見出し画像

【恋愛小説】㉜最初の恋人 最後の恋人 〜土下座~

「昌くんは私の言葉より達也くんの言葉を信じてた。
私とは別れてしまえばそれまでだけど、達也くんとはずっと友達でいたいと昌くんは願ってるはず。
私の口から話せば、昌くんのショックは大きいだろうし、二人の友情が壊れてしまうかもしれない。
真実を知るなら達也くんの口から聞かないと、昌くんも納得しないと思った。
だから、言わなかった。
達也くんのために黙ってたんじゃない。」

「オレらの友情のため・・・」
そう言って、達也は片手で頭を抱えた。

「美々ちゃんは自分の幸せよりもオレたちの友情を優先したって言いたいのか?」

「昌くんを傷つけたくなかった。ただ、それだけ。何度も言うけど、達也くんのためじゃない」

達也は深いため息を吐き、ポツリポツリと話し始めた。

「美々ちゃんが「なんで誰も私のことを信じてくれないの」って叫んだ時、オレのウソをバラされると思った。
だからオレは言い訳を必死で考えてたんだ。
でも、美々ちゃんは言わなかった。
ウソを言ってるオレのことを、言うなとサインを送ったオレのことを、一度も責めなかった。
不思議だったんだ。
玄関で別れようとしている美々ちゃんを見て、なんでこの子はバラさないんだろうって。
幸せだったと泣いているのに、なんでバラさないんだろうって。
その内、玄関で辛そうにしている2人を見て、オレがウソを言ったまま、この2人が別れてもいいんだろうかって思い始めて・・・。
辛そうにしている昌人の後ろ姿を見て、このままではいけないと。
オレは肝心な時に逃げる癖がある。オレは今ここで変わらなけば、一生逃げ癖がつくと思った。
例え、親友を失っても、変わらなけばいけないんだと・・・。
何も言わない美々ちゃんを見て、何故か、そう、思った。」

昌人はようやく、状況を理解したようだった。
そして珍しく声を荒げたのだ。
「応援するってウソだったよかよ!!金目当てなんて酷いことを!!。オレが選んだ彼女だぞ!!そんなワケないだろっ!!」

昌人がこんなに怒っている姿を初めて見た。
達也は再び、畳に頭をつけ、土下座をした。

「ホントに申し訳ない・・・」

「オレじゃなくて、美々に謝ってくれ!!」
達也は美々に向かって、土下座をした。

見てられなかった。
「とりあえず、頭を上げて。お願いだから。」
美々は静かに声をかけた。

昌人はまだ怒っていた。
「美々は腹が立たないのかよ!!あんな酷いこと言われて、ウソまでつかれて・・・」

美々は昌人に、もうそれ以上、言うな、と、首を振った。

「達也くん、とりあえず、頭を上げて。これじゃちゃんと、話が出来ない。」
美々は達也の腕と肩に手を置き、ゆっくり達也の顔を上げた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?