アメリカ留学研究ノート - kayo mimizuka

偽情報・誤情報、メディアリテラシーの研究に関する海外情報&留学情報を発信します。 テキサス大学オースティン校博士課程。

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最近の記事

感情面から取り組むデジタルリテラシー 誤情報対策を「時間」の問題として捉え直す【論文紹介】

2022年の春、誤情報・偽情報に対抗する手段としてのデジタルリテラシー教育に関する研究プロジェクトに参加しました。研究チームの仲間と一緒に執筆した論文 "It's about time: Attending to Temporality in Misinformation Interventions" が4月に発表されたので、日本語で内容を紹介します(論文は、CHI  = Conference on Human Factors in Computing System 学会にて

    • トランプ支持者は「情弱」ではない? 米キリスト教保守派が応用する聖書読解のメディア・リテラシー

      「フェイクニュースを拡散するのはメディア・リテラシーがないからだ」「トランプ支持者は情弱で批判的思考ができないから、だまされている」 アメリカでは、そんな風にリベラル派の人たちが共和党支持者を批判するのを何度も耳にした。 だが実際には、2016年の米大統領選でトランプ元大統領に投票した保守派の人々は、多様な情報源に触れ、ニュースを批判的に解読していたーー。社会学者のフランチェスカ・トリポディは、米キリスト教保守派がどのようにニュースに接触・理解しているのかを観察し、そんな

      • 批判的思考は役に立たない?今アメリカで起きている、従来のメディア・リテラシーを見直す議論とは

        「批判的思考が大切」「あらゆる情報をまずは疑え」「自分で調査しよう」ーー。メディア・リテラシーをめぐる従来の議論では、「クリティカル・シンキング」の重要性、マスメディアやソーシャルメディアの情報を鵜呑みにすることの危険性が強調されてきました。 私自身も、メディア・リテラシー=批判的思考、という風に教えられてきたし、メディアなどでもそうした論調がメインストリームです。一方アメリカでは、批判的思考を軸とした従来のメディア・リテラシーは、今日のメディア環境においては逆効果なのでは

        • メディア系大学院の授業はどう選ぶ?

          2019年秋からはじまった大学院の修士過程も、気づけばあっという間に終わりが近づいています。どの授業を取るかは、毎回セメスターが始まる前にすごく悩みました。私が通っているニューヨーク大学院のMedia, Culture and Communicationプログラムでは、課題の量やスケジュールを考慮すると、1学期に受講する授業数はだいたい3〜4つが目安で、日本の大学に比べると少なめです。単位数に応じて授業料も増えるため、やみくもには受講できません...。大学やプログラムによって

          フルブライト奨学金:どんな支援が受けられる?選考プロセスは?

          海外留学を実現するためにはさまざまなハードルがありますが、お金の問題は一番重要といってもいいかもしれません。アメリカの大学の学費は(学校やプログラムにもよりますが)かなり高額です。私が通っているニューヨーク大学院は、私立ということもあり、1年間で約5万ドル(500万円)。ニューヨークの家賃は高いので、ほとんどの学生がルームシェアをしていますが、それでも一人あたり月800〜1200ドルが相場です。たまに外食をしたり、映画や娯楽を楽しんだりしたければ、最低でも月20〜23万円ほど

          フルブライト奨学金:どんな支援が受けられる?選考プロセスは?

          新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(2)

          アメリカでは、新型コロナウイルスのパンデミックがまだ続く中、米ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが警官に押さえつけられ死亡した事件を受け、各地で大規模なデモが起きています。それに伴い、オンラインのデマや偽情報も問題になっています。 「ネット上の一見馬鹿げたデマを真剣に取り上げる必要があるのか」「信じるのはごく一部の人で、実際の生活にはそこまで影響はないのではないか」という声もよく耳にしますが、アメリカに住み、パンデミックとデモを巡る議論をウォッチしていて改めて「

          新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(2)

          新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(1)

          アメリカでは、新型コロナウイルスのパンデミックがまだ続く中、米ミネソタ州ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが警官に押さえつけられ死亡した事件を受け、各地で大規模なデモが起きています。それに伴い、オンラインのデマや偽情報も問題になっています。 「ネット上の一見馬鹿げたデマを真剣に取り上げる必要があるのか」「信じるのはごく一部の人で、実際の生活にはそこまで影響はないのではないか」という声もよく耳にしますが、アメリカに住み、パンデミックとデモを巡る議論をウォッチしていて改めて「

          新型コロナウイルス 、反人種差別デモと偽情報(1)

          6フィート間隔、入店人数制限...ニューヨークの「ソーシャル・ディスタンス」戦略

          新型コロナウイルスの影響で外出制限が続くニューヨーク。日本では「密集」「密閉」「密接」の3つの「密」を避ける行動が求められていますが、アメリカでも「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)を保つことでさらなる感染拡大を防ぐ戦略が取られており、ニューヨーカーも積極的に実践しています。実際に街の人々がどんな風に生活しているのか、写真付きで紹介します。 ニューヨーク州が感染の中心地にアメリカの状況は深刻です。4月1日現在で、死者は5千人に迫る勢い、感染者数は21万人超です。 出

