラダイムの転換が必要」という言葉をしっかりと心に留めて、自身のできることをやっていきたいと思った。
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