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新型コロナウイルスで米大学も次々閉鎖。オンライン授業へ移行、留学生への影響も

アメリカでも新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が日に日に大きくなっています。ニューヨーク市も3月15日、すべてのレストランやバー、公立学校の閉鎖が発表されました。もちろんブロードウェイなどの劇場もすべて閉まっています。普段食料品を買っていたTrader Joe'sやWhole Foodsなどのスーパーは、パニック買いでほとんど品物がない状態。いつも混雑している地下鉄もがらんとしていて、ゴム手袋やマスクを身につけた人が数人乗っているくらいです(アメリカでは日本のようにマスクを普段から付ける習慣はなく、マスクをしている人を見るのは初めて)。3月20日には、ニューヨーク州知事が、薬局やスーパーマーケットなど必要不可欠な企業を除くすべての事業者の出勤を禁じ、自宅待機命令を出しました。

寮は閉鎖、帰国する留学生続々

私が通っているニューヨーク大学(NYU)も閉鎖され、5月のセメスター末までオンライン授業が決定しています。9月から始まる秋セメスターの授業も、通常どおり再開するかは未定です。各大学が運営する寮でも感染者が出ているため続々と閉鎖され、学生は48時間以内に退去を命じられました。

幸い私はアパートに引っ越していたので退去の必要はないですが、ニューヨークのアパート探しはただでさえ難しく、留学生は行き場がない状態。同じくニューヨーク市内にあるコロンビア大学では、特に学部の留学生は帰国を推奨されているとのこと。そのため、一旦国に帰ることを決めた友人もかなり多いですが、そもそも自国でもCOVID-19の影響が大きく帰国できない人もいるし、帰ったとしてもアメリカにうまく再入国できるかも不透明な状況で、どうするか決めかねているという人も多いのが現状です。一緒に暮らしていたルームメイト2人も帰国しました。

フルブライト奨学金に関連したプログラムも中止または延期が決定しています。幸い、現在支給してもらっている奨学金に関しては、今のところ米国に滞在している限り、継続されるのではないかと思いますが、アドバイザーが忙しいこともあり、2年目の更新は保留状態です。もともと1ヶ月以上米国を離れると減額という規定があり、この緊急事態の中では今後どうなるのか予測がつきません...。

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(COVID-19に関する状況によって大学の対応も変わるので、通知メールが毎日来ています)

また、アメリカでは、卒業後にOPT(Optional Practical Training)という制度を利用し、フルタイムで就労できる可能性があるのですが、今回帰国してしまうと、再入国のタイミング、ビザやスポンサー機関の規定などによってはOPTの制度が利用できなくなる可能性があるということで、今後アメリカ国内での研究や就職が難しくなるのではないかと心配している留学生も多数います。

授業はオンラインに移行

そんな状況ですが、授業はすべてオンラインに移行して、ヴァーチャルという点以外は通常通り行われています。3月9日にオンライン授業が発表され、2日後には開始という、割と素早い対応でした。クラスはすべてディスカッション中心なので、オンラインシステムでスムーズに議論できるのかなぁ...と心配していましたが、個人的には普段の授業とあまり変わらず参加することができ、むしろ通学時間がなくなるのでその分研究に集中できると考えればそこまで悪くない...!と考えるようにしています(ただ、普段使える施設が使えなくなることで研究にも支障が出ていることから、学費の一部返還を求めるpetition(請願)運動が立ち上がったりしています)。

NYUで使っているツールはZoom。日本でも最近使用する人が多い印象です。挙手ボタン、Yes・Noボタン、チャット機能が付いていて、全員の顔が見られるのでとても使いやすいです。授業は計2時間ですが、複数人が同時に話してもわりとスムーズに進みました。課題に関する連絡やレポートの提出、授業に関するアナウンスメントは、普段からEメールや大学のオンラインシステム上で行われているので、大きな支障はありません。

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(受講しているクラス"Disinformation and Narrative"のオンライン授業風景。教授含め、みんなお茶を飲んだりチョコレートを食べたりしながら自宅から参加しています)

ただ、これも7〜10人程度の小規模クラスだからできることかもしれません。より人数が多いクラスでは、クラスを2つに分けて1時間の短縮授業を2回行うなどの対応を取っている教授もいます。

課題量も通常どおり

課題として出されるリーディングやレポート期限も変わらず。私が登録している授業は3つ(Disinformation and Narrative, Algorithmic Culture, Political Communication)だけで、実際に授業があるのは月曜と木曜のみですが、課題が大量にあるので、COVID-19の影響はあっても、毎日課題と向き合う日々です。

アメリカの大学院生がディスカッションに備えて読む書籍や論文の量はだいたい毎週250-300ページと言われていて、私のコースではもう少し多い時もあるかなぁ...という印象です。それに加えて、各自がそれぞれ課題レポートや論文を書き進めます。

課題書籍や論文内容についてのプレゼンテーションは、NYUのビデオ録画再生システム「Stream」を使用して、あらかじめ録画・アップロードするという方法を取っています。学生は予習として録画されたプレゼンテーションを視聴し、授業内では質問や議論を中心に行っています。

オンライン授業に移行する前は、クラスメイトとリーディング・グループを作って、分担して課題書籍を読む・ディスカッションするという機会を設けていました。互いに学べることも多いし、クラスメートと会うことでモチベーションも上がっていたので、こうした集まりもCOVID-19の影響で中断してしまったことはとても残念です。落ち着いたら、オンラインでやろう!と友人たちと話していますが、帰国したり新たにアパートを探したりしている友人が多いため、今のところ実現していません。

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「来年度からの留学を考えていたけど、コロナウイルスの影響で先が見通せない、どうしよう....」という方もいらっしゃるかもしれません。特に、私のように奨学金プログラムへの応募を考えていた方には、資金面でも選択肢が限られてくるかもしれません。ただ、アメリカにはオンラインの修士コースも多数あります。今回、COVID-19の影響でオンラインでの授業に移行してみて、システムやサポートはわりと充実しているな、と感じているので、遠隔での学位取得というのも今後ますます選択肢の一つになるのかもしれません。

この状況の中、オンラインで授業ができるだけ本当にありがたいですが、すでに留学中の生にとっては先行きが不透明で、奨学金プログラムやビザから、住居や普段の生活まで影響が及んでいます。日本に一時帰国することは今のところ難しそうですが、助け合いながら、感染防止を含めて今自分にできることを着実にやっていこうと思います。


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