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妄想レビュー返答

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こちらは、企画「妄想レビューから記事」の返答をまとめたマガジンになります。 企画概要はこちら。 https://note.com/mimuco/n/n94c8c354c9c4
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#小説

ミムコさん企画「妄想レビュー」より #3返答『紅葉の季節』/朗読してみたよ

ミムコさん企画の「妄想レビュー」に返答作品としてワタクシ・いぬいゆうたが書いた『紅葉の季節』を朗読いたしました。 ミムコさんの妄想レビューはこちら! で、朗読はこちら!! 原作はここっ! 自分でも割と好きな作品なんですよね。秋も深まりを見せてまいりましたので、いまが朗読のチャンスかと(^_-)-☆ チャンネル登録、高評価、よろしくお願いシャース!!

小説|埋められた芸術

 荒れ地を見て年老いた芸術家は嘆きます。この町で描いた花畑の絵により芸術家の名は世に知れ渡りました。だからこそ再び訪れた町の花々が枯れていたことを芸術家は悲しみます。進む町の開発に花は散ったのでした。  力なく歩いていると芸術家は少女と出会います。少女はかつて花畑だった荒野へ向かい絵を描いていました。空想上の花畑の絵。芸術家に憧れ少女は画家を志していました。芸術家は心に決めます。余生はこの町で過ごそう。  芸術家は命果てるまで少女に絵を教えます。芸術家が亡くなると世界中の

芸術家の卵 【名探偵コスティーナ x ミムコさん妄想レビュー】

 立札には威厳があった。 「この下に私の最高傑作が埋まっている」 「事件の匂いがする。掘り出してはならない、だと」  ポアロに憧れる警部は、風に歪むつけ髭を気にしている。 「あの方の遺言でありますから」  町長は気が気でない。芸術家が亡くなって一週間。世界中から愛好家が訪れ悼んでいるというのに。 「一帯の土地を買い占めとは。埋まっているのは、利権がらみで死体、あるいは脱税の証拠」 「そんな」 「かばいだてするなんて、あんたもグルかね」  怒りで真っ赤になる町長。  はえとり

いつでも心は晴天で。【#才の祭】

「おひさまの下に出られないの」 夏なのに長袖の服。その手には、しっかりと日傘の柄が握られている。 彼女は、青空の下を歩くことができない。 彼女とは、偶然図書館で出会った。 僕の仕事は司書。予約していた本を取りに、そして読み終わった本を返しにくる彼女は、とても印象深かった。 夏でも、肌の露出が一切ない。 きっちりと肌を覆うかのように、黒色のロングワンピースにカーディガンを羽織り、あまり空調が効いているとは言えない図書館で、静かにハンドタオルで汗を拭っていた。 その

冬に贈る、春の青空ワンピース【企画参加】

商店街の片隅にある、アンティーク調のお店。 よく、喫茶店だと間違えて入ってくる人もいるが、ここは私の作った服を売っている、小さなお店だ。 今風に言うならば、私はデザイナーという職業になるのだろうか。 自分で服をデザインし、服を縫っている。 普通の人と違うところと言えば、空を切り取って服を作り上げることだろうか。 魔法のように聞こえるかもしれないが、私はこの眼で見たものをそっくりそのまま描くことができる能力を持っている。 『空を切り取った服』 巷ではこっそりと噂さ

小説『天の川を探して』【note創作大賞応募作品】

   【プロローグ】 私が小学五年生の夏、父と母と私の家族三人でY県の山奥にある村に引越しした。  家はとても古い小さな木造の日本家屋で、玄関の土壁の端っこが剥がれて竹小舞がむき出しになっており、居間まで風が吹き込んできた。時々、そこからムカデやトカゲが家の中に入ってくると、母は悲鳴を上げて「早く街に帰りたい」と文句を言っていたけれど、私はこの家のピカピカの青い瓦屋根と、広い広い庭を見渡せる長い縁側が気に入っていた。  街にいる頃は、マンションに住んでいたから小さなベランダに

SS「紅葉の季節」/おせっかいな寓話(妄想レビュー企画参加⇒返答)

■ミムコさん 妄想レビュー#3 これは揺れる恋心を描いた作品なんですが、 紅葉が風に舞うシーンが美しくて。 「女心と秋の空」をうまく表現しているんですよ 紅葉、と漢字2文字で書くと「こうよう」と読むべきか、「もみじ」と読むべきか、稀にだが困惑する瞬間がある。特に晩秋を迎えようとするこの時期はなおさらだ。私の場合は半年ほど前から、もうひとつ混乱を招く要素が追加され、現在に至っている。 「ノムラモミジです」と、彼女は名乗った。 その女性、野村紅葉は25歳。桜の開花前線が到

SS「夜の笑い声」/おせっかいな寓話(妄想レビューから記事企画 ⇒返答)

⬛︎ ミムコさん妄想レビュー#1⬛︎ ちょっと不思議でユーモラスなお話でした。 夫がリモートワークになった主婦の話なんですけど、昼夜逆転で仕事をする夫の自室から、深夜に声が聞こえてきて......その声が毎晩彼女に不思議な夢を見せるんです。 「うふふふふ、うふふふふ」 午前2時にトイレに立った私は、夫の部屋の扉の隙間から、明かりとともに漏れる奇妙な笑い声を耳にした。 女性の声?きっとオンラインで打ち合わせでもしているのだろう。少し気にはなったが、仕事ならば仕方がない。

〔小説〕キセキ~at Cafe Yuko~・全文

※3回に分けた小説の全文掲載です※ ◇◆◇ 「まあ、お母さんに彼氏がいるのは、何となく知ってたけどさ」  いつもより早口で言いながら、幹子は隣にいる私と、テーブルの向かい側に座った、健太郎の顔を順番に見る。 「でも、よりによって、何で三沢先生なの」  そして、私ではなく、彼にその問いをぶつけた。  Cafe Yuko。窓の大きなこのカフェは、健太郎と私にとって、大切な居場所だ。山小屋をイメージしたウッディな内装と、壁にかかったピンクの花束の水彩画が、店内の空気をやわらかく