見出し画像

【読書記録】エブリデイ

「エヴリデイ」デイヴィッド・レヴィサン著

毎朝、違う体で目が覚める。
その体には一日しかいられない。
同じ国内だけど、一度入った体にはもう戻らない。
そうして、16年間生きてきた。
同じ年齢の体に、毎朝、目が覚めるってことだけ。

ある日は、兄妹がいたり。
ある日は、すごく大切にされていたり。
ある日は、すごく太っていたり。
ある日は、自傷癖のある女の子だったり。

毎日、違う人間になる。
毎日、違う人間から世界を見る。
そのことで主人公は自分なりの世界観を作り上げてきた。

人間関係に悩むことの多い10代にとって、
煩わしい人間関係から解放されて、それって素敵なことにも
映るかもしれない。

けれど、ある日、主人公はリアノンという女の子と出会う。

普通の女の子。

でも、主人公にとっては「普通」じゃない。

「特別」な女の子。

恋に落ちた。

恋に落ちる瞬間ってどういうことだろう?ほんのわずかな時間にこれだけの広がりが含まれているなんて。どうしてデジャヴを信じる人がいるのか、わかるような気がする。どうして前世があるって信じるのか。そうじゃないと、この地球上で過ごした年月だけで、今の気持ちすべてを包み込めるとは、とうてい思えない。恋に落ちた瞬間の前に、数世紀のときが流れていたように感じる。そう、数世代にわたる年月が…その一時一時が、ぴったりこのときにこのすばらしい出会いをもたらすよう、準備を整えてきたのだ。心の中では、そう、胸の奥底では、バカみたいだと分かっていても、すべてがここにつながっていたのだと、あらゆる矢印がひそかにここを指していたのだと、感じる。


主人公は、リアノンと「毎日」を過ごせたらいいのに、と願うようになる。
関係を、連続性を築きたい…と。

それまで、ただ淡々と毎日、一日だけの日常を過ごしてきた主人公。

毎日他の誰かの目を通して世界を見る、という新鮮さ。

しかし、それは継続した関係を築くことができないという孤独。

同じ体に留まることはできないだろうか。

リアノンとずっと一緒にいることができないだろうか、と考える主人公。

最後に主人公が取った行動は確かに、愛を感じるけれど、
主人公の孤独はどうやって救われるんだろう、という疑問が残ったままだった。
主人公のこういう優しさは、一日だけの日々を過ごしていく中でどうやって培われたんだろう。本当はもっと荒んでしまってもいいんじゃないか、と思う。お話に出てくるプール牧師はもしかしたら、その過程で荒んで「悪魔」になってしまったんじゃないだろうか、と。

リアノンの写真をポケットに入れて持ち歩くことはない。リアノンの手書きの手紙をもらったり、二人でしたことをスクラップしたノートをもらうこともない。都会のアパートで、二人で暮らすこともない。同じときに同じ曲を聴いているかどうかも、わからない。共に年を取ることもない。リアノンが困ったときに連絡するような存在になることもない。話したい話があっても、リアノンに電話することはない。リアノンが与えてくれたものをなにひとつ、手元に置いておくことはできない。

この記事が参加している募集

#推薦図書

42,671件

#読書感想文

190,781件

よろしければサポートお願いします!サポートいただいたお金は、新刊購入に当てたいと思います。それでまたこちらに感想を書きたいです。よろしくお願いします。