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問い直すことで広がる可能性に目を向けて、衝動を引き出す本質的課題を発見する(メンバーインタビュー・野島繁昭)

本インタビュー企画では、ミミクリデザインのメンバーが持つ専門性やルーツに迫っていくとともに、弊社のコーポレートメッセージである「創造性の土壌を耕す」と普段の業務の結びつきについて、深掘りしていきます。

第8回は野島繁昭( @ShigeakiNojima )です。2019年6月からミミクリデザインに参画した野島は、現在主に組織開発・人材育成のプロジェクトをディレクションする役割を担っています。今回のインタビューでは、野島が強い関心を寄せる“問い直し(リフレーミング)”に対する思いやエピソードを伺いながら、それらとミミクリデザインの理念や今後の方向性との接点について、語ってもらいました。(聞き手:水波洸)

中学生向けの体験型学習プログラムを運営する中で、学ぶことの多様さと楽しさに触れた


ーよろしくお願いします。野島さんは2019年6月頃にミミクリデザインに参画し、すでにいくつかのプロジェクトを担当しながら活躍されています。まずは現在ミミクリデザインで関わっている業務について、簡単にお話を伺ってもよろしいでしょうか?

野島 よろしくお願いします。これまでミミクリデザインでは、組織の理念や行動指針を組織全体に浸透させるプロジェクトを中心に関わらせてもらいました。他には、ミミクリデザインの行動指針の策定に関わったり、ある領域のファシリテーター育成を目的とした講座の講師を務めたりしましたね。

ー幅広く取り組んでいるんですね。野島さんは学生時代からミミクリデザイン代表の安斎と親交があったと聞いています。どのような関係だったのでしょうか?

野島 中学・高校時代に同じバスケ部に所属していました。安斎さんが一つ上の先輩です。ただ、その頃は正直そこまで親しい間柄ではなくて、どちらかというと大学に進学してからのほうが縁がありました。大学生の時に、安斎さんが中学生向けに体験型の連続授業のようなものを新しく始めるとSNSで発信していて、面白そうだと思ったので、運営スタッフとして関わらせてもらったんです。

ー安斎が自身のインタビュー記事の中でワークショップの可能性を感じた原体験の一つとして挙げているプログラムですよね。

野島 そうです。「『学びってもっと多様で面白いものなんだ!』ってことを伝えよう」という趣旨で月に一度開催されていたのですが、ほぼ毎回スタッフとして通っていました。自分でコンテンツを作って授業をやってみたことありましたね。

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ーどういったところに惹かれて関わり続けていたのでしょうか?

野島 単純にプログラムが面白かったのもそうですが、中学生たちの目がだんだんキラキラしていくのが、見ていて楽しかったんです。“学ぶ・学習する”という言葉に対して、当時の僕は、汗水たらしながら必死に頑張る...というようなイメージを持っていたのですが、ワークショップ的に楽しく学んでいる中学生たちの姿を見て、「あ、学ぶって楽しいことなんだ」と思えました。とても印象深い体験でした。

ーその頃からすでにワークショップのエッセンスに触れるような体験をしていたんですね。

野島 そうですね。そのあと前職のスローガン株式会社に、インターン時代も含め約10年勤めて、退職してミミクリデザインにジョインすることになりました。

ー前職を退職されてから、ミミクリデザインの一員として働き始めるまでの経緯を教えてください。

野島 (2019年)4月末に退職することだけ決めていて、次の仕事を明確に決めてはいなかったんですよね。業務形態は変わりましたが、次のチャレンジが思い切ってできるようにとスローガンからもお仕事をいただいていたので、当面はそれらに取り組みながら、そのぶん振り切って、「ご縁があって直感的にワクワクする、チャレンジングな仕事をしよう」と考えていました。

ちょうどそのタイミングで、先ほど話に上がった安斎さんのインタビュー記事を読みました。「相変わらず面白いことしてるな、この人」と、直感的にビビッとくるような感覚があって、ご飯に誘ったんです。そこで、「何か一緒にやりたいよね」という話になったのが、一緒に働く直接のきっかけとなりました。

人の可能性が問い直しによって広がっていく瞬間を目の当たりにした


ー前職のスローガン株式会社ではどのような業務に取り組んでいたのでしょうか?

野島 もっとも長く取り組んでいたのは、優秀な大学生と新進気鋭のスタートアップ企業を結びつける就職・採用支援サービスでした。学生向けに、一対一のキャリア相談や、多人数を対象とした就職セミナーの企画・登壇をしたり、最後のほうではその部署の責任者を務めたりしながら、7年間で5000人くらいの学生のキャリア支援を行なってきました。

ースローガン時代に培ったスキルや考え方のうち、個人的にこれからも大切にしていきたいと思うものは何かありますか?

