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“今の社会”を見つめるきっかけになる教育を。仕事として平和教育を行う97年生まれが考えていること。

自分が生きている“今の社会”について考えたことはありますか?
と言われても、なかなか考える機会がないですよね。

ただ、これからの時代を生き、新しい時代を作っていく中高生に社会を見つめるきっかけを届けることは、大切なことではないでしょうか。

そこで今回ご紹介するのは、沖縄県で主に中高生向けに平和教育に取り組む狩俣日姫(かりまたにつき)さんです。

全国でも、特に平和教育に力を入れている沖縄県で生まれ育った狩俣さんですが、学生時代は学校での平和教育の授業に抵抗感があったそう。

そんな過去がある一方で、現在狩俣さんは
一人のちからではどうしようもできない構造的な問題(※1)をなくすための一歩として、問題について一人ひとりが学び、向き合えるような平和教育を行おうと活動に取り組んでいます。

※1 仕組みによって生じる問題。各要素が絡み合っていて、一か所を修正しても解決がむずかしい問題。

につきインタビュー2

左:狩俣さん

肩書きは、「平和教育する人」

「平和教育する人」として活動しているのは、沖縄県宜野湾市に住みフリーで、自治体の事業や教育現場で活動する狩俣日姫さん。場にいる全員が能動的に学び合える「平和“共育”(共に育む)」を目指しています。具体的には、沖縄戦や基地問題、SDGsなどのテーマを通して学習コンテンツの開発