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「2064:Read Only Memories」で草木に話しかけよ。自販機の声を聞け。

ヘッドフォンとAIを相棒に、レトロSF調の2064年を駆けるゲーム「2064:ROM」をクリアしました。PS4版です。

2064年。ネオ・サンフランシスコのビルの一室で、意識を持つROM(ロボット)が完成する。
だが、製作者は何者かによって誘拐されてしまい、チューリングと名付けられたROMだけが、ひとりで主人公を頼って逃げてくる。いってみれば「意識を持ったアンドロイドもの」。古典的なSFの題材をドット絵でいた味のあるゲーム。

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主人公がはじめにやる仕事は、最新ヘッドフォンのレビューを書くこと。ジャーナリストというが、webに記事をあげてなんとか電気代を払って生活している状態。

そこに、世界最先端のテクノロジーの結晶であるチューリングがやってきて、自分は意識をもったロボットで、失踪した作り主の捜索をしてほしいと頼む。

主人公、ずっとヘッドフォンと名刺ぐらいしか持ってない。
だが、それがいい。
未来にヘッドフォンがあの形で残っているかは微妙だけど、みんなが機械を体内埋め込み式にしている世界よりも、ビジュアルとして楽しい。

昔の映画に出てくる未来世界の、謎の銀色スーツを着てる描写みたいな、ダサ可愛くて楽しい未来。

バーに置いてあるアーケードゲームが遊べるけど、「これは人を呼べん」とひと目でわかるチープな出来だとか、銃規制がすすんだ様子で殺傷能力の高い武器を持ってなかったり、
2064年を真剣にシュミレートして作った世界じゃなくて、見ててワクワクするかどうかを重視した未来感。
それでいて、バーのマスターが同性カップルなのは当然のことで誰も気にしなかったり、現代の価値観も取り入れている。

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グラフィックは80年代風のドット絵で、昔のマンガで見るようなパステルカラーの髪型の登場人物やロボットの受付がいて。
いつの時代の、どこの国の人が作ったのかわからない世界。
カオスな世界に、ヘッドホンひとつでアクセスする感じがすごくいい。

主人公は事件の進展と関係なくヘッドフォンを手放さない。ほとんどの機械や植物の音を「聞く」ことができて、
「木は沈黙を続けている」
「掃除機の雑音がクリアに聞こえる」

とか、多彩な言い回しで反応がないことを伝えられる。

なぜ、どう見ても話ができない植物、掃除機、自動販売機、マグカップにまで話しかけることができるんだろう?

たとえば、どれほど根拠があるか知らないが、
「植物は話しかけるとよく育つ」説がある。
車やバイクをパートナーのように話しかけてから運転する人がいる。
お酒を醸造するときにクラシック音楽を聞かせるところもある。

音声認識機能がないものに話しかけたり、声を聞こうとすることはふつうに「ある」ことだ。ましてや、意識を持つロボットが完成して、機械と人間の境界線がなくなっていく世界なんだから、植物や自動販売機にコミュニケーションを試みてもいいじゃないか。彼らは言葉を理解できないとするのは「決めつけ」じゃないか。


そんな考えを貫いた結果、そのへんの木にもヘッドフォンを同期しようとしたり、山のようにゲーム進行と関係ないメッセージがあるゲームができた。

犯人捜しに一直線のプレイスタイルでもいいけど、それも味気ない。この世界に興味がわけば、草木と話そう。自販機の声を聞こう。進行に関係ない選択肢が掘れば掘っただけ出てくる。プレイヤーの好奇心に、ゲームが狂気の作り込みで答えてくれる。

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。