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ピアスと夜しか愛せない
彼の額に、またひとつ光が増えた。キッチンで黙々と料理をする横顔に、きらりと光るピアス。その輝きに負けじと、夜闇に埋もれる前の一瞬を独壇場と言わんばかり、黄昏れの光に煌めくすすきのような髪が料理帽から覗いている。オーダーを伝えると、彼は少し顔を上げて無言で作業を切り替える。他のオーダーを取って戻ると、フードとドリンクが用意されていた。ホールの仕事であるドリンク作りまで終わらせて、一つのトレーにまとめ
もっとみる穀雨のシナモンロール
今週から忙しくなる。先週会ったときに、彼はそう呟いていた。昨日だって、いつもの夜を企む時間に、遠回しに会えないことを伝えてくれた。忙しくなれば必然的に会えなくなるということはわかっていても、毎週会っていたら会えないことがもどかしくなる。会えなくてもいい、自立した大人だもん。と言い聞かせてはみるものの、彼のいないお昼に何を食べようか悩んでしまう私がいる。今日の彼は、お昼に何を食べるのだろう。ふとカレ
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