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人事が教える、間違えないキャリアづくりの方法

4月から新たなキャリアを歩み始めるという方も多いと思います。入社、転職、異動、転勤など、必ずしも会社を変わるだけではなく、職種や職場が変わるという方も多いのではないでしょうか。今回は、人事の立場から、キャリアをつくるうえで覚えておいてほしい、そして実践してほしい考え方を書いていきます。


@Unsplash

キャリアはマラソンと同じ

キャリアは人の数だけ千差万別。新入社員としてキャリアを歩み始めてから、10年、20年と経つうちに、最初に想像していた通りの道を歩んでいる人は実際にはとても少ないと思います。採用面接のときの話と違って、思ったような仕事ができていない人、自分が希望していなかった部署に異動になってしまった方もいると思います。

新入社員として入社して最初の5年くらいは、同期を見回しても、他社に就職した友人に会っても、それほど大きなキャリアの差は感じないでしょう。しかし、30代の中盤ごろから少しずつ違いが生まれてきて、何となく出世していく人と、そうではない人、転職する人とそうではない人に分かれてきているように感じるのではないでしょうか。

そして、40代半ばになると、いつの間にか結構大きな差がついていると思います。また、若いころには良くも悪くも変化のあったキャリアが、段々と選択肢が減っていくのを感じるようになります。キャリアとは、最初はちょっとした違いですぐに変わっていくようで、時間が経つにつれて、少しずつ大きな違いが生まれ、そして変化もなくなっていくものです。

一方で、たった一つの異動や、転職、人との出会いで一気にすべてが変わるということもあります。40代以降でも、みんなが驚くような転職をしたり、起業して大活躍する人もいます。しかしそういう人はそれまでにしっかりと準備や経験や人間関係の構築を重ねています。

つまり、キャリアは長距離走で、常に「今」によって過去は上書きされていきます。20歳前後から60歳過ぎまで働く人が多いと思いますが、まさにマラソンの42.195キロと同じように、1キロ1年で、40年をどのように走りつづけて、最後どのようにゴールするのか。が大事な戦略です。途中でどれだけ良い順位にいても、最初にどれだけ素晴らしいスパートを見せても、それは途中経過であって、そのとき少し注目を浴びたり、自分も良い気持ちになるかもしれませんが、それがその後のレースにどのように影響を及ぼすかが大事です。

思い通りにキャリアを歩む人などいない

“一般社会人で「18歳のときに考えていた職業に就いている人」は、全体の約2%のみ
成功したビジネスパーソンの8割は、「その成功は予期せぬ偶然の結果だ」と考えている”

ジョン・D・クランボルツ(スタンフォード大学教授、教育心理学者)

キャリアのつくり方に関する基本的な理論を示したクランボルツ教授の言葉です。

突出した才能をもつ人は、自分の夢に向かって着実に歩んでいくことができます。たとえば、先日のWBCでも大活躍した、メジャーリーガー大谷翔平選手の「曼陀羅チャート」は有名です。しかし、彼のように最初に決めた大きなゴールに向かって一つひとつ努力して達成していける人は、ごくわずかです。


つまり、ほとんどの人にとってキャリアのマラソンレースは、ゴールがどこにあるのか、どんなものなのかもわからないまま、押し出されていくようにスタートしていくのです。やりたい仕事や目標、企業のこともよく分からないまま就職活動が始まり、たまたまご縁があって内定がでた会社に就職して、社会人としてのマラソンが始まってしまいます。

そしてクランボルツがいう、「予期せぬ偶然」の連続のなかで、キャリアのマラソンレースが進んでいきます。配属ガチャ、上司ガチャ、と言われるように、社会に出ると、自分でコントロールできることはあまりありません。自分のマラソンレースにであるにもかかわらず、コースは他人に決められてしまう人がほとんどです。

しかし、実はクランボルツはもうひとつ重要なことを言っています。それは、人によってキャリアに差が生まれるのは、「他人によって左右されるのをただ待っている人」と「予期せぬ偶然のチャンスを呼び込める人」とがいるから。これを、「Planned Happenstance」“計画的な偶発性”といいます。

偶然は実は偶然ではない。呼び込める偶然もある。

では、偶然を呼び込むにはどうすればいいのでしょうか。そのためには、次の3つに集中することが大切です。

  1. 目の前の仕事で結果をだして、「できる仕事を増やす」

  2. できる仕事の中で「自分の特徴や強みをつくる」

  3. 特徴を「周囲の人に分かってもらう」

キャリアをつくっていこうと思ったら、まずできる仕事を増やしましょう。今の仕事で結果を出して、どんなに小さなことでも良いので、少しでも早く、質を高く良い結果に結びつく方法を見つけましょう。それが「仕事ができる」ということです。再現性のあるノウハウを見つけることが何より大切です。

できる仕事が増えれば、その中で得意なことや、興味を持って頑張れることのレベルを徹底的に上げて、自分の特徴(強み)をつくりましょう。これも小さなことでも構わないので、周囲の人から、「このことなら、あなただね」と言われるようになれば、強みを生かせる仕事が回ってくるようになります。

強みを生かせる仕事が増えると、結果が出やすくなります。このサイクルを作ることで、広く周囲に自分の価値が伝わり、次のチャンスが巡ってきます。これが、「偶然のチャンスを呼び込む」メカニズムです。

キャリアをうまく作っていく人は、このメカニズムを生み出す努力を惜しみません。そして、どんどん次のチャンスを得ながら、キャリアの40年のマラソンを走り続けていきます。新人として、最初はみんな同じゴールを目指していたように見えても、10キロ(年)地点、20キロ(年)地点、30キロ(年)地点と進むうちに、いつの間にか全然違うところを走っています。もし自分がうまく走れていないと思ったら、今からでよいので、Planned Happenstance理論のメカニズムを自分が実践できているかを振り返ってください。

いつからでも、「偶然を呼び込むメカニズム」は始められます。そして自分なりのゴールに向けてそこから走り始めれば、過去は「今と未来」によって上書きされていきます。これからキャリアを歩む新卒社員の皆さんも、すでにキャリアを歩んでいる皆さんも、より多くの偶然を呼び込んでください!皆さんのキャリアのマラソンは今、何キロ地点でしょうか?そして残りは何キロでしょうか?

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