野島 スローガンでは、学生のキャリア観・職業観を問い直しながら、よりその学生に適した企業に就職するためのお手伝いをしていたんですよね。そして、そこで培った“リフレーミング(再定義)”をするスタンスや感性は、今後も大切にしていきたいと思っています。スローガンで働いていた頃、学生の間では「良い大学に行ったからには有名人気企業に行くのが当たり前」や「なんとなくイメージの良さそうな企業を受ける」という風潮が、今よりも強くありました。その固定観念をまずは問い直さないと、学生が本当に自分に合ったキャリアを選べません。

いろんな選択肢をフラットに提示して、自分に合った企業を広い視野で考えてもらううちに、何割かは自分はスタートアップやベンチャーが合ってそうだと考える学生が現れますし、大企業や有名企業のほうが合ってると思った学生も、自信を持って決められますよね。もちろん中には、就活をやめて起業する道を選んだり、大学院に進学する学生もいました。ともあれ、大切なのは、自分にとって納得感のあるキャリアを歩むことで、そのためには「問い直し」は非常に重要なプロセスだと感じました。

ー「問い直し」に関連して、前職で印象に残っているエピソードなどはありますか?

野島 ある京都大学の学生とのエピソードが印象的でした。最初に会った時は、「大手の中でも、チャレンジできるところで...」と、少し漠然とした条件で企業を探しているようだったのですが、その後、面談の時にしっかりと話を聞いて、深掘りしていくうちに、「ゆくゆくは〇〇の領域で自分の事業をしたい」という話を聞かせてくれたんです。

ただ、その時、彼女は母親との関係性がうまくいっていなくて、それが大きなネックとなっていました。お互いがお互いに心を閉ざしている状態だったんです。これ以上親から嫌われたら家庭内でさらに居場所を無くしてしまうかも知れないから...という理由で、自分の意思はさておき、親が期待しているように名の知れた会社に入った方が良い、と考えていて。彼女が泣きながら話をするのを聞きながら、だけど、今の考えのまま就職活動をしても絶対にあとで後悔するから、どこに就職するかよりも先に、まずは親と腹を割って話し合ったほうがいい、と、そこだけは譲らずに諭し続けたんですよね。

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野島 最終的には、まずは頑張って親と話してみるところからはじめよう、という話でまとまって、実際に粘り強く話してみたら、家族関係がすごく改善されたんです。就職も、卒業してすぐに起業するわけではなかったけど、本心から行きたいと思える会社に入れて、しかも新規事業に配属されて、今でもバリバリ働いています。数年経った現在もたまに連絡を取り合うことがあるのですが、本人にとって良い選択ができたんだな、と感じました。

ー「有名企業に行かなければならない」という思い込みに揺さぶりをかけて、本当に解くべき課題が何か、対話的に再定義していったんですね。

野島 はい。そもそもの課題設定が間違っていると気がつくためには、問い直しを手伝ってくれる誰かがいることがとても重要だと思います。それに、先ほどの学生の例に限らず、「有名企業に入るためには何をどうすべきか」などの、顕在化されているニーズに応えるよりも、「そもそもなんで有名企業に行きたいんだっけ?」というところを問い直してみて、その人に適した企業を選ぶお手伝いをするほうが、最終的には学生に喜んでもらえたんです。そのための手段として、リフレーミングを活用していたという感覚です。

ーなるほど。そうした経験を踏まえた上で、現在のミミクリデザインとリフレーミングは、どのように結びついているのでしょうか?

野島 安斎さんのインタビュー記事の中で、彼は自分のことを“ポテンシャルフェチ”と呼んでいましたよね。環境やちょっとした思い込みのせいで本来出せるはずのパフォーマンスが充分に発揮できていない状況があったとして、場や関係性に働きかけて、ポテンシャルが発揮された瞬間に立ち会うことに喜びを感じる、というお話でした。その考え方は僕もとても好きなんです。そして、人が暗黙のうちに抱え込んでいる思い込みの蓋が外れるためには、適切にリフレーミングが行われることが重要になると思っています。

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野島 ミミクリデザインが得意としているワークショップによる課題解決の中でも、問い直すことで学びや気づきを促す過程が必ずありますよね。たくさんの人と話すしたり、自分とは違う価値観に触れたりすることで、自分の固定観念を相対的に見つめ直して、問い直していく。これまでは、リフレーミングを通じた学びや気づきを促すために、個人面談などの手法を主に用いてきました。だけどこれからは、問い直しによる学びや気づきを、自発的・集団的に獲得してもらうための装置として、効果的なワークショップをデザインしていきたい。そんな場を作っていけたらいいですね。

ーポテンシャルが発揮される場を作りたいという安斎の思いは、ミミクリデザインのコーポレート・スローガンである「創造性の土壌を耕す」という言葉にも反映されているかと思います。その言葉については、どのような印象を抱いていますか?

