見出し画像

【短歌&小さな物語】「白柴」

毛につきし
草の実取れぬ
われのこと
ぶきっちょだなと
いう目で見てる

「白柴」#今日の短歌(一)

職場に行く途中に、「剉冰店ツォア・ピィン・ティエン」(かき氷屋)があって、そこに一匹の白柴がいる。

以前はバスで通っていたから気づかなかった。知り合ったのは半年ほど前――少しはやく家を出るようにして、地下鉄の駅から、バスではなく歩いて職場まで行くことにしたら、見つけた。

店の中にはいないので、「看板犬」と言っていいのかどうかわからない。店の外の、しかも少し斜めにずれたところにいるので、最初はかき氷屋の犬かどうかもはっきりしなかったくらいだ。

わたしは仕事柄、毎日同じ時間にここを通るわけではないが、曜日が同じなら基本的に同じ時刻だ。

ところが、同じ曜日なのに会う日もあれば、会わない日もある。

それでも何度か会ううちに仲良くなった。正直なところ、わたしは人間より犬や猫と友達になる方が得意なのだ。

今日は、いた。

小白シャオ・パイ!」

本当の名前がわからないので、台湾人がつけそうな名で、とりあえず呼んでおく。

いつものように、座っている「小白シャオ・パイ」の傍らにしゃがんで、その喉や胸のあたりを撫でていたら、毛に草の実がついているのに気づいた。

さっきまで近所の草原で遊んでいたのに違いない。なるほど、会う日と会わない日があるわけだ。遊びに興がのれば、自然に帰ってくる時間が遅くなるのだろう。――小白シャオ・パイ、あなたってけっこう自由人(犬)なのね。

草の実を取ってあげようとしたのだが、白柴は毛がふわふわしていて長いので、うまく取れない。無理に引っ張ったら痛いだろうと、遠慮がちに指を動かしているせいか余計取れない。

ふと気づくと、「お前、ぶきっちょだな」というような目でこっちを見ていた。

――ご、ごめんね💦💦


小白シャオ・パイ」(仮名)↓↓

「お前、ぶきっちょだな」

次の一首:「白い箱の君」

この記事が参加している募集

今日の短歌