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【短歌&小さな物語】「背中」

背中向け
お腹もしっぽも
投げ出して
そんなに私を
信じていいの

「背中」#今日の短歌(十五)

歩いていると、後ろで鋭い犬の声がした。

振り返ると、今通り過ぎた郵便局の前に白い犬がいて、吠えている。

郵便局の入口の前は幅の広い段々になっているのだが、そこに所在なげに座っていた男の人に向って吠えている。

――小白シャオ・パイじゃない?

小白シャオ・パイはこの通りの先にあるかき氷屋さんの白柴だ。わたしの短歌シリーズの第一回に出演している。↓↓

小白には会える日と会えない日がある。会えない日の方が多い。小白は忙しいのだ。

小白に吠えられて、男の人は明らかに困惑している。別に犬をいじめそうな人には見えない。結局その人は立ち上がって、少し離れた場所に移動した。

それで満足したのか、小白は自分の家の方へ戻りかける。

「小白!」

と呼んだら、こっちを振り向いて立ち止まった。

「あ、お前か」そんな顔をしている。

わたしは近づいていってたずねる。「あなた、通りのパトロールをしてるの?」

マイペースの自由人(犬)だとばかり思っていたら、もう一つの顔もあるらしい。なかなか新鮮だ。

でも、さっきはどうしてあんなに吠えていたのだろう。「管轄地域内にあやしい人物発見!」ということだったのかしら。(どうあやしいのかはよくわからなかったけれど)

わたしの疑問をよそに、小白は座ってわたしに背中を向けた。

「撫でていいぞ」ということらしい。

わたしもしゃがんで、やわらかいお腹を撫でる。ついでに目やにも取ってやる。ふと見ると、しっぽにいっぱい草の実がついている。

「またどこで、こんなものつけてきたの?」

思わずしごくようにすると、ぷるるんとしっぽを揺らしたが、別に怒りはしない。

――ふと、なんだか切なくなった。

通りすがりのわたしを、そんなに信じちゃっていいの?

ねえ、白いおまわりさん。

「撫でていいぞ」

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