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5.【連載小説】 rencontre -いつもの失恋-


"3年"
初恋にしては、長い期間だったと思う。
そんなに長い時間を共有したのに、その恋の終わりは本当に一瞬だった。
今となっては最後の日にちゃんと会ったかすら覚えていない。
もうかなり曖昧になった記憶だけれど、どうしてだろう。
大好きだった優しい先生に言われたあの文言だけはもう長い間ずっと消えない。


『 面倒だし好きじゃなくなった。
それに俺、浮気したよ?
それでもいいの? 』


私にとってこの出来事は今でもトラウマだ。
あんなに真面目だった先生がこんなにも違う人になり果ててしまった。
私が知る同世代の男子なんて比べものにならないぐらい酷い人。
それと同時に思った。
3年ってすごく長い。

それからの恋愛はずっとループ。
先に好きになるのは相手の方で、恋はいつも強引な相手に引っ張られるように始まる。
私は何となくで付き合ったはずなのに、気付いたら私の好きが追い越して行くのだ。
そしてまた違う人から強引に恋されて、私が辛い失恋をする。
ずっとずっとその繰り返し。

就職活動は失恋の気持ちをぶつけた。
もう誰との失恋だったのか今では全く覚えていないけれど、そのときは必死だった。
別れた相手に後悔させたかった。
いや、厳密に言うと少しにニュアンスが違うかもしれない。


『やっぱり友里は良い女だ。
お前しかいない。 』


そう言って戻ってきてほしかった。
具体的に誰にというわけではないけれど、そのとき私を振った誰かにそう思ってほしかった。

そして大学受験時代に続き、不純な努力で手に入れた就職先は某大手航空会社の国際線のCA。
相手を見返すには申し分無いネームバリューだ。
私の人生はこうでなくちゃいけない。
失敗しても最後は成功しなきゃいけない。
私が華やかな場所で働いてるのを見て、いつか後悔してほしい。
就職が決まった当時、そんなふうに考えていた気がする。
今思えばここからどんどん弱くなって、理想の自分からどんどん離れていった。

私が思い描く大人の女性にはどうやったらなれたんだろう。


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