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桜貝と春の歌【歩行者b×タケノコ×ミモザ コラボ】

🌸春とギターイベント開催前の作品ですが、内容がとっても春とギターなのでに参加追加しておきます

歩行者bさん・タケノコさん・ミモザの三人で「落花」をテーマにした詩や自由律俳句・俳句などを作り、それをもとにした文章を書きあってみました。
これは歩行者bさんのこの↓自由律俳句から生まれた物語です

自由律俳句

インターバルから桜の花の言葉は跳ねて受け取れなかった夜が悶々と森にあけた耕作田だった土くれに埋まった桜貝を手にとる生まれたての音符は今朝雨のように溢れた道をつたい芽を吹き川へ海へ流れていった

海はそっと風にのせ ありがとう を歌った

歩行者bさん


静かな花冷えの夜風に乗ってギターをつまびく音がする。少しずれるように囁くような歌声も聞こえる。まるで桜の花のような歌声だ。
なんだよ、桜の花の歌声って、と自分にツッコミを入れる。
でも、と自分で自分に答える。見て見ろよ、歌と一緒にほら桜が舞ってくるじゃないか…
夜空にふわふわと桜が、旅をするように舞っている。歌声に乗って空中を流れている。いや、その花びらが歌声そのものだと分かる。僕は手を伸ばし、その一つを握る。目の前でそっとその手を開くとそこにあるのはつやつやと月に光る桜貝が一片。
僕はかたわらのギターを手にとり、その小さな桜貝をつまみあげると迷いなくそれをピックにして弦を鳴らす。普通ならその脆さからすぐ砕けるであろう桜貝は、何にも負けない美しい爪のように弦を強く弾き音を生みだし続ける。僕も目を閉じて桜貝で弦を鳴らし続ける。

 森から土から雨から
 春が生まれる
 春が芽吹く
 それはやがて海へと

僕はそんな詩をギターに乗せて口ずさむ。
そのうちに僕には分かる、桜貝のピックがかきならすのは波の音だ、春の海の歌。寄せては返し、寄せては返し、そのうち遠いところまで僕を運んで行く。春霞でぼんやりしたあの空の下の海の果てまで。
僕は波に身をゆだねる。

(了)


*歩行者bさんのコラボ作品はこちらです

*タケノコさんのコラボ作品はこちらです


昨日ギター部に入れて頂いたので、ギター弾けない新入部員活動として作中にギター出してみました!(笑)


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自由律俳句

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