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安く買い叩かれる才能

私はね、ライターやってるんですよ。一応。

フリーランスになってからかなり経ちますが、ありがたいことに途切れずお仕事も貰って。

基本いつもお仕事頂ける方としか仕事してなかったんです。でも最近はちょっとスケジュール的に余裕があって、クラウドソーシングで副業的に仕事を受けることがあるんですよ。

それでね、前回も書いたけどクラウドソーシングサービスっておかしな依頼が色々とあるんですよ。

気になって自分が使ってるサービス以外で沢山仕事を取ってる人に話を聞いてみたんです。そしたら色々と驚くことがあって。

全部書いてるととんでもない量になるから一部だけですが。話をしてくれた人をN氏とします。

まずクラウドソーシングのライター募集で驚くのが報酬の低さ。聞いた中で一番やべーよって思ったのが3000文字の記事1本で300円の報酬。しかも差し込む画像を自分で撮影して来いって依頼。

そんなの誰が受けるんだよって思って、そのスカウトを受けたN氏は辞退したんだそうだ。辞退しても募集ページは見れるからN氏はその動向をしばらく観察した。そしたらなんと驚いたことに3人もの人がそんな安い依頼で契約したそうだ。

めちゃくちゃ安い報酬でも受ける人がいるから、発注側も強気なんだろうか。

もう1つヤバいなって思ったエピソード。

クラウドソーシングの仕事の中にはタスク型という仕事がある。仕事の募集ページにテキスト入力欄があって、そこに求められた内容を入力して承認されたら報酬が払われるという方式の依頼。

だいたいアンケート的な内容が多いんだが、たまにちゃんと知識がある人じゃないと書けないような、本格的な記事の募集もあったりする。

N氏は1本仕事を終えて、担当にチェックしてもらってる間暇だからとこのタスク型の仕事をしたんだそうだ。

それは1500文字のちょっとしたストーリーを書いて500円の報酬の仕事だったそうだ。普段ならそんな金額で仕事は受けないが、暇つぶしならいいかと書いたらしい。

普通に承認されて報酬が払われ、それで終わりと思っていた。ところが『おかわり』が来たんだそうだ。

その内容が「継続で仕事あげるから同じ文字数のストーリー10本3,000円で書いて」なんていうとんでもないもの。

報酬割り引くなよ!ってN氏は半ばキレながら返事を出したそうだ。さすがにガチギレ文章で断るのは気が引けて「単発やテスト記事以外の継続案件は文字単価1.5円以上から受けています」と丁寧に返した。

それに対しての依頼主の返事が衝撃的な内容だった。

かなりの長文で書かれていたが要約すると「そんな欲張ってると仕事取れなくなるぞ」という説教。N氏は呆れて返信はしなかった。

そしてさらに呆れたことに、しばらくしてその依頼主からもう1度依頼があったそうだ。今度は「ストーリー10本で5,000円出すからお願い!」という内容。

N氏は今短編ストーリー物の執筆をメインで受けてて、同じ文字数で最低でも3,000円くらいは貰ってる人。その金額でも依頼がバンバン入る才能を500円で買いたいって言ってるのは滑稽だろ。

こんな安い依頼ばっかりですよ。まともなのはほんの少しだけ。N氏はそう言っていた。そしてそんな安い依頼でも受けてしまう人がいるのも、悪循環の原因だと。

そしてヤバいを通り越して詐欺だろって内容まであった。

〇〇に関する記事、1本3000文字程度、報酬5,000円

一見まともそうに見える依頼。でも募集には次の文章もある。「まずはテスト投稿をして頂きます。文字数は同じで1本300円。合格の場合は継続して依頼し、継続案件では前述の報酬になります」

こういったテストは募集でも良く見られるし、何の問題も無い。雇う側だって実力を見た上で採用するのは当たり前だ。

そう思ってN氏はテストを受けたそうだ。そして提出した記事はOKが出て300円の報酬を受け取った。提出した際は内容を褒められ、これは継続確定。なんて思っていた。

ところが結果は継続見送り。仕方がないと思って依頼主の評価を行った。「継続見送りは残念ですが、指示が的確でライティングしやすかったです」と★5の評価を付けてページを閉じようとした。その時他の評価が目に入ったんだそうだ。

「継続されなかったのは残念だったけど・・・」「今回は不合格でしたが・・・」そういった内容が並んでいる。

大体70件程の評価があったそうだが、「継続ありがとうございます!これからもよろしく」という内容の評価が1件もないことを確認した。

当然依頼主への評価は任意で、中には評価を付けない人もいる。だから評価外で採用されたのかもしれない。でもそれにしては不採用と言ってる評価が多すぎないか?と疑問に思った。

それでその依頼主のアカウントをウォッチ設定にして、依頼と評価を監視していたそうだ。ってN氏監視してばっかりだな。

その結果評価は100を超えても採用の文字は無く、実際に募集ページにも契約者の人数は更新されない。ただそのうち募集ページが削除され、新規の依頼も出さなくなったそうだ。

「なんだ。ただ採用基準が厳しいだけで誰かを採用したから募集を止めたのか」そう思っていた。

そしたらなんと別のアカウントで全く同じ文面の募集を始めたそうだ。

ちなみにN氏がテストで提出した記事は検索をかけたら普通に公開されていた。募集には「継続にならなかった場合でも、テストで提出して頂いた記事は掲載することがあります」と書いてあるから公開されていること自体は問題ない。公開されていたサイトには他にも多数の記事が掲載されている。

これはあくまでN氏や話を聞いた自分の推測でしかない。

あのサイト。掲載されている記事は全部テスト記事で構成されているのでは?

ちゃんとした報酬を餌にテストという名目で記事を書かせて、ポイ捨てしてるのでは?

本当にただの推測。でもそんなやり方も実行するのは難しくない。

安い依頼が横行しているクラウドソーシング。このまま才能を安く買い叩く行為を繰り返せば、クラウドソーシング自体崩壊するんじゃないか?

今回はライティングの仕事中心で受けているN氏の話を元に書いたが、イラストレーター界隈でも内容に見合わない安い依頼や詐欺まがいの依頼が横行しているらしい。

次はそう言った人たちにも話を聞いてみようと思う。