夏の香りと遅咲きの桜。

平穏な七月が過ぎ去ったかと思えば、平年に比べ遅い梅雨明けと遅咲きの桜を八月が運んできた。

世間ではウイルスが日々メディアを騒がせる。今夏は確実にウイルスに、メディアに、犯され壊されるだろう。例年のような夏を過ごすことばかりか外出もできず身体や精神までも犯されていくことは避けられない事実だと考える。

対して近所の蝉たちは例年に比べより大きな声をあげ騒いでいる。彼らは彼らなりに今夏の人類の変化を感じ取っているのだろうか。


何度か記事に書いた通り、私は一八歳の三月末時点で高校卒業をしていないどころか一度所属校を辞めた。はずだった。何故か気づいたら高校の系列校で私の卒業校でもある中学校に拾われ高校卒業を目指していた。そして先日の早朝、自宅に掛かってきた電話で自分が単位を全て取得したことを知った。

そう、高校を卒業したのだ。

動揺が隠せなかった。単位取得の為に必要なはずの試験を受けた記憶もない。記憶も抜けていないから受けているはずもなかった。電話の向こうの教員に話を聞いてみるとどうも試験と課題を同一にしてくれたらしい。有難い話だ。

後日辞めた高校に書類を取りに行かなければならないから気まずさは計り知れない。一応辞めた高校の教員から連絡が来るから返したりはしている為、全く関わりがないわけではないが行きたくないし、どんな顔をしていけばいいのかわからない。

とはいえ、卒業したのは変わらない事実である。未だに色々思うところはあるが、後ろを向いて嘆くことはしたくない。前を向こうとも思わないけれど、せめて今居る場所に居続けたい。そう決めたならば私は変わらずに居たい。

夏の香りが鼻腔を擽る日に、遅咲きの桜を見た。