39歳、映像を副業に。異業種で歩んだ人生を強みにする。
会社員であっても、副業を持つことが珍しくない時代。
「今の仕事を続けながら、動画編集者としてもキャリアを歩みたい」と夢見る方も多いはず。
ただ、「本業を続けながらスキルを身に付けることは可能?」という不安も出てきますよね。
そんな方にまず見ていただきたい作品がこちら。
コラージュが印象的なこの作品の作者は、mimosa卒業生の月岡早洋さん(以下、Sahiroさん)。なんと作成当時、動画編集を学び始めてまだ1年未満。1期ビギナーコース、2期キャリアコース卒業後、すぐに制作されたものです。
そんなSahiroさんはアメリカ在住歴6年。米国企業でプロジェクトマネージャーをしながら動画編集者としてのキャリアを歩み始め、人気YouTuberの大石結花さんのアシスタント、そして3期からはmimosaのAfter Effects講師としてデビューし、活躍の場を広げています。
「なぜ未経験でも動画編集者としてのキャリアを切り開けるのか?」を掘り下げてみたところ、Sahiroさんの生き様からそのヒントが見えてきました。
自己表現に躊躇しやすい私が手に入れた、動画というツール
-mimosa2期卒業コンペで優勝したSahiroさんの作品は、講師の方々も嫉妬するくらい素晴らしいものでしたね。
もう、正直めっちゃ大変でした(笑)
テーマが「自分らしさ」だったので、人生を振り返るいい機会でした。思い返すと谷が多い人生でしたが、出会った人、環境、影響を受けた言葉などをポジティブに伝えたい。あわよくば、今まで抱えてきた葛藤などを浄化できたらいいなという思いがありました。
-なんと、谷ばかり!Sahiroさんはどんな人生を歩まれたのですか。
私の中で「いい子」は中学生で終わってるんです。高校は進学校でしたが日本の大学には進まず、当時好きだった古着の縁も感じてカナダのトロントへ。帰国後は、英会話学校やアパレルで働いたり、思い立って京都に移住し、テキスタイルスクールで染色やテキスタイルを基礎から学んだり。立体作品やコラージュの展示会もしましたね。でも、アルバイトをしながら学校に通うのもなかなか大変で、だいぶ貧相な生活をしていました。そんなこんなで、せっかく留学させてもらったのに、英語も使わずフラフラ生きていることを、自分でもモヤモヤ感じていたし、親に申し訳なく感じていました。非常に揺らいでいた時期ですね。
テキスタイルスクール時代に一度訪れた金沢に25歳で移住し、外資系企業に就職。パソコンもほとんど触ったことなかったですが、テレコム建設プロジェクトマネジメントのアシスタントとして働き始めました。途中、転勤でアメリカへ。10年勤めたタイミングで日本に戻る選択を迫られましたが、結婚してアメリカで生活することを選びました。それを機に同じ職種で転職し、アメリカでプロジェクトマネジャーとしてのキャリアを重ねています。
「周りの言うことを聞ける人間だったらこんなに苦労しなかった」と当時を振り返っていましたが、アメリカである程度自信を持って自活できるようになると、「自分を信じて選んできた人生も間違ってない、うんうんGood Job!」と思えるようになりました。
-卒業コンペで優勝した際に、普段クールなSahiroさんが大泣きされていたので、その理由が少し分かった気がします。
卒コンは自分をさらけ出す場だったので、自分の恥じらいを脱ぎ捨てる気持ちで作品をつくりました。それを受け入れてもらえた安堵の涙だったかもしれません。
私はコンプレックスの塊で、自分を表現することに自信がなくて。人前で話すのはう〜ん、作品を作っても実際に見てもらうのはちょっと…と躊躇するタイプなんですよね。
でも、動画に出会い、やっと自分の思いを吐き出すツールを手に入れたことで、作品として自己表現できる楽しさを知り、自分を解放できた感覚があります。
-Sahiroさんの作品は、独特な色合いや質感、コラージュが印象的ですが、今までの人生が反映されているように感じ納得しました。
そう考えると、クリエイターとして人生を歩んでこなかったからこその経験が、この作品を生んだのかもしれませんね。
その視点はありませんでしたが、確かにそうかもしれませんね。特にこの作品に限っては「泥くさくリアルな人生を表現したい」と思って作りました。もし私がクリエイターとして生きていたら、私の伝えたかった生々しさを、もっと綺麗に表現していたかもしれません。
また、私はすごく色にこだわりがあり、派手な中に、くすみが入った色合いが好みです。そういう自分の好きな色をそろえて作るので、一般的な配色ルールに落とし込んでないからこそできる表現もあるのかもしれませんね。
動画編集歴3ヶ月でYouTuberアシスタントへ
-mimosa受講中にトントン拍子で動画編集者としてのキャリアを切り開いていった印象が強いですが、きっと「ここぞ!」というところで覚悟を決める場面も多かったんじゃないですか?
