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『愛情は時々、薔薇の蔦の様に。』

愛情は時々、依存と束縛という形になる。

「自分のため」のはずなのに、「相手のため」という理由が行動する力となり、
それが失敗した時には、過度に自分を責めてしまう。

彼が、私の言葉や態度に振り回されてしまうことが分かると、
私は、彼ができるだけ安定していられるよう、言葉や態度に気を付けた。

「これでいいのだろうか‥。」と思いながらも、
彼が悲しむ姿を予想して、メッセージの最後には
いつも笑顔の顔文字を付けた。

そんなことを続けていたある日、それは起こった。
彼は、仕事で必要な資格の試験に、不合格となった。

試験前、「勉強している。」と言っていた。
けれど、思い返せば、私とのメールのやり取りを優先していた。
ノートの端に書いた落書きの写真を送ってきたこともあった。

不合格通知を受け取った彼は、私に「ごめんね。」と言った。
「悔しい。」とも言った。

この時、私は、彼の近くに居すぎたことを痛感した。
私は、「暫く連絡取るの、やめよう。」とメッセージを入れた。


暫くの間、彼からも、私からも、お互いに連絡することはなかった。

それでも、時折、Twitterには彼の心が零れ落ちている。

 「全然眠れない。理由はわかってるけど。」

 「最近は、少し食べられるようになってきた。最近は。」

不意に、そういった言葉を見つけると、
私の心は痛んだ。

彼にとって、私の存在は安定剤のようなものだった。
彼に悪気はないだろう。

でも、彼が「傷ついた」と言う言葉の数だけ、
見えない棘が私を傷つけた。

ひと月ほどが経った頃、私は彼の前から去ることを決める。

相変わらず、彼のツイートからは、寂しさがポロポロと溢れだしていた。
まるで、小さな傷跡から流れる血液の様に。

私は、それに疲弊してしまった。
何よりも、このまま目に付く場所に居ては、彼にとっても、私にとっても、健康的でないと思った。

彼に去る日を告げると、「これからのことも、応援してる。」と言ってくれた。
引き留める言葉は、言わなかった。

私も、「今まで、色々ありがとう。」と伝えた。

その後、彼の表向きの言葉とは裏腹な、彼の本音がTwitterに表れる。
時々、ぽつりぽつりと、吐き出される言葉。
事情をしらない人が見れば、大丈夫だろうかと心配になるだろう。

でも、私は「イイね」しない。

冷たい女だと思われていい。むしろ、そう思ってほしい。

彼が見ているのは、幻想の私だった。
どこまでも優しい、女神の様な私。

ごめんね。私は、そんな人間じゃないよ。
お互いにもたれあって、やっと立っているみたいなことはできない。

私は、纏わりついた棘のある蔦を振り払って、別の道を行く。
彼のくれた、思いやりや優しさだけを、ひっそりと心にしまって。

どうか、彼が自分のために生きられますように。
幸せを見つけられますように。

密かに、薔薇の花にそう願いを込めた。

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