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【歌舞伎鳩:番外編】日本橋・天守物語(十一月シネマ歌舞伎)



坂東玉三郎×泉鏡花抄」と銘打ったシネマ歌舞伎4本のうち、残りの2本。
公開をとても楽しみにしていた作品群で、本命は「天守物語」でした。
前回の感想は以下↓


グランドシネマ 日本橋

大正のはじめ、日本橋には指折りの二人の名妓がいた。稲葉家お孝と、瀧の家清葉である。しかしその性格は全くの正反対で、清葉が品よく内気なのに引き替え、お孝は達引の強い、意地が命の女だった。医学士葛木晋三は清葉に姉の俤(おもかげ)を見て、雛祭りの翌日に七年越しの想いを打ち明けた。しかし清葉は、ある事情で現在の旦那以外に男は持たないと固く誓った身のため、葛木の気持ちはよく分かりながらも、拒んでしまう。葛木は傷心の別れの後、雛祭に供えた栄螺(さざえ)と蛤を放つために一石橋へ向かった。そこで偶然お孝と出会い、お孝は清葉と葛木の関係を知りながら進んで葛木に身を任せ二人は馴染みになった。これは清葉に対する意地だった。しかし、お孝には、腐れ縁の情婦・五十嵐伝吾がいた。それぞれの境遇や胸のうちを抱えながら、お互いに惹かれあうが…

グランドシネマ 日本橋 / シネマ歌舞伎


稲葉家お孝:坂東 玉三郎
瀧の家清葉:高橋 惠子
葛木晋三:松田 悟志
笠原信八郎:藤堂 新二
雛妓 お千世:斎藤 菜月
植木屋 甚平:江原 真二郎
五十嵐伝吾:永島 敏行


あんなに可愛い女を振りやがって!!! の気持ちと、まあでも分かるよ……の気持ちがあります。でも言わずに別れると決めたのなら最後まで貫きなさい。別れ方下手なんですか?

お孝がほんとうに魅力的で可愛い女性でした。「意地が命の女」がよく分かる気の強さ、姉さんとしての器量、惚れた男には甘えてちょっとおどける仕草とか、葛木に迫る時の色っぽさ。
はじめは、お孝から葛木に迫るのですが、その口説きがほんとうにロマンチック。泉鏡花の美しい文体が台詞になって、役者があれを演じると、葛木が口説かれているのに、同時に観客も口説かれているような心地になってくる。ぐっと心を掴んできます。あの瞬間に、葛木だけでなく観客もお孝に恋をするのだろうな。

ひとつの恋の情景と、その行先。ロマンチックであり、始終ドラマチックであって、ぐっときます。どこかにあったのかもしれないと思えるような、心の動きの分かる物語は好きです。そして物語らしく、ドラマチックに(少し現実離れしているとも感じられるように)仕立てられているのも良いところ。これが物語の醍醐味。いつかまた上演してくれないかなあと思います。

物語の舞台が大正時代のはじめで、鳩としてはそこも大ヒット。舞台の上をが通る……。
「活動寫眞で見たが、西洋の男は羨ましい。女の足を舐めるんだぜ」みたいななんでもない台詞があり笑っちゃいました。でも的確に時代感が出ている台詞ですね。




天守物語

ざっくりとしたあらすじ:
白鷺城の最上階に住まう天守夫人・富姫。腰元たちと住まうそこは異界の地。妹分の亀姫が遊びに来る日だというのに、麓では鷹狩りの藩主御一行が騒がしい。富姫は友人の白雪姫(夜叉ヶ池)に頼み、白鷺城一帯に雨を降らせてもらい、鷹狩りの一行を散らした。そこへ亀姫が到着。ふたりは語らいつつ、鞠遊びに興じる。亀姫に土産物を持たせたい富姫は、考えの末、亀姫の目に留まった白鷹を捕ってやるのだった。
亀姫の帰ったその夜、富姫の一人いるところへ、一人の武士・姫川図書之助が現れる。人間の立ち入ることのない天守へやってきた図書之助を、富姫は始め突き放すが、聞けば図書之助は藩主の天下の白鷹を逃した罪により、天守の様子を窺いに来たのだという。
図書之助の清々しい器量を気に入った富姫は、まずは無事に帰してやることにするが、そのすぐのちに再び図書之助が天守に現れる。三階に住まう野衾に手燭を消されたため、火をもらいに帰ってきたのだ。話すうちに図書之助に惹かれていく富姫。二度目は帰したくないと迫るが、図書之助は武士として帰らねばならない。帰り際、藩主秘蔵の宝物である兜を授け、これを証拠に、自らの身を守ると良いと諭す。図書之助と別れたその後、城下がにわかに騒がしくなり……。
詳しいあらすじはこちら


天守夫人富姫:坂東 玉三郎
姫川図書之助:市川 團十郎
亀姫:中村 勘九郎
薄:上村 吉弥
小田原修理:市川 猿弥
舌長姥:市川 門之助
朱の盤坊:中村 獅童
近江之丞桃六:片岡 我當


物語については、十二月歌舞伎座で見ることが、演目が出た瞬間に確定しましたので、またそちらにて感想を認めます。
なので今回はあほなことしか言いません。

亀姫様が可愛すぎて感想が飛んだんですが、あれはなんですか!? 中村勘九郎が亀姫役と最初のクレジットか何かで見て、女形の印象がなかったため、ふ〜んと思っていたというか、お顔立ちの印象的に女性役はどうなんだと思っていたのですが、もう低頭します(鳩って身体の構造的に低頭できるんですか?)。もうあまりに可愛らしい。
お姉様に甘えるちょっといたずらっぽい妹分と言いますか、亀姫も女主人(だと思われる)ので、主人としてしっかりしつつ、富姫とは気が置けない仲なので、甘えたりいたずらを言ったり、ちょっとちょっかいをかけたり。そうかと思えば妹分なので、素直なところがあって、それがもう、もう……。。。可愛い……。あんな妹分のお姫様がいたら可愛いに決まっています。
役どころ自体が可愛らしいというのはもちろんですが、演じ方が嫌味がなくって、ちょっとしたいたずらっぽい仕草や表情にきゅんきゅんするというか、もう、何……? あれ何……????? もう毎瞬間可愛らしくてどうしようかと思った。

だいたい歌舞伎を見ている時にものすごい美人が出てきたり、可愛い女が出てきたりすると、見惚れつつもどこかで(でもこの役者さん男性なんだよな……どうなってるんだ……)とかそういう部分を考えてしまうのですが、もうその隙すらなかった。ずっとかわいい。可愛いお姫様がそこにいる……。

亀姫様が出てくるのは物語前半で、白鷹のくだりには必要としても、じつはそこまで重要人物ではない(鳩が見た演目上は?)のですが、もう亀姫様に心を奪われていたので、その後の展開の感想が全部飛んだまであります。
そちらについては、次、歌舞伎座に見にいく時にしたためますから、乞うご期待。

中村勘九郎、前回、シネマ歌舞伎「野田版 桜の森の満開の下」を見た時にも、力強さがあって面白い役者さんなんだな〜と思っていたのですが、正直今回ので驚きすぎて、かなり鳩の注目を集めました。思えば酒呑童子もものすごく良かった。名前が覚えられない宿命を持つ鳩、覚えましたよあなたの名前を。

歌舞伎役者さんのシステムのことをよくわかっていないのですが、やっぱり勘九郎さんはもう女形はされないんですかね? 一度でいいので生で見てみたいな……。


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