それを言うと、mimosaに入ることが一番勇気のいることでした(笑)
今まで日本人コミュニティから遠ざかり、交流もほぼゼロ。そういうコミュニティに所属する概念すら自分にはありませんでした。でも、たまたまTwitterでしおりさんの投稿を見かけ、ダラスでマイペースにひっそりと暮らす私と正反対に見える彼女の、アクティブで明るいパワーの元で学びたいと思い、ビギナーに参加しました。
mimosaは私に合っていたんでしょうね。先生と生徒というかしこまった雰囲気がなく、1人の女性として、お互いのライフスタイルや考え方を尊重しながら高めあう雰囲気が好きです。気づいたら、ビギナー、キャリア、アドバンス、すべてを受講していました。
-ビギナーコースの後、すぐに大石結花さんのYouTubeの編集アシスタントに応募したそうですが、修了時に1人前になった自信がありましたか?
自信?ないないないない、ないです(笑)ビギナーコースで動画編集のスキルは一通り学んでいましたが、仕事としてやっていくほどの自信はありませんでした。
ただ、動画のスキルに自信がないからこそ、結花さんのお人柄、取り組みに共感する気持ち、プロジェクトマネジメントをしてきた経験を交えて熱くお伝えしたら、ありがたいことに受かりました。
ただ、アシスタントに決まったはいいものの、動画素材のシェアの仕方、効率的な作業の進め方、モーショングラフィックスのカスタマイズ方法など、「????????」な毎日でした。でも、mimosaのSlack内で相談できる環境をフル活用させてもらい、経験を積ませていただいてます。応募する時から「困ったらmimosaがある」という安心感があったんでしょうね。
近道をしない
-卒業後は3期キャリアコースのAfter Effects講師のデビューもされましたよね。この短期間にここまで成長された裏には、きっとものすごい努力があったはず。普段どんなことを心がけていますか?
あ〜、それで言うと「近道をしない」ってことですかね。アイディアがポンって頭に浮かぶと、すぐにAfter Effectsを開いて直進したい気持ちがとっても強いんですけど、構成練って、素材集めて、それらが決まってやっとPremiere ProやAfter Effectsを開いて、ファイルの整理して…と、それらのプロセス一つ一つを飛ばさないようにしています。
-何か近道をして失敗した経験があったのですか?
