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学習者の「どうして?」に応えたいなら、まずは「○○○日本語教師」からー後編ー

後編です。日本語を教える者として、これまで教えてきた者として、振り返りつつ書いてみます。これから日本語教育を始めたい人や、始めたばかりだけどもっともっと上へ上へいきたいという人、のお役にも立てば嬉しいです。


「○○○日本語教師」を勧める理由

メリデメはあれど、最初は「雇われ日本語教師」として働くのをお勧めします。

学習者のニーズに応えられる力を作る素地になるから

 自分で選べないからこそ、いい意味でいろんな学習者に出会えます。経験できること、知れることがたくさんありました。学習者だけでなく、先輩や同僚の存在から学べることも本当にたくさんありました。
 チームに所属することでの面倒くささももちろんあるけれど、多くの異なる出会いがあちらからやってくることで、多くの学びや気づきに出会えていたこともまた事実です。
 ある程度経験を積んで、本当に思うのは、出会った人の数だけ「ニーズに応える自信」になっていることです。

目指したい教育づくりのための自分だけの資料になる

 学習者が日本語を学びたい動機、身につけたい日本語、学びのスタイルもも様々です。
「“きれいな日本語”を話したい!」
 きれいとは?何をもってきれいなのか、多くの先生の実践と学習者とのやりとりから、自分は何を提供できて、するべきかがだんだん見えてきたりします。(テキストに書いてあるものがいつも“きれい”だと考えると先生もいますし、私のようにそうでない派もいます)。
 
「説明はもういいから、考えさせて!言わせて!」
 地頭がいい人ほど多い印象があります。それもいろいろな学習者とのいろいろな形で出会えたからわかったことです。(私は全ての学習者に気づきが必要だと思っていますが、それを希望しない受身の学習者も少なからずいます)
 
「あ!そうか!先生、それだったら、こう言える?」
 習ったことをすぐ試したいタイプの学習者には、どんなプロセスでその体験を提供するのか?楽しくも難しいので、いっぱい試行錯誤しました。

多くの異なる出会いが素地になったと思っています。

 そして、何より思うのが、雇われ教師時代が「なぜダメなのか?」に応えられる力をつけるのに必要なプロセスだったと思えることです。おかしいことを指摘するのはプロでなくてもできますが、なぜおかしいのかを論理的に、簡潔に、やる気を失わせず伝えることはプロの仕事だと思います。ペーペーの時は質問されるのも怖かったし、うまく説明できないから指摘できないでいる、なんてこともありました。わからないから先生というプロに聞いているのに、なあなあにされるなんてガッカリですよね。
 日々の学習者とのやりとりや同僚の先生との議論、授業へのFBから「なぜこんな質問が出るのか」がだんだんわかってきて、どうしたらいいか考える、相談する、やってみる、改良する、そういうことが同じ学習者を相手にしている同僚たちと一緒にできたことが素地を作ることにつながったなと感じます。直接手の内を見せあうのではなくても、授業の記録などからお互いの失敗成功をシェアし合えていたことでも経験の量が何倍にもなっていたなとも思えます。

 どこかに所属して、そこのやり方で一通りやってみる。それだけでも、経験自体が収穫だし、経験するだけじゃなくきっと何かしらのFBがもらえたり、上手な人の技も盗めたりします。誰かによって考えられたカリキュラムがどうなっているのかを中からやりながら観察することもできますからね。

いろんな引き出しのついた素地づくりの環境

 その素地が作られる環境の種類が豊富なのも、大きな大きな利点です。日本語学校や専門学校、大学などに所属する教師になると、さまざまなスタイルで教える経験が積めます。クラスサイズ、レベル、テキスト、国籍、テーマなどなど、本当に多岐に渡る形態を担当できるので、知らず知らずのうちにいろんな知見が溜まります。

クラスサイズ

 私は台湾日本語学校時代、日本企業の工場で、50人近いクラスで50音教えたことがありますが、これはなかなか無謀でした。が、大人数からマンツーマンまでさまざまなクラスを経験できて、それぞれに適した活動スタイルや教え方があることを学べたことは、本当にありがたいと思います。効果的な練習方法が全然違いますからね。
(私は20人くらいの中規模クラスと、5、6人の少人数クラスが割と好きです。)
 レベルも超上級から0レベルまで、テキストも定番のものから学校のオリジナルのものまで、母語も全員同一クラスから多国籍まで、本当に今思うと貴重な経験だったなぁと思います。

テキスト

 テキストもいろいろ使いました。特徴、傾向、表現の扱いや使い勝手の良さ、学習者とのマッチ度などさまざまポイントがあるのですが、実際の使用感から学習者のニーズに合ったものを選ぶのに今もすごく役立っています。

学習者の母語

 学習者の母語の違いも教え方に大きく関わってくるので、両方経験できてよかったと思っています。個人的には多国籍クラスで、全員自分の国や自分の話をしてもらって、みんなで「へぇ〜!すごい〜!」っていう、あの感じが大好きです。

テーマ

 テーマ授業も作文、会話、漢字、発音、ディスカッション、プレゼンなどいろいろあって、「こんな力も日本語教育なんだなぁ」とこちらも一緒に学ぶ、ということも多かったです。私は会話や漢字クラスの経験が割と多いかなと思います。
(会話クラスの内容は日本人にも十分役立つので、社員研修でその時のポイントを取り入れたりもしています。)

 こんなに多くの経験ができる機会を、雇われずに、フリーで得ようと思ったら、それはそれはそれは大変です。経験できたさまざまな瞬間の「あの時のあのイメージと似てるか〜」とか「そういえばあの国の学生がこういうの嫌がったな」とか、「このテキストの例、あんまりピンとこないみたいだったなぁ」とか、自分が体感したものを持って、次にもっと良いものを目指して挑めることにつながります。
 ぜひ、ここの教育理念が好き、ここの先生たちがなんか素敵、ここの取り組みが面白そう、と感じたところに「雇われ」て、そこで一生懸命成果を出す!マインドで、1周、2周してみてください。

今日はここまで。


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