          6フィート間隔、入店人数制限...ニューヨークの「ソーシャル・ディスタンス」戦略

          新型コロナウイルスで米大学も次々閉鎖。オンライン授業へ移行、留学生への影響も

          アメリカでも新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が日に日に大きくなっています。ニューヨーク市も3月15日、すべてのレストランやバー、公立学校の閉鎖が発表されました。もちろんブロードウェイなどの劇場もすべて閉まっています。普段食料品を買っていたTrader Joe'sやWhole Foodsなどのスーパーは、パニック買いでほとんど品物がない状態。いつも混雑している地下鉄もがらんとしていて、ゴム手袋やマスクを身につけた人が数人乗っているくらいです(アメリカでは日本のように

          新型コロナウイルスで米大学も次々閉鎖。オンライン授業へ移行、留学生への影響も

          メディアが政治を「ブランディング」する:党派的報道と米保守派の台頭【NYUイベントレポート】

          米国の右派ポピュリズム運動と保守派メディアは、トランプ大統領が誕生した2016年米大統領選にどのような影響を及ぼしたのか? 2020年の選挙に向けて米国内で議論が盛り上がる中、米メディアと保守派の台頭がテーマのトークイベントが10月17日にニューヨーク大学(NYU)で開かれました。中間レポートと試験の真っ只中...ですが、所属しているメディア・コミュニケーション学部の主催ということもあり、参加してきました。 ゲストスピーカーは、"The Branding of Right

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          ニューヨーク大学ってどんなところ?NYUキャンパスを紹介します。

          日本の新学期は4月ですが、アメリカでは9月から学校が始まります。私が通うニューヨーク大学(NYU)でも、9月3日からいよいよ授業がスタートしました。 どの大学院に申し込むかを決めるにあたっては、可能であれば現地を訪れ、具体的なプログラム内容やキャンパスの雰囲気(街中にあるのか、留学生は馴染みやすそうか、どんなリソースを利用できるのか、通学にはどのあたりに住むのが良いか...など)を体感できればベストだと思います。ですが、事前に日本からオープンキャンパスに参加するには飛行機代

          ニューヨーク大学ってどんなところ?NYUキャンパスを紹介します。

          【長野からNYへ】 大学院留学の準備編:メディア系コースの選び方

          大学院への進学は大きな投資です。特に海外で勉強するなら、学費も生活費も負担が大きくなります。後悔しないために、どの大学・プログラムに入るかはとても重要。私の場合、実際に出願する約2年前から、メディア・コミュニケーションやジャーナリズム関連のプログラムについてリサーチをはじめましたが、アメリカでは、メディア / ジャーナリズム系のプログラムは日本と比べものにならないほど多く、大学によって全く違いました。どこを受験するかは、かなり悩みました。 自分に合うプログラムを、どう探して

          【長野からNYへ】 大学院留学の準備編:メディア系コースの選び方

          【長野からNYへ】 大学院留学の準備編:いつから始動する?出願すらできなかった1年目

          米大学院への進学が決まってから、「いつごろから準備したの?」「大学受験に向けて、具体的にどんなことをすればいいの?」という質問もよく聞かれるようになりました。社会人留学の場合、仕事をしながらの準備はなかなか大変です。ネットにもすでに色々な情報は落ちていますが、これから学び直しを考えている人に少しでも参考になるよう、私の個人的な(失敗も含めた)経験を書こうと思います。 いつから準備する?私が海外大学院への進学を考え始めたのは、2017年の春ごろ。2018年秋入学を目指して情報

          【長野からNYへ】 大学院留学の準備編:いつから始動する?出願すらできなかった1年目

          【長野からNYへ】 「自分は何者か」を問う②

          長野からNYへ 「自分は何者か」を問う①  はこちら * * * 再び、地方へ 帰国後、就職活動で新聞社やテレビ局をいくつか受けましたが、最終面接までこぎつけたのは通信社の英文記者職のみ。なかなか内定の連絡は来ず、あきらめかけていたところ「英文記者での採用は難しいが(日本語の)編集局記者はどうか」と電話がありました(後々上司に聞いたところ、英語で記事を執筆する課題がまったく出来ていなかったと言われました...)。 赴任先は島根県。地方を出て海外を目指したものの、再び

          【長野からNYへ】 「自分は何者か」を問う②

          【長野からNYヘ】 「自分は何者か」を問う①

          こんにちは、耳塚佳代です。2019年9月から、米ニューヨーク大(NYU)大学院にフルブライト奨学生として留学します。ここでは、現地での生活や研究について発信していきます。 海外の大学受験ってどんな感じなの?とよく聞かれます。海外の奨学金や大学院に申し込む際は、自分がこれまでどんな風に社会と関わり、どんな問題意識を持っているのかを強く問われました。自分の「ライフストーリー」を、それぞれの研究テーマと絡めた「Personal Statement」が、合否の重要な判断材料になりま

          【長野からNYヘ】 「自分は何者か」を問う①