24年ぶりに新村長誕生!黒木村長が描く「住んでよかった、帰ってきてよかった椎葉村」
2021年度、椎葉村は第6次長期総合計画づくりを行っています。
この記事では、計画づくりの中で行った住民インタビューをもとに、
一人ひとりの椎葉村への思いをまとめ、皆さんにお届けします。
今回お話を伺ったのは、この夏、2021年7月6日より椎葉村長に就任した黒木保隆(くろぎ やすたか)村長です。
黒木村長は、長年椎葉村役場に勤務し、議会事務局長や総務課長などを歴任した後、2011年から今年3月まで副村長を務めました。
そして、24年の長きに渡って椎葉村を率いてきた椎葉晃充(しいば てるみつ)前村長の後を引き継ぎ、今年の7月6日、椎葉村長に就任しました。
そんな新たなスタートを切った黒木村長に、これからの椎葉村に対する思いを伺いました。
24年ぶり!椎葉村に新村長誕生!
今回は無投票での当選となった黒木村長。
村中心部の役場横で行われた候補者街頭演説には老若男女多くの人が集まり、「この場所にこんなに人が集まることは滅多にない!」と言えるほどの光景が広がりました。
まさに、村民の新村長への期待と関心の表れです。
前村長の椎葉晃充氏も、笑顔で応援されていました。
前村長とは休みの度にラウンドをともにする、長年のゴルフ仲間だったという黒木村長。
スマホにつけている最近のスコアを楽しそうに見せてくださったその腕には、くっきりと時計焼けの痕。
なんともチャーミングな一面が垣間見えました。
そんな黒木村長、2011年からは副村長としても公私共に前村長と歩んで来きた背景を振り返りながら、力強くこう語ります。
「前村長からの方針は確実に引き継ぎ、その中で社会の変化に臨機応変に対応していきたいです」
継続の中にも、新しいエッセンスを。
その手腕に今、椎葉村中の期待が高まっています。
Uターン者の支援制度整備で「帰ってきやすい村」へ
これからの椎葉村を考えていく上でまず浮かび上がるのが、人口減少問題。
「最近は、Uターンは少なく、Iターンが多い印象があります」
黒木村長がそう話すように、近年椎葉村では地域おこし協力隊をはじめ、移住者が少しずつ増えてきています。
一方で、椎葉村出身のUターン者が少ない傾向にあるのも事実。
「簡単に言えば、地元の人は椎葉の魅力がわからんということでしょうね」
”生まれ育った土地を出て、外の世界を知りたい”
若者が夢を描き、そう思うことは自然なことだと思います。
特に、椎葉村という場所。
秘境と呼ばれる山あいの地です。
知らない世界への憧れがふくらみ、身近にあるものの魅力やありがたみを見出しづらいということは、少なからず誰もが経験したことではないでしょうか。
そして時が経ち、迎える様々な人生の分岐点。
学生から社会人へ。就職、転職、結婚、出産。
それぞれのタイミングでふと故郷が頭をよぎる時、「よし、帰ろう」と思える場所であるために、椎葉村ができることは何なのか。
「UIターンの支援制度、特に村出身者への支援をより手厚くしていきたい。今増えてきている移住者の皆さんには、皆さんだからこそ感じている椎葉の良さを伝えていってもらえたら嬉しいですね」
安心して仕事ができる足掛かりや手助けになるような支援があるということは、移住者のみならず、Uターンを考える人にとっても心理的ハードルを下げることに繋がります。
また、移住者に対する支援も引き続き行っていく中で、地元住民が感じている椎葉村へのネガティブな部分での固定観念に、そういった移住者が新しい視点をもたらすことができれば、地域全体がうまく調和していく一番の共存の形と言えそうです。
また、2020年に椎葉村は株式会社キャスターとのリモートワーク推進に関わる連携協定を結びました。
コワーキングスペースも完備した椎葉村交流拠点施設「Katerie(かてりえ)」を中心に、リモートワークやワーケーションの推進地として同社との取り組みをより充実させることで、新たな雇用創出の面でも期待が高まっています。
