見出し画像

アントワーヌ・ローラン『赤いモレスキンの女』吉田洋之訳、新潮社

新潮クレストブックスらしい一作。軽いが品が良くて、ハッピーエンドが予想できるので楽しく読める。今日のわたしみたいに、軽い風邪をひいて湯たんぽと一緒に布団で読むのには最適だ。映画化もされている(される?)らしい。

ある女性が深夜、自宅に入ろうとしたところで何者かにバッグを奪われ、頭を強打してしばらく意識が戻らず入院する。書店を経営する男がごみ箱に捨て置かれているバッグを見つけ、誘惑に負けてバッグの中を見てしまう。化粧品などの細々とした物、サイン入りの本などにまじって、赤いモレスキンの手帳がある。そこに書かれた女性のつぶやきのようなメモを見て、書いた女性に関心を持つようになり…というロマンチックな始まり方。ところどころに出る本の題名の使い方や、本をめぐる話もイキだ。そして読んでいる自分もモレスキンの手帳がほしくなる(が、調べると高い…)。

実は似たようなことがわたしのまわりで起きたことがある。大学生の頃、知り合いの某くんは教室で手帳の忘れ物を見つけた。そこに書かれている内容に惹かれて、持ち主を探そうとした。彼はわたしにも「これ、きみの?」と手帳を見せてくれた。フランス語の文が書かれていたその手帳の主を彼はついに見つけ、それをきっかけに二人は恋人になったのだった。


この記事が参加している募集

読書感想文

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?