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山で働き、山で遊ぶ。秘境にUターンした20代男子が愛する"唯一無二"な椎葉村

2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画づくりを行っています。
この記事では、計画づくりの中で行った住民インタビューをもとに、
一人ひとりの椎葉村への思いをまとめ、皆さんにお届けします。

お話を伺ったのは、椎葉村内の林業会社に勤めている尾前翔平おまえしょうへいさんです。

翔平さんは、現在26歳。

椎葉村の尾向おむかい地区出身で、高校進学を機に村を出てから、大学、そして1年間の林業学校を経て、株式会社尾前林業に就職しました。

椎葉に戻ってきて5年目の、貴重な椎葉ネイティブの20代です。

そんな翔平さん、味のあるかっこいいデニムジャケットが印象的ですが、
なんとこれ、職場から支給されている作業着なんだとか。素敵!

今回は、翔平さんが椎葉村に戻ってきた理由や、林業という仕事のこと、地域のことなど、様々な思いをお聞きしました。

満足度100点! 山での仕事、職場環境にも大満足

翔平さんは大学を卒業後、椎葉村の実家へ戻り、近隣の美郷町にあるみやざき林業大学校へ通って1年間の研修を受けました。
その後、椎葉村内にある株式会社尾前林業へ入社し、今年で4年目を迎えます。

基本的な業務は、スギやヒノキを切り倒して丸太にし、市場まで運ぶこと。

急峻な山での仕事の大変さを、こう話します。

「椎葉は特に山が急で機械が入れないので、木を手で切り倒します。今後もそれはずっと変わらないんじゃないかな。重たい資材を人力で運んだりもします」

林業でも機械化が進む一方、急峻な椎葉の斜面で、一般的な山と同じように機械を導入するのは困難なことが多いそう。
どうしても「人の力」が不可欠です。

「今はドローンで架線張りなどはやっています。将来的には、もう少し人の負担を減らすような、例えばドローンで重たい荷物も運べるようになったらいいですね」

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林業って、やっぱり大変そう。

そんなイメージもあり、お仕事の満足度はどうですか?と尋ねたところ、
「100点です」
と、気持ちのよい即答が返ってきました。

大学4年生の時、周りの友人たちのように就活をせずに、椎葉へ戻ることを決めた翔平さん。
「山で仕事がしたい」という思いを強く持っていたからでした。

役場の農林振興課に勤めていた父に、そのことを相談。
林業の若い担い手が少なくなっていることをよく知っていた父だからこそ、林業大学校で学ぶことを勧めてくれ、後押ししてくれたそうです。

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体を動かすのが好きで、山も好き。本当に好きな場所で好きなことしてるっていう感じです。あと、会社の待遇が良くて、給料とか、作業服もかなり支給してくれたり、仕事の車も1人に1台用意してくれています」

好きなことを仕事にしている感覚を持てるということは、とても幸せなこと。
若くして、しかも社会人として職に就いた初めての仕事をそのように捉えられるというのは、意外と難しいことですよね。

それに加えて、職場環境にもとても満足している様子の翔平さん

尾前林業の尾前社長は「林業をしに若い人が来てくれるんだから、他に劣らない十分な待遇を」という思いで体制を整え、迎え入れてくれたんだとか。

林業界も他同様に若手不足と言われる中で、翔平さんのように村に戻って仕事をしたいと考える若者にとって、こうした手厚い受け入れ先があるということはとても心強く、同時に安心して故郷に帰れるきっかけにもなりそうです。

山が好き! 若者的椎葉ライフ

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翔平さんの休日の楽しみは、渓流釣りと、しし狩り。
なんとも椎葉らしい趣味です。

最近のお気に入りはフライフィッシング。
近くの川まで降りて、エノハ(ヤマメのことを椎葉ではこう呼びます)を狙います。

猪狩りに関しては、猟友会にも所属していて先輩方と一緒に活動しているそう。

「犬を先輩たちが養っていて、その犬たちがイノシシを見つけて追い詰めて、獲る。やっぱり獲った瞬間が一番おもしろい」

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椎葉では、犬を「飼う」のではなく、「養う」といいます。
それは、人と動物の関係が可愛がることだけを目的とした飼い主とペットではなく、犬や牛や鶏などが猟犬や家畜として、ずっと昔から人の生活を助ける糧となってきた証とも言えます。

仕事では木を切るために山へ。休みの日は猪狩りで山へ。

まさに「山が好き」という言葉通りです。

唯一無二の、この感じがいい。

椎葉での暮らしをめいっぱい満喫している様子の翔平さん。
なにかに不満に感じていることはあるのでしょうか?

やっぱり街まで遠いっていうところですかね。専門の病院に行くにも1日休みをもらって行かないといけないし、買い物でもそうですし」

近隣の市街地に出るには、車で最低1時間半。
その距離が時には大変だと感じることもあります。

しかし、逆に言うとそれが椎葉の魅力でもあるようで、

「遠くて隔離されてるけど、それが良いというか。唯一無二じゃないけど、独自のこの感じがいいですね。やっぱり人と人がみんな知り合いで、そういうところが一番いい」

翔平さんが住むのは、尾向おむかい地区。
椎葉村の中でも、特に地域の結束が強く、活気のある地域性を持つところです。

地区独自の行事も多く、村内でも指折りで飲み方のみかた(飲み会のこと)が多いことで知られるほど、酒豪揃い。

「地域の行事には全部参加してます。ここに居るからには参加せんといかん。それに、みんなで会うことが楽しいんです。間違いなく、椎葉で一番飲んどるはず

そう言って笑う翔平さん。最近はコロナ禍でなかなか集まる機会を持てないのが、本当に残念そうです。

そんな地域のつながりを、昨今では「煩わしさ」と捉えがちですが、それこそが「椎葉の良さ」だと胸を張って口にする若者の存在は、素直に素晴らしいことだと思いませんか?

それだけでも、椎葉村の未来は明るい。
そんな気持ちにさせてくれます。

この地に生まれ、この地を愛する、未来の子どもたちへ

「椎葉は広いけど、ほとんど知り合い。そこがいい。
街の人からしたら絶対住みたくないっていう人もいるだろうけど(笑)。
生まれ育ったら、本当に、こういうとこがいいですね」

生まれ育った椎葉という土地を、心と体、両方で愛している。

翔平さんには、そんな言葉がぴったりだと思います。

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そして、最後の質問。
これからの椎葉村の未来、どうなっていくといいですか?

「一番は子どもが多くて、ワイワイしてればいいかな。自分が小さい時は子どもが結構いて、休みの日は小学校で遊んだりとか、やっぱり活気があった。今は子どもが少なくなってて。地域全体が子どもたちで溢れるようになればいいなって思います」

自分が子どもの頃のように、たくさん友達がいて、一緒に遊んで、一緒に育つ。
そんな子どもたちの未来を守るために、作るために。

今何をすべきか、何ができるのか。

翔平さんのような若い世代も、考えています。


インターン生
中川note_エディター


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