見出し画像

【覚書】尽きない悩みを抱えて

子育ての悩みは尽きない。

息子が年長の時、お泊まり保育があった。
バスに乗って、遠足に行きつつ、宿泊先へ向かう。保護者は朝、皆、公園で見送ることになっていた。大型バス2台にそれぞれクラスごとに乗り込む子どもたちを、お母さんたちが沿道に立って見送る。予め子どもたちが乗るバスの座席位置は知らされており、クラスごとに分かれて出発を待つ。
乗り込んだ子どもたちが、窓から外をみて母親の姿を見つけては、手を振る。笑顔で手を振る子どもたち。少し寂しそうに手を振る子もいる。はてはて、私の息子はどこかなと沿道からバスを見上げると…窓に張り付き大泣きしている息子の姿が見えて、ギョッとした。「えっ!」めちゃくちゃ泣いてるやん…。窓にしがみつき、声こそ聞こえないものの、あれは大絶叫している。まるで今生の別れのように。声こそ聞こえないが「ママ!ママ!ママー!!!!!」と泣き叫んでいる。まるで誘拐犯に連れ去られるかのように。
いやいや…。一泊だけやし。てか、先生方いるし。てか、周りの子誰も泣いてないやん。
もう私は大爆笑するしかない。
とりあえず安心させようと笑顔で手を振るのだが、息子は窓にしがみついて声を限りに泣き叫んでいる。
えー…。
息子はいつも澄ました顔をして、幼稚園に送り出すときも大体振り返りもせずに「スン」とした顔で去っていく。幼稚園に不意に覗きに行って、出会って声をかけても無表情で「スン」としているタイプだった。他のお母さん方もそれを承知しており、「えっあの○○君が…」といった様子だ。情の熱いお母さんに至ってはもらい泣きをしている。私はもらい泣きするタイプでもないので、「ぎょっ」が最後まで消えない。

思えばあれがそもそもの始まりだった。
それからしばらくは、トラウマのように私から離れるのを嫌がった。習い事の見学で少し私と離れただけでも大泣きして、困り果てたこともある。実家に帰って子供はじいじばあばに預けて、地元の友達と遊びに行こうとしたら、これまた今生の別れかと思うぐらいに泣き叫ばれたこともあった。
徐々にマシになるのかと思いきや、人前で泣くのを耐えるだけで、私と離れるのが嫌だという理由で今も長時間の塾を嫌がるのは前述の通り。

夫から言わせれば、「俺は別に母親と離れるのは平気だった」と言う。
(ほんとかよ、と内心思ってはいるのだが)
遺伝なのか特質なのか分からないが、兎にも角にも、息子も精神的に強くはない。
甘えているだけだ、となんとか励まし、叱りつけ、宥め、塾に行かせたり頑張っているのだが…先日、学校での宿泊授業があった。何日か前から憂鬱そうにしていたのだが、まさか休まないだろうと思っていた。いや、休むなんて選択肢はない。行け、と思っていた。
でも、もう、本当にだめなようで、彼は当日熱を出してしまった。それも微妙な熱。37度。こんなご時世でなければ「すみませーん」と多少無理をさせてでもいかせてもらうところだが、今の状況下では学校側も受け入れられない。熱が下がれば合流させられるが、現に37度ある状況では受け入れてもらえない。夕方までどうする?まだ熱下がらない?どうする?と親はヤキモキし、息子は「耐えられない。無理。みんなの前で泣いたら揶揄われる。でも、泣くのを我慢できそうにない。無理。」と大泣きする。
これには、夫も仰天したようだ。
前日から大泣きして、もうパニック状態だったのだが、私は何がなんでも行かせるつもりで無視していた。宥め、「とにかく寝なさい」と首をマッサージし眠りにつかせたのに…。
夫は、確かに繊細で精神的に脆いのだが、それはそれなりにショックな出来事があったからで、息子には「出来事」としてはないと親としては信じている。だから、「気合い」で大変なことを乗り越えてきた夫としては、「何、甘えてんだ!いつまでも泣くな!」と言いたいのだが、彼なりにその対応はまずいと思っているようで、前日にしろ、当日朝にしろ、彼が大泣きしているとそっとその場から離れていた。一人、大泣きする息子の相手を任された私としては孤独極まりないのだが、後々聞いてみると「怒鳴らないように」との彼なりの対処だったそうなので、それは仕方ないかなと、飲み込む。
私も夫も、そういった感情が理解できないので、無理にでもいかせたいのだけれど…。

私はご覧の通り、楽観的というか雑というか大雑把というか、そんな性格で、夫も確かに繊細なところがあるとはいえ、酔っ払って玄関の外で力尽きて寝ているところを見ると「本当に私よりも繊細だっていうのか…」と疑いたくなるような人だ。一体誰に似たのか。分からない。いつか大丈夫になる時が来るのだろうか。
先日、私が「少しずつでも強くなって乗り越えていかないとあかんで。お母さんが突然死んだらどうするの。」と言ったら、そのあと大泣きして大変だった。
少しずつでも成長してくれるのなら親としては、いい。我慢できるし、乗り越えられるし、根気よく対処していこうと思える。
今は、心配でしょうがない。
根は楽観的なので、「いつか大丈夫になるだろう」とも思っている。
以前、HSCの本を読んで、これかなあとも思ったのだけれど、果たしてその特性をうまく伸ばすとはどういうことなんだろうと思っている。私と離れられないのは特質なのだろうか。それを伸ばすとはどういうこと?それとも成長過程?
うーん。悩みは尽きない。

後々になって、「ああ、あの時は大変だったねえ。」と笑い飛ばせたなら、それでいいのだけれど。今は現在進行形で悩みの中にいて、霧が晴れる気配がない。
まあ、それでもやっていくしかないし、本人曰くは、「俺なりに頑張っている」とのこと。霧中ながら、手探りでやっていくしかないのね。うん。



よろしければサポートお願いします!サポートいただいたお金は、新刊購入に当てたいと思います。それでまたこちらに感想を書きたいです。よろしくお願いします。