資料が増えた。覚える量も増えた。 【føroyskt #4】
■日本語リソースが増えました
日本語でフェロー語を解説しているページ・書籍を見つけたのでメモ。英語の資料を読むのはそれほど苦でもないけれど,やはり日本人読者としては日本語の資料もあると負担が軽くて助かる。
フェーロー語 føroyskt(Twitter)
主に印欧語の解説などをしているいんげるさんが最近運営しはじめたTwitterアカウント。ここではフェロー語(フェーロー語)について,同じゲルマン語群に属する周辺の言語などとの関係も交えて解説している。
東海大学出版会「北欧のことば」
上記いんげるさんの note 記事で見つけた書籍。北ゲルマン語群に限らずフィンランド語やグリーンランド語なども含め,広く北欧の言語についてまとめた本である。フェロー語についても誕生の経緯や統語論・発音などについて細かく解説されている。改めて大学の図書館に探しに行ったらあったので補助教材として読んでいる。
■今日までに学習したこと
名詞の複数形(主格)
名詞の複数形の作り方には様々なパターンがある。複数形の語尾の種類はある程度纏まっている(-ir, -ar, -ur, -r, 不変化など)
たまに複数形で母音が変化する名詞がある。
例:nátt → nætur, mús → mýs, barn → børnそれ以外に複数形で不規則変化をするものがある。
例:maður → menn複数形の既知形はさらに接尾辞がつく。男性なら -nir,女性なら -nar,中性なら -(i)ni。
名詞の対格
名詞単数の対格は基本的に活用語尾を変化させて作る。
男性:dag/ur → dag, tím/i →tím/a
女性:gent/a → gent/u
その他の語尾・中性では特に変化なし。ただし例外もある。
例:maður → mann複数形の対格は主格と同形。
対格の未知形冠詞は,男 / 女 / 中の順に
ein / eina / eitt対格の既知形接尾辞は,男 / 女 / 中の順に
単数:-in / -ina / -ið
複数:-nar / -nar / -(i)ni
動詞
1型現在形:語尾が1人称単数で -i,その他単数で -ar,複数で -a となる動詞。
例:kalla, rópa, skriva, tosa, ætla, hugsa, bíða, svara, mála, súkkla など
文構造
否定文には否定の副詞 ikki を使う。ikki は主語が文頭にあるときは動詞の直後,それ以外や否定疑問文では主語の直後に置く。
例:Eg keypi ikki eina bók í dag. / Í dag keypi eg ikki eina bók / Keypir tú ikki eina bók í dag?
発音
たまに二重母音の後に "-gv" や "-ggj" のような綴りが続いて母音が単母音化することがある。これは鋭化ないしは skerping と呼ばれ,北欧言語のなかでもフェロー語特有の現象とのこと。特に "ó" は単体で「オウ」という二重母音を表すのに対し "ógv" では例外的に「エグヴ」という発音になる。
例:kúgv, Jógvan, oyggj, beiggi, fríggjadagur, nýggjurよく調べたら,名詞与格などの語末につく m は文字通りに発音せず n と発音するらしい。言われるまで気づかなかった。
例:Eg eri úr Føroyum. (私はフェロー諸島出身です)y と ý は基本的に i と í と同じ発音だが,デンマーク語からの借用後の場合は y がデンマーク語の y の発音(ドイツ語の ü とほぼ同じ)に引っ張られる。
例:kyniskur, psykologur
表現・その他
「ご機嫌いかが?」= Hvussu hevur tú tað? / Hvussu gongur?
投げかけられた質問に対して「あなたは?」= Og tú?
特に Hvussu gongur? に対して Og hjá tær?「一緒に…へ行きませんか?」= Hevur tú hug at koma við mær … ?
Thanks / No thanks (EN) = Takk / Nei takk (FO)
動詞 plaga は,後ろに at + <不定形> を伴って「(習慣として)〜する」という意味を持つ。
例:Eg plagi at lesa blaðið. (私は普段その雑誌を読んでいる)曜日の名前は全て男性名詞。格変化の仕方は dag/ur と一緒。大文字で始める必要はない。日曜から順に
sunnudagur / manadagur / týsdagur / mikudagur / hósdagur / fríggadagur / leygardagur
また,「(普段)◯曜日に」というときは対格,「直近の◯曜日に」というときは対格既知形になる。
例:Hósdag keypi eg altíð eplir. (私は普段木曜日にジャガイモを買う)
Hann kom fríggjadagin. (彼は金曜日に来た)月の名前は全て男性名詞。格変化はしない。また大文字で始める必要もない。9月〜12月はそれぞれ2通りの書き方がある。1月から順に
januar / februar / mars / apríl / mai / juni / juli / august / september (septembur) / oktober (oktobur) / november (novembur) / desember (desembur)
フェロー語のことわざなど
Trygg eru heimatún
直訳:自宅横の道こそ安全な場所。
意訳:おうちが一番
Trøllabørn gráta eftir hvonnum á jólum
直訳:トロールの子たちがクリスマスにシシウドをねだる。
意訳:ないものねだり
Hvonn とは日本語でセイヨウトウキ,アンジェリカ,シシウドとか呼ばれている植物。植物の知識が皆無なのでこのことわざで初めて知ったけれど,主に北欧などで見られる植物で,食材や薬草としても使えるらしい。夏に花を咲かせるそうなので,確かにクリスマスにねだられてもどうにもならない。
例えば義務教育で教わってきた英語や,Duolingo で並行して勉強中のドイツ語やデンマーク語はフェロー語と同じゲルマン語派に属するが,属格(所有格)以外で名詞自体が格変化することはほぼなかった。対してフェロー語では名詞が明確に格変化をする。よって新しい名詞に出会ったときは,名詞の性別は何か,複数形をどう作るかに加えて,格によってどう変化するかをその都度覚えなければならない。
要するにフェロー語は自分にとって今まででいちばん習得の大変な言語。質問する相手がほとんどいないだけでも大変なのに,それでも今の今までフェロー語の独学が続いているのは,経験したことのない文法との出会いをむしろ楽しめているからなのかもしれない。
今回はここまで。
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