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【恋愛小説】㊵最初の恋人 最後の恋人 〜達也一家~

「たっちゃんからさ、「助けてくれ、とにかくウチに来てくれ」って、電話あってさ。ワケも分からず、家にお邪魔したんよ」
昌人は笑いながら話していたが、達也はうなだれていた。


昌人が達也の自宅に着いたと同時に達也の父も帰宅した。
達也の母が
「お父さん、帰ってきて早々に悪いけど、ちょっと昌人くんの話しを聞いて」
寡黙ながらも芯がありそうな達也の父と、関西の母を絵に描いたような達也の母。その横で達也は昌人に「すまない。オレの手には負えない」と完全降伏状態だった。

達也の母から兄妹喧嘩の理由から昌人の話しになり、金銭トラブルがあるなら、力になるから話してほしいと言われ、昌人は話し始めた。
「もう、終わったことなんですけど・・」
ママさんの事や美々の事、友達の事を話した。
母は達也に
「アンタ、この前、自分が借金したらオカンどうする?って聞いてきたことがあったね。もしかして、このこと?」
達也は美々から親の責任の話しを聞いて、親ならみんな美々の言うような責任をとるのか疑問に思い、母親に確認した。
「達也に聞かれた時も答えたけど、こんなバカな息子でも、私にとってはかわいい息子だから、お金を用立てて息子と一緒に土下座に行くって答えたんよ。親なら当たり前だって。」
達也の母は達也に視線を向けた。
「達也、アンタは馬鹿だけど、親の気持ちを少しは理解してくれていると思ってた。なのに、彼女さんに言われるまで気づかなかったとは・・・。情けない」
「そんなん、わかるワケないやん。オレ、子供持ったことないし。子供の立場しかわからんよ」
「だからアンタは馬鹿だって言ってんのよ!!」
料理をしながら話しを聞いていた母は、持っていたおたまで達也を叩いた。

「達也も昌人くんも妹もよく聞きなさい。今言った通り、親ってのはそう言う生き物なんよ。親バカと言われようが、子供の尻拭いをするのは親として当然。アンタたちがよそ様に迷惑をかけたら、親は土下座でも何でもする覚悟がある。私から言わせてもらえば、その覚悟がないなら親になるなって思うワケ。アンタ達もいづれ親になる日がくるかもしれない。だから、この事は忘れたらあかんよ。」
3人とも、真剣な眼差しで母の言葉を胸に刻んだ。

「美々ちゃん、知ってる?、おたまってめっちゃ痛いで。アレは凶器になるで」
達也は頭を抑えながら美々に訴えた。
さらに話しを続けた。

とにかく、金銭トラブルはひと段落着いたと説明すると、達也の父は、小さくうなずき、リビングへと向かった。
食卓テーブルではまだ、話しが続いていた。

達也の母はリビングに父への食事を用意し、また、食卓に戻ってきた。
「次はこっちの兄妹喧嘩ね。で、妹は何が気に入らないの?」



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