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【読書の思い出】ずっと待っているのは

私はりぼんっ子だった。

思えばピアノ教室の片隅に、待ち時間の間に読めるようにりぼんが置いてあったのが始まりだったかもしれない。今でも鮮明に思い出す。「姫ちゃんのリボン」「ときめきトゥナイト」「ねこねこファンタジア」「天使なんかじゃない」「マーマレードボーイ」挙げればキリがない。

中でも一番好きなのはやはり矢沢あいさん。

「天使なんかじゃない」「ご近所物語」「paradise kiss」「NANA」

結婚する時に、私が大量に持っていた漫画を夫から整理するように言われた。まだ従順だった私は当時100冊ぐらいはあった漫画や文庫本、単行本を、泣く泣く古本屋さんに引き取りにきてもらった。けれど、毎月クッキーの発売、NANAの最新話を楽しみにしていた私は、矢沢先生がお休みされてから、寂しくて寂しくて、少しずつ全て買い戻した。あまり本が増殖するのを好まれていないので、最近は図書館を利用するようにし、漫画は電子書籍で読むようになったものの、矢沢あいさんだけは紙で!!!と思っている。

そう、矢沢先生が「NANA」を休載されてから早いもので12年経つ。確かクッキーでは、ノブが堪えきれずに奈々を抱きしめたところに、ナナが入ってきて、蓮が死んでから話せなくなっていたのに、涙顔の奈々を見てノブを殴りつける、というシーンで終わっていたと思う。12年…子育ての孤独な日々を癒してくれたのは漫画であり、小説だった。ママ友もできず、近所には友達もおらず、高校大学時代の友人はまだ独身生活を謳歌している。どこにも行けない私は本や漫画でいろんな世界へと入り込んだ。いろんな本に助けられて、いろんな漫画に癒された。本当ならそこに矢沢あいさんが常に新しい話で異世界へと誘ってくれていたはずだった。けれどこの12年、更新されることはなく、それでも昔から私を支え続けてくれた作品達がそばにいた。
あっという間の、12年だったけれど、それでも、「NANA」を毎月楽しみにしていた私にとっては、長い長い12年だ。

今も待っている。ずっと、待っている。時々矢沢あい、とネットで検索してみる。まだ、ない。時々手元にある文庫を読み返してみる。ずっと止まったままの時間の中で、でもやっぱり今も待ち続けている。

連載が始まった時、奈々達よりもずっと年下だったのに、今はすっかり追い越してしまった。
まだ幼かった、恋愛も好きな人もなんにも分からない小学生の頃から憧れ続けた矢沢あいさん。好きな人ができ、叶わない恋を知り、応えられない想いもあり、いっぱしの恋愛を、経験する中でいつも、傍らに矢沢あいさんの本があった。
今や恋愛のれの字もない生活だけれど、でも、もし再開されたら喜んで私はまた毎月なのか隔月なのか、毎回話を追うようになると思う。矢沢あいさんの本を読めば、いつでも私は恋や愛に翻弄される小娘に舞い戻ることができるのだ。その日を夢見ながら、ずっとずっと待っているつもりだ。いつまでも。


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