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この子たちにもっと気持ちよく冒険させてやってくれ!「すすめ!じでんしゃナイツ」【ゲーム】

「すすめ!じでんしゃナイツ」をクリアしました。PS4版。

PSVITAの、いや、携帯ゲーム機の到達点かもしれない「テラウェイ」のスタッフが参加したゲームですよ!
まずテラウェイがすごさのわりに認知されなかったことを愚痴るところから始めよう!

SONY最後の?携帯ゲーム機PSvita用ソフトで(のちにPS4版も出た)太陽のまんなかにプレイヤーの顔をカメラで合成した「カミ様」というのが出てくる。

このカミさまに手紙を届けるために旅するアクションゲームだ。
携帯ゲーム機のキャラクターが「こっちの世界」にお手紙を届けるために冒険する。
神様視点で本体をタップしたり、ほとんど使われることがなかったVITA本体の背面にタッチしたり(画面内にリアルな指が飛び出す)して手伝ってあげる。

ゲームにプレイ中の自分が映されるのを嫌う人が多かったけど、それはたぶん録音した自分の声を聴くのと同じで、初めてのことで戸惑っただけで、カメラを含めた携帯ゲーム機の機能をフルに使っていることに異論はないだろう。

映画のような大スペクタクルではない、手の中のちっちゃい世界にさわりながら冒険を見守る感覚は、大画面の派手なゲームの魅力とは違った、携帯ゲーム専用機の到達点といってもいいと思う。

このスタッフが参加した「すすめ!じでんしゃナイツ」。
じてんしゃじゃない。じでんしゃ。
80年代のイギリス。出会ったばかりの女の子ふたりが、苦しい家庭環境にも負けず、ご近所に迷惑をかけながら想像力いっぱいに冒険する。

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もうこの顔がいい。抽象画みたいな顔なのに、ニヤっと悪い笑みがあったり、表情のニュアンスが伝わる。色使いも暗めなのに可愛い。配信直後に買わなかったのは【2人用】と書いていたからだ。

なんか、対戦でも多人数バトルロイヤルでもない、ある程度の長時間をふたりでずっと遊ぶスタイルが流行っているんだよ!
そばにいる兄妹や友達なんかといっしょに。

ところが、わし、ひとりやねん。いつもひとり!
子どものころからゲームは現実逃避の手段だったの!それで2日ほどスネていたんだけど、ひとりでもコンピューターが友達がわりに遊んでくれるというので買いました。
結果、ひとりで大丈夫だった。というか、2人でやって、その分面白さが増すのか不安になる内容だった。

まず、いきなりカセットテープを再生して急斜面を爆走するふたり。映画でいうカットバック!最初に強烈なシーンを持ってきて、「なんでこうなるんだ?」と疑問に思わせてあとでつながるやつ! これは相当いい。

このあと、空想好きな少女の日常から物語は始まる。

学校でもうまくいかず、お母さんもいない。毎日ガチョウにエサをやるのが日課。そんな子が、自分の弱さを隠すように自転車で走り回り、偶然出会った同世代のともだちをつくる。自己紹介はかんたんにすませて、姉妹のようなふたりはすぐに打ち解ける。子供のころって、初対面から親友になるまでが一瞬だよね!

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キックで水たまりを蹴散らしたり、オモチャとか虫とか「子どもにとっての宝もの」をどんどん拾ってポケットに入れると、それと引き換えに自転車のパーツを買えて、どんどんハデに飾り付けられる。

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疲れたらハイタッチ!回復はカットバン!

仲良くなったふたりはゴルフ場に侵入して遊ぶ。
ゴルフ場の跡地をアトラクションに改造してあって、動く人形を倒したりしながら島の歴史を知ったり、両親について話していると、大地から呪いが噴出するのだった。

ここでいきなり飲み込みづらい。
「自分たちの住む退屈な島は、実は呪いと宝物が封印された宝島だったのだ!宝物を見つけよう!」
こんなシンプルな筋書きなのに、理解するのに時間がかかったのは、主人公の女の子が空想にに生きる子だからだ。

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たとえばお宝を運ぶ騎士を想像したら、本当に絵になって出てきたりする。
子どもらしい想像力を使って遊ぶと同時に、ママがいないという現実にたえている。
いじらしい性格。だけどこの島に呪いと宝があるってことは事実なのね?「ごっこ」じゃないのね? どこまでが空想かわからなかったぞ。

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武器が便所のあれだったり、関係ない家にピンポンダッシュしたり、情報を集めるときに魚に話しかけたり、ほかにないユーモアで溢れている。

好きなタイプのゲームを見つけてしまった!!と言い聞かせて進むも、絵が凝りすぎて何がどうなっているのかわからない。静かなストレスも積もっていく。

プレイを中断するほどじゃないけど、移動が遅いとか、強い攻撃はタメ撃ちだからテンポが悪いとか、じでんしゃ移動も×ボタンをカチカチして「こぐ」必要があるとか、「カバさんじゃないと無理」な泥にはまって動けなくなるとか、何かあるたびに引っかかる。

満足と不満がひとつのゲーム内で激突して、打ち消し合っている。
2人プレイを推奨してるけど、そこまで協力しあってる感もないし、謎解きも2人いっしょにパネルを踏んだらドアが開くとか、それぐらい。なんなら1人プレイで、もう片方はコンピュータにまかせても、お姉ちゃんが勝手に行動し始める感じがあっていい。

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テラウェイで、実際にペーパークラフトでキャラクターを作ってみよう!なんてことを考えたスタッフだから、たぶん推奨するプレイスタイルは、本物の姉妹とか親子でワイワイ話しながらのはずなんだ。

だけどアクションと移動が気持ちよくない。謎解きも「なんか進めるようになったけど今ので正解?」って感じ。世界観は輝きを増して、どんどん主人公ふたりが好きになっていくのに。

クライマックスに近づいて冒頭の急斜面を爆走シーンにつながったときはテンション上がるし、歴史ある場所を想像力をはたらかせながら進むシーンもいい。エンディングもいい。
宝を探す話って、宝とは単純に金銀財宝なのか、もっと変わったものを出してくるのか、誰とどうやって分け合うのか、そもそも分け合えるものなのか・・・って考えながら行くよね。スタッフロールには開発中に生まれた赤ちゃんまでクレジットされてて、そういうところまで含めていい。

ゲームから豊かな想像力が受け止められないくらいあふれているので、移動とアクションがもっと気持ちよければ全力で「良かったぞー!」と叫べたのに。
俺にもっと気持ちよくゲームをやらせてくれ!
というより、
この子たちにもっと気持ちよく冒険させてやってくれ!




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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。