いや、と言うより、そう学んだんですよね。ビギナーコースの初めの段階でファイル整理の仕方、Premiere Proのワークスペースの配置の仕方、構成を練ってから絵コンテ書いて撮影する流れなど、実際に編集する前段階の作業が大切だと先生が言っていたので、スポンジ状態の私はそれらのアドバイスをスッと吸収できました。逆に、受講前に自分で動画を作った経験があったら、もっと雑になっていたかもしれません。
-噂では、授業の内容を毎回Notionにまとめていたとか。
あ〜やってました。授業受けながらスクショとって、Notionに貼り付けて、コメント書いて…と、全回やっていました。整理整頓が好きで、AfterEffectsのチュートリアルなども全てNotionにまとめてます。
-教科書として売れそうですね(笑)
mimosa textbook(笑)
異業種キャリアがアニメーションに生きる
-整理整頓が苦にならないのは、もしかしたらプロジェクトマネジメントのキャリアが生きているのかもしれませんね。
プロジェクトマネジメントは、1つのプロジェクトに対して、1から10のプロセスを作って、その進捗を最初から最後まで追っていく仕事ですしね。
-大石結花さんの #TechTalk の回では、After Effectsを使用したアニメーションが目を引きますが、これらも今までのキャリア経験が生きているのではないですか?プロでもここまでわかりやすいインフォグラフィックはなかなか作れませんよ。
ExcelとPowerPointが得意な方で、数字をちょこちょこ動かしたり、レポートを作ったりすることは仕事でも良くやっていました。以前担当したクライアントさんが、レポートに非常にこだわりがあったので。練習しているうちにコツが掴めたのかもしれません。
意図を説明できる作品づくり
-よく、Sahiroさんの作品に対して「Sahiroさんの作品らしいよね」という声を聞きます。それってすごいことで、クリエイターとしてのセンスがどの作品にも反映されるって、技術を磨いた熟練クリエイターでも難しいものです。Sahiroさんは学んだことを自分のものにして、納得したものを世に送り出している印象です。
あ〜でも、自分が「いいな〜」と思うエフェクトのかけ方、動かし方、質感が出るまでは何度もチュートリアルを見て練習します。
数秒の作品でも、一つ一つのデザインや動きに対し、その意図を説明できるようにしていますね。
-勘だけで作っているわけではないんですね。プロのデザイナーだ!
クライアントさんとは、ストーリーを作る時点で相互確認をかなりきちんとします。そして、9割方アグリーされた状態でアニメーションをつけるようにしています。もちろん、まだまだ経験が浅く不慣れな面もあるので、周りの方々を頼りながら模索しています。
本業は柱、動画は日常の刺激
-本業もしながら動画編集者としても仕事をするのは、なかなか大変ではないですか?
楽しいんですよね、シンプルに。本業は生活の柱だと考えているので、それはそれで大事で。一方の動画は自分のクリエイティブな部分が刺激され、日常のスパイスになっています。
ただ、構成を練る段階の「産みの苦しみフェーズ」は、成長痛の時間ですね。家事はクイックにやって、作品に向き合う時間を作り、アイディアがポンポン出てくる状態に持っていきます。
作品作りがひと段落したら、数日何もしない時間をつくり、またエネルギーを蓄えます。私、ソファーでぼ〜っと数日過ごせてしまうほど、ダラダラするのが好きで。でもそれをずっと続けると不安になるんですよね。だから、自分で目標をつくって、追い込むようにしています。
-おお、とてもストイック。お休みの日はどんなことをされますか?
旅行したり、スポーツ観戦したり、アート鑑賞したり。特にアートに関しては、動画編集をする前は好きな作家さんを軸に鑑賞することが多かったのですが、最近は「この質感いいな」「この配色を真似したいな」など、作品を見る視点が変わったことは面白いですね。
躊躇せず、大切な人たちと楽しくなりそうな選択を重ねる
-これから取り組みたいことはありますか?
After Effectsは毎日触るようにしていますが、もっと極めたいですね。Illustratorで作った素材を動かせるようになりたいです。
あと、気づいたらずっと家にこもってしまうので、撮影にも出掛けてみたいですね!mimosaのアメリカ合宿開催を期待してます(笑)
-動画に出会ってからのこの1年を、一言で表すとどう表現されますか?
「まず、やってみる」「考えるより行動」「新しい道の開拓」ですかね。
今までも直感を信じて躊躇してこなかったからこそ、こんな人生になったんだと思いますが、それがもろに出た年でした。今までの人生の経験が、うまく循環するような1年でした。本当に幸せだなって思います。だからこそ、今の良い循環を乱したくないから、甘い気持ちが生まれないように、やるときはやろうと心に決めています。
今、こうやって幸せを感じているのは、出会った方々のおかげ。好きなもの、好きな人、好きな仕事。それをきちんと大切にしていきたいから、私の力が求められるならば、全力で取り組んでいきたいです。
映像作品って、結局は人柄。作者の今まで生きてきた人生そのものが、唯一無二の感性となってにじみ出るものなのでしょう。また、異業種からの挑戦だからこそ描ける作品がある。そう思うと、クリエイターとしての可能性は全員にあると勇気をもらえるインタビューでした。
【取材・文=渡邉茜(mimosa2期生)】
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