椎葉村×キャスター 協同プロジェクトについてはこちら⬇️
今一生懸命な人の助けになる施策を、ともに作っていく
「これまでの椎葉の商業は、正直弱いところがあった。上椎葉の商店街でもシャッターを下ろすところが多くなり、一気に過疎が進んでいる感じがします」
椎葉村というごく限られた商圏の中で、商工業を営み続ける難しさは並大抵のことではありません。
しかしここ数年、村の若手の中ではこの困難な環境を逆手にとり、「秘境・椎葉村」だからこそ確立できる戦略やブランド力を強みに、クラウドファンディングやSNSなどの情報発信をうまく利用してメディアの注目を集める企業も目立ってきています。
椎葉村の商業を担う若手代表! 椎葉昌史さんの記事はこちら⬇️
「彼らのように、実際に動いている人だからこそ人に届くものがある。そんな若い世代に期待しているし、そのバックアップとして何が必要かを一緒に話しながら補助の形を作り上げていけば、より現実味を帯びていくのではないかと思っています」
行政からの一方的な補助の施策では、うまくはいかない。
今一生懸命に動いている人の助けになる形を一緒に探ることこそ、本当に必要な制度整備が実を結ぶ近道になるのではないでしょうか。
「今椎葉では、林業農業には給付金制度がある。それに見合うような制度を全ての産業に適応して、Uターン者に向けても帰ってきて仕事を始めやすい、続けやすい環境づくりを目指します」
そしてさらに、新しく仕事を始めたい人に向けた支援にも繋げていきます。
山と人。
切っても切れない問題だからこそ、今本気で考える
椎葉の暮らしは、山と共にあります。
どの業界も人手不足に悩む時代ですが、椎葉村も例外ではなく、特に林業従事者が少ないという問題は重大な課題です。
「肉体的にもハードな職業だが、椎葉には無くてはならない存在。例えば若者や移住者が一定年林業に従事したら村有林を譲渡するなど、当事者にとって将来の見える施策も検討したい」
また黒木村長は、産業としての林業に加えて、防災の観点からも林業を重視していると話します。
「近年の全国の災害状況を見ても、防災にはより力を注ぐ必要があると感じている。急傾斜地の整備などハード面の事業を続けながら、防災に関する情報発信の充実、災害時の迅速な復旧体制の強化など、ソフト面での整備も進めたい。また伐期を過ぎて大きくなり過ぎた杉を放置しておくことは土砂崩れなどの危険性を高めることからも、今後は林業を防災の観点からも支援していくことが重要だと考えます」
椎葉での安心な暮らしを成立させる上で、決して容易くはない課題。
しかしそれは、椎葉村がこの厳しい山間地にありながらも、ここでの人々の暮らしがこれまで通り続いていくためには、避けては通れない課題です。
だからこそ、一歩一歩、着実に前に進む必要があります。
「住んでよかった村」へ、できることを確実に
「できないことを並べるよりも、できることを確実にやっていく。綺麗な言葉で飾っても仕方ない」
お話の最後、そう口にした黒木村長。
その言葉からは、目の前の一つ一つの課題に対して、できることを着実にこなしていくのだという確固たる決意が感じられました。
「『住んでよかった』という村の実現に向けて、これまでの取り組みを継承していく。一方で、総合計画は現在策定中なので、Uターン者への取り組みはもちろん、今住んでいる人たちの満足を得るため、さらに施策に磨きを掛けて前進していきたいと思っています」
*かてーりの里、椎葉。
*「かてーり」とは、椎葉に古くから根付く相互扶助の精神。
そう呼ばれてきた由縁はきっと、厳しい環境の中でも人々が互いに助け合いながら作り上げたこの村が「住みよい里」であり続けてきた結果です。
変革の時代の流れが押し寄せても、この村が「住んでよかった」「帰ってきてよかった」「生まれてよかった」村であり続けるために。
黒木村長と椎葉村の新たな挑戦が今、はじまります。
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