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砂嵐の前の静けさ -映画紹介『DUNE/デューン 砂の惑星』-
みなみ京二と申します。
現在PART2が公開中の『DUNE』、その1作目の紹介&感想です。
旧作なので、初見の楽しみを損なわない程度のネタバレありで書いていきます。
Amazonプライムで配信されているので、会員の方はそちらから見られます。
広大な宇宙を一歩ずつ着実に
初めてこの作品を見たときに感じた魅力は
「シナリオ・世界観の面白さと、それを見事に表現する映像」
であった。
元から2作目を作ることが決まっていたためか、今作では世界観の解説にかなり時間を割き、丁寧に行っている。
宇宙航行に欠かせない燃料であり「宇宙で最も貴重な物質」とまで言われる『スパイス』、それが宇宙で唯一採取できる惑星『アラキス』、原住民の『フレメン』、信仰により彼らを操る『ベネ・ゲセリット』、彼女らの最終目標である救世主『クイサッツ・ハデラック』……
と作中用語の数が凄まじく、急ぎ足で進められでもしたらパルスのファルシのルシがコクーンでパージすることとなる。
そんな膨大な数の用語を、見事なストーリー構成によって直接的な説明台詞を最小限に留めながら自然な形で描き切り、見事に『DUNE』の世界観は確立されている。
そこをさらに補強するのが、美麗かつ繊細な映像である。
広大な自然とそこに住まう大小さまざまな生物、魅力的なメカニックの細かい動きなど、あらゆるものが細部まで作り込まれており、作中で起きることに非常に強いリアリティを与えている。
丁寧にやるには時間がかかる
世界観の説明に贅沢に時間と映像を用い、『DUNE』の世界を観客に理解させることはできた。
しかしその代償として物語の動き自体は緩やかになってしまい、それが原因で「地味さ」が出てしまったようにも思う。
特にキャラクターに関しては、そもそもの登場数が多いこともあってか時間が明らかに足りておらず、内面に関する描写や個性を描くところにまで手が回っていなかった。
とはいえ、恐らくこれは最初に書いた通り
「2作目の制作が既に決まっていたため意図的に行ったこと」
であると思う。
実際、PART2ではキャラクターの内面や個性についてかなり詳細に描写されている。
1作目で世界観を確立できたことで、2作目では物語の本筋であるポールの成長と様々な人物との交流、そしてハルコンネン・皇帝との戦いにたっぷりと時間をかけることが可能となり、結果として非常に面白い作品となっている。
主人公がやや不遇?
人物描写にかける時間の不足、作中で一番その割を食っているのがポールである。
領主と怪しい教団の息子であり、予知夢を見てしまうという悩みを抱えているというかなり特殊な境遇でありながら、それらについての彼の心情は表情やちょっとした仕草に現れることがほとんどであり、直接的に彼の口から感情が吐露されることはほとんどない。
そのため、感情移入が少し難しかった印象だ。
しかも、ダメ押しとでも言わんばかりにラストの決闘以外は彼に見せ場という見せ場がほぼない。主人公なのに。
最も、彼の若さから来る未熟さや青さを起点とした魅力はガーニイとの交流などでしっかり描かれていた。
観客が自分に重ねて感情移入するというよりは、成長を見守るような主人公であるように感じる。
いぶし銀なアクション
この映画における最大の見せ場は、何といってもアクションシーンである。
熟達した戦士同士が無駄のない動きで繰り広げる一進一退の戦闘には、超人的な身体能力で縦横無尽に駆け回るような外連味のあるアクションとはまた違った美しさがある。
「渋カッコいいアクション」とでも言うべきか。
その良さが最大限発揮されていたシーンが、ダンカンの大立ち回りである。
アトレイデス兵との戦いでその強さを印象付けられていたサダーカーをたった一人で相手取り、ポールへの忠義に殉ずる……その生き様のカッコよさをアクションが引き立て、作中で最も印象的と言っても過言ではない場面だ。
その他のアクションシーンも高品質であり、特に最後のポールの決闘は彼の(唯一の)見せ場として十分に見応えがあった。ジャミスの荒々しい動きとポールのコンパクトな動きの対比も面白い。
前半にガーニイとの組手を挟み、ポールの戦闘力が高いことをしっかり描写しているのも上手い。
豪華な前振り
ここまで語ってきたように、ストーリー面も映像面も1作目の時点で十分に面白い作品ではあるのだが、PART2を見終えた今改めて見直すと、どうしても「PART2の前振り」というふうには感じてしまう。
ストーリーは次作に向けて動き始めたばかりで、映像面で大きな見せ場となるようなシーンも(PART2と比べると)少ない。今作の時点ではまだ『DUNE』の面白い部分の入り口でしかなかったのだと痛感させられた。
「PART2を見るために1作目を見る」価値があるほどにPART2は面白かったので、今作を見た方には是非PART2を見ていただきたい。
そしてまだ今作を見ていない方は、とりあえずアマプラで見てそのまま映画館までPART2を見に行こう。
面白いから。
〈了〉
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