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巨大なインドのおばあちゃんをバイセクシャルの孫が登る「Thirsty suitors」

テレビゲームはここまできた。
南アジアのクィアな若者たちが、古い恋のあやまちや親の期待とぶつかりあいつつ、スケボーで街を駆け抜けてひたすら口論を繰り返す。
Thirsty suitorsはXBOXGAMEPASSはじめ各機種で遊べる。
これだけの文章を日本語訳してくれて感謝につきる。今年のRPGでいちばん変なゲームだった。

登場人物全員、一見ふざけた言動なのに重い背景を背負っている。
ファイナルファンタジーみたいに「厳格な母親」を召喚して、1ターンごとに口論しながら戦う。

地元インドに帰ってきた「性欲の権化、歩く痴話喧嘩の火種」主人公ジャラに、元カレと元カノらが過去のあやまちを責めたて、家では両親が、これから帰ってくる最強のおばあちゃんにおびえながら、やはり世代間のギャップと守るべき伝統について、金を出してやった学業について口論。口論。

ときには父の出身地スリランカ料理を作るため、アクロバティックに手洗いして米をまぜてグリルに点火して…終始ものすごくバカバカしい映像が案外まじめなディベートを挟みながら行われる。
料理を食べたお父さんはミスター味っ子ばりに心のスリランカに火がついて踊りだす。ずっとカオス。南アジアの街並みを思わせる。

コマンドバトルでは精神世界に入っているので、相手は分身したり巨大化したりして出てくる。

逆らって生きるにはあまりに巨大な母親。
作ってる人が本気だ。
「あんたは今までこうして、あのときもこうこうこう、こうだっただろう!」「いや、あれはあれで今はこれで、この国はこうなんだ!」
今のインディーズゲームでは、文字を少なくしてストーリーを映像から読み取るのがスマート、みたいな流行りがあるけど、その真逆をいく。

欧米のドラマに出てくるおしゃれなレズビアンじゃない。BLでもない。
演出の濃さと背景のシリアスさ、共感できる部分、わけわからん部分、ごっちゃごっちゃの鍋料理みたいにになって。アジア的カオス!

くどくてダサくて、拒絶するか癖になるかはっきり分かれる。
待ち受ける巨大な祖母と、ひたすら料理してスケボーして戦って、そして理解し合う。作り手の人生を全部ぶつけられたみたいだった。

ゲーム歴が長くなると、よくできた安心できる味には飽きてる。こういうのを作ってくれなきゃ。


読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。