野島 そうですね...。「創造性の土壌を耕す」という言葉を象徴するような場面は日々目にしていると思います。例えば、ミミクリデザインのクライアントワークに臨む際の基本的な姿勢として、アイデアを一方的に与えることを良しとしない雰囲気があると思っています。そうすると、相手が自分で考えることをやめてしまって、アイデアを生み出せなくなってしまうためですね。他のメンバーのそうした姿勢に触れるたびに、先ほどの安斎さんの“ポテンシャルフェチ”に近い考え方...つまり、「クライアントにはまだ発揮されていないポテンシャルがある」という前提や、「それらのポテンシャルを発揮しながら、自ら成長してほしい」という意思が、組織の思想的な基盤として、強固に共有されているのを感じます。

また僕自身にとっても、その点は大学生の時に安斎さんの連続授業を手伝っていた頃から、めちゃくちゃ関心があります。面白いなと思っています。...そんな場面の積み重ねが、「創造性の土壌を耕す」ということなのではないかと、今のところ解釈しています。


本当に取り組みたいと思える課題や目標の設定が、人々の創造性を引き出していく


ーこれまでに担当した案件の中で「創造性の土壌を耕したな」と思える場面があれば、教えてください。

野島 経産省・資源エネルギー庁からの依頼を受けて、対話の場づくりを担えるファシリテーター育成を目的とした講座を実施した案件が印象的でしたね。たった半日間の講座だったのですが、事前の設計をしていた頃も含めて、思い出深いシーンがたくさんありました。当日のプログラムは二部構成になっていて、前半はプログラム設計に関するレクチャーを行ないました。続く後半では、「放射性廃棄物の最終処分問題について、参加者の関心が深まるような対話型の場をつくる」というお題のもと、実際にプログラムを作ってもらいました。

もともと、クライアントとの事前の話し合いでは、講座の参加者が対話の場をデザインする方法論やスキルを学ぶことを案件のゴールとして設定していたのですが、内心では、「それだけで良いんだっけ?」と思っていたんですよね。というのも、処分地を決めるためにはとにかく難しいプロセスを踏なまくてはならないと聞いていたので、「対話の場は確かに必要だと思うけれど、本当にそれだけで問題は解決されるのだろうか?」と感じていました。講座のプログラムを組み立てながら、その思いを一緒にプロジェクトを進めていた遠又(圭佑)さんに話してみたら、同意してくれて。ワークショップや対話の場のデザインについて学ぶことを前提にしながらも、方法論だけでなく、対話そのものに対する理解を体験的に深めたり、参加者自身が処分問題への関わり方を主体的に問い直せたりできるようにしたいよね、と話していました。

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ー迎えた当日は、どのような場になったのでしょうか?

野島 講座というかたちで実施すると、どうしても「答えを探そう、受け取ろう」というモードになってしまいがちです。ワークショップデザインの基本的なノウハウを教える前半はそれでも良かったのですが、後半以降の、実際にワークショップや対話のプログラムを作るフェーズや、自分にとって対話ってどう重要なんだろうと考えるフェーズでは、僕らの意図よりも、参加者自身の思いを大事にしてほしいと思っていました。だから、「答えを探そうとするのではなく、皆さんが実際に参加したいと思える場をつくってください」と、強調して伝えていたのを覚えています。

そのアナウンスが功を奏したようで、その後にグループごとに自作のプログラムを発表してもらったのですが、僕らも想定していなかったようなプログラムが生まれていました。即興演劇の要素を取り入れたアイデアで、「言葉を尽くして難しい顔をしながら議論をするよりも、楽しい体験を通して気持ちを共有することで通じるものもあるよね」という思いのもと設計されていたと思うのですが、そんなポップなアイデアが生まれるとは僕らも思っていなかったんですよね。

ミミクリデザインでは、ワークショップを設計する上での重要な要素として、「問いのデザイン」と「遊びのデザイン」の二つを掲げています。ただ、今回の講座はあくまで入門編だったので、「遊びのデザイン」については割愛したんです。だけど、蓋を開けてみれば、参加者の方たちは、深刻な問題をプレイフル(遊び心溢れる様子)に解決する方法を見事に提示してくれていて、まさしく、参加者の思いを起点に、ファシリテーターが触媒の役割を果たすことで、創発が起きて、創造性の土壌を耕したと言えそうな瞬間に立ち会ったと思いました。


個性と衝動を起点とした課題解決、ポイントは"理念の浸透”

ーミミクリデザインの一員として関わっている中で、注目しているテーマは何かありますか?

