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カプリーノ、それは海風と大地と山羊からの贈り物

※この投稿はFacebook用に書いたものですが、一人でも多くの方に富山県黒部市のY&co.の存在を知って欲しくてnoteにも転載します

y&co.は山羊のチーズの生産者です

山羊の自然の摂理の中で、山羊を慈しむように育てて作られるチーズ、ひとりでも多くの方に知っていただきたいです

最近僕が楽しんで読んでいる本があります

それは

『発酵文化人類学』小倉ヒラク著

発酵食について興味があるので色々な本を読むのですが、この本は決して発酵の入門書でもなく、技術書でもなく、専門書でもありません

発酵という目に見えない菌による生命のメカニズムを文化人類学の観点から説明したユニークな本です

その中で興味深かったところを意訳させていただくと…

「私という存在は絶対的な存在としての私ではなく、環境の中の関係性から生まれる。私という存在は世界を維持する関係性の中のひとつに過ぎない」

という文化人類学の観点が発酵のメカニズムそのものである、といった様な内容です

あぁ〜わかる〜

とかほんまにわかってんのかわかってないのか怪しいにも関わらず、膝を打って納得してるようなアホの僕ですが、今回Y&Coさんへの見学の際に牧場に吹き込む風に揺れる牧草を眺めていると、その考え方が皮膚感覚でわかった様な静かな感動を覚えました…

実際の見学を始める前に牧場の周辺を散歩していた時の話です

そしてその感覚は、見学を終えると実感へと変わっていました



先日の5/9(日)、当店の限定らーめんのひとつである『潮風の記憶』で使わさせて頂いている山羊のチーズ『カプリーノ』を生産されているY&coさんの牧場へ見学に伺ってきました

『カプリーノ』との出会いは2年前です

いつもお世話になっている加賀市大聖寺のイタリア食材店イタリアワインと食材 エノテカ チェドロ ステッラさんにて店主の杉田太さんから勧められて初めて手にしました

その時は単純に自分の楽しみとして、家に帰ってワインと共に楽しもうと購入しました

ひとくち食べてみて…今まで食べてきたシェーブルチーズ特有の臭みが全くなく、優しく深い味わいに僕は一気に虜になりました

ちょうどそのタイミングで石川県の宝達志水町にあるヤマチ醤油さんの『海風と時のたから』という醤油と出会っていました

僕は直感的に

「あの醤油とこのチーズ、合うはず!」

と閃き、翌日早速らーめんとして試食したところ感動的な美味しさだったので

「お客様にも食べてほしい!」

と思いすぐに限定らーめんとしてメニューに加わりました



その『潮風の記憶』も3シーズン目を迎え、初めて現地まで見学に行くことができました!

社長の吉田 朋美さんとマネージャーの男性のお二人が僕を出迎えてくださり、牧場を見学しながら沢山のお話をお伺いすることができました

Y&coの山羊たちは一頭一頭乳質検査を行い、血統を管理して、とても大切に育てられています

一頭一頭乳質を検査するという作業は、一般的な酪農家からすると

「そんなめんどくさいこと、やってられるか!」

と呆れられるような途方もない作業です

しかしその途方もない作業を10年かけて積み重ねた結果、品質はどんどんあがり、山羊たちにとってもより心地よい環境が作り出せたとのことです

なぜそこまで手間をかけるのか?

それは…

「山羊の幸せのために、人間が働く」

という信念があるからだそうです

売上や乳量だけを求めたらもっと搾り出せるかも知れない乳を

「山羊の健康のためには絶対に良くない」

山羊の状態を第一に無理な絞り出しは行いません

そして搾乳機で一気に乳を絞り出すのではなく、手作業で絞り出してはすぐに山羊から離し、すぐさま低温殺菌を行うとのこと

この手間が僕が感じた

「シェーブルチーズ特有の臭みがない!」

に繋がるのです

ではなぜ一般的なシェーブルチーズは臭みがあるのが普通なのか?

それは工業化された酪農が増えていく中で生産性や効率が重視され、搾乳機で搾り出した後に山羊から乳を離さずに放っておく時間があるからだそうです

その時間に山羊の持つ体臭が移りやすくなるのだそう

そして山羊の乳は牛の乳よりも粒子が1/6ほどの細かさなので、香りが移りやすいという性質もそこに加味されるとのこと

だから臭みのないチーズを作ろうと思うと、手作業で大切に行わなくてはならない

すると大量には作れない

だからこそ、山羊一頭一頭を大切に大切に、慈しむ様に育てて、山羊の自然の摂理の中で乳を頂戴しているのだそうです

朋美さん曰く、

「Y&coのチーズは黒部の海水から生まれた塩と、黒部の大地の草を食んだ山羊から生まれた乳のみで作られている。本当の黒部産です」

とのこと

Y&coの牧場は海岸線から10kmほどの距離にあり、小高い丘の上にある牧場からは天候が良ければ海岸線が見えるそう

海から吹き込む風によって育まれた大地の草を食んで育つ山羊たち

自然のミネラルを自然なまま吸収して育ちます

カプリーノのその優しい優しい味わいに僕は

「これはmother nature’s tasteだな」

と感じた通り、全ての生命の源である海のミネラルが含まれているのだと感じました

そして発酵の作用によって生まれるチーズ

海から、風から、大地から、人の手から、そして牧場の至る所に存在する目には見えない菌から、たくさんの贈り物をもらい、素晴らしいチーズが出来上がります

そのチーズを僕はまたこうして、『自然からの贈り物』として手にして、大切にらーめんを作れるのです

僕がこの投稿の冒頭で書いた

「私は絶対的な存在ではなく、世界の中の関係性から生まれる」

と言った感覚が伝わるでしょうか?

そして僕はそのmother nature’s tasteを損なうことなく、お客様へとバトンを繋げているでしょうか?

ひたすら自分と向き合うことしか、僕にできることはないように思えてきます



付け加えておきますと、『潮風の記憶』で使用しているヤマチ醤油さんの『海風と時のたから』は、海風が注ぎ込む今浜の大地で育てられた大豆を天然醸造しています

だからこそ、僕は直感的に

「あの醤油とこのチーズは合う!」

と閃いたのだと信じています

いわば、【北陸の海のテロワール】を丼に注ぎ込んだらーめんが、『潮風の記憶』なのです



風にそよく牧草を見下ろし、そろそろ牧場を後にしようとした時

「疲れたらいつでも来てください」

と朋美さんがおっしゃられました

本当にまた来たいです

何もせずに揺れる牧草を眺めていたいです

そしてそこで生まれた感覚や感情や直感を野々市に持って帰ってきて、らーめんを作りたいです

朋美さん、本当にありがとうございました

これからも『カプリーノ』を大切に使わさせていただきます

そして時にメッセンジャー となり、時に吟遊詩人となり、カプリーノの素晴らしさを伝えられる様ならーめんを作り続けます

ほんまに人生に疲れた日が来たら、迷わず牧場へ行こうっと

この長文を読んでくださった皆様、Y&coのチーズの魅力が少しでも伝わったでしょうか?

ほんまはもっともっと伝えたい話があるのですが、ただでさえ長文を書いてしまう僕なので泣く泣く割愛した部分が山ほどあります!

その話はらーめん南にて聞いてください!

明日も山羊たちが優しい海風に吹かれますように
明日も山羊たちが優しい鳴き声を空へと響かせますように

Y&coと山羊たちに

Big up & Respect ✨✨✨✨

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