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【読書記録】たった、それだけ

一人の男性が贈賄の容疑で失踪するところが物語の軸としてあるのだが、物語の語り口は、その男性目線ではなく、その周りにいる人、もしくはさらにその周り、といったところ。
その男性=望月さんそのものの物語というよりは、彼の周りにいる人間のそれぞれの人生観といった感じだ。
だから連作でありながら、短編の要素もある。
一つ一つ、それぞれの人生観、物語、導きがある。
第一話で、望月さんの浮気相手。
第二話が、望月さんの妻。
第三話に、望月さんの姉。
第四話は、望月さんの娘が転校した先の担任。
第五話は、望月さんの娘。
第六話は、望月さんの逃亡先の同僚。

望月さん自身の人生観そのものは明確にはわからない。
どうしてそんな事件を起こしたかがはっきりと語られることもない。
だから、個人個人の物語のように思うと、短編集のようにも感じられる。
起きた事件の周りにいる人たちにはそれぞれの感情があり、それぞれの人生観の尺度で測っている。

総じて、「逃げていいんだよ」と語られているようで、宮下さんの優しさを感じる物語だった。

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