野島 ミミクリデザインに入ってから、「組織」と「働く人」との関係性について考える機会が増えたと感じています。例えば、昔ながらの大きな会社だと、会社は被雇用者を様々な面で守る義務を果たす代わりに、異動や地方転勤を命じるなどの権限が与えられているわけですよね。でも、現状は終身雇用を守れないことがわかってきて、優秀な人は職場を選んで転職するのが当たり前のパラダイムに変わりつつあります。組織としてはみんなが同じ方向を目指してくれた方が有難いんだけど、あまりにもそれを押しつけ過ぎてしまうと、嫌になって出ていかれてしまう。方向性をある程度統一しながら、個人が伸び伸びと楽しく働くためには、どう組織をデザインすればいいのか...というのは、結構難しい問題だと思います。

そうした中で、ミミクリデザインの場合は、個人の衝動を特に大事にしようとする社風が、その問題をある程度解決してくれているように見えます。僕が所属するチームは、BtoB事業を主としているので、構造的にはクライアントの期待に応えることになるのですが、ただ応えるだけでなく、クライアントの要望と自分の衝動を紐づけて、「面白い!やりたい!」と思えるポイントを見つけるパワーがあるんですよね。

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ー個人の独立した思いが強すぎると、プロジェクトを都合のいい方向に変えようとしたり、自分たちの考えを押し付けたりする向きが強まりそうな印象を受けますが、その点はいかがでしょうか?

野島 それに関しては、「創造性の土壌を耕す」という理念が根付いているおかげで、ちょうどよくバランスが取れていると思います。あくまで僕らの目的は、クライアントである組織の土壌を耕すことなので、単に自分がやりたいソリューションを提供することに対する違和感や、クライアントと一緒に考えていこうとする精神性が取り組む上での前提として存在します。そのための武器やエネルギー源として、衝動性を大事にしているといった感じでしょうか。

ーなるほど。最後に、今後の目標を教えてください。

野島 個人的なミッションとしては、一人ひとりの熱量や衝動を起点としてあらゆることに取り組もうとする組織の雰囲気を大事にしながら、ミミクリデザインがさらにスケールしていくために、できることをやっていきたいと思っています。あらゆるフェーズで「こうなったら面白いな、楽しくなるだろうな」みたいな気持ちを大事にしていきたいですね。実は少し前に、「俺って何が面白いんだっけ?」と逆に悩んでいたこともあったのですが...(笑)でも、リフレーミングによって人や組織の可能性を広げることは好きなので、その軸でさらに楽しめるポイントを探って、拡張していければ良さそうかなと思っています。......こんな感じで記事にできそうですか?

ーバッチリです!ありがとうございました!

野島 ありがとうございました。

▼プロフィール
野島 繁昭 / Shigeaki Nojima(ミミクリデザイン ディレクター/HRストラテジスト)
twitter: @ShigeakiNojima
note: https://note.com/shigeaki_nojima

早稲田大学理工学部卒業。大学在学中に安斎が手がけていたワークショップをサポートし、イキイキと学ぶ子供達の姿から教育や人材育成に興味を持つ。その後、インターン先であったスローガン(株)社長の熱い想いに感銘を受け、大学院を中退し、入社。同社が8名→100名に成長する過程で、京都支社の立ち上げや、全国のトップ大学の学生向けのセミナー講師・キャリアアドバイザーを務める。退職後に安斎と意気投合し、ミミクリデザインへの参画を決める。ミミクリデザインでは、組織開発、人材育成プロジェクトのディレクションやファシリテーションを担当している。

ミミクリデザインホームページでは、過去のクライアント案件の事例が多数公開されているほか、「ワークショップデザイン・ファシリテーション実践ガイド」を無料配布中。ワークショップの基本から活用する意義、プログラムデザインやファシリテーションのテクニック、企業や地域の課題解決に導入するためのポイントや注意点について、最新の活用事例と研究知見に基づいて解説しています。

その他お問い合わせも上記ホームページの問い合わせフォームより受け付けております。

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執筆・水波 洸
写真・猫田 耳子

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