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月が映すは人の生き方

 帰り道、上を見上げると私を強く照らす町の電灯たち、その光は眩しくて良く目立つ。しかし、私の視線はそれとぶつからない。私が見つめるのは等間隔に並ぶ電灯の隙間を通り抜けた先の、遥か遠くの月の姿。月は光るが電灯ほどの眩しさは持ち合わせていない。せいぜい太陽の光を反射した分だけ。それでも、私の目を奪うのは唯一無二、この世に一つしかないその存在感音声なのだろうか。周りで点で光と比べて遥かに大きいこともその理由の一つかもしれない。
 それじゃあ太陽の方が、なんて思ったが、実際太陽を見惚れることはあまりないことにも気づく。太陽も唯一無二の存在、月より遥かに強い光を放っている。さらに言うなれば月の光の大元、私たちの暮らしの根源でもある。それでも、月の方が美しく見えるのは、満月、半月、三日月と毎日表情を変えるその今日しかない儚さ、月に当たる光から読み取れる太陽の位置が趣を感じさせるからなのかもしれない。
 月を見て思うは人の生き方。目立つことは気付かれることにつながるけれど、見惚れてしまうことはない。誰もいないかもしれないけれど、そこで目立たなくとも、毎日新しいことに挑戦していく。儚く散ってしまうかもしれない。それでも、その全力で臨む姿はとても美しい。
 帰り道、疲れた身体で思う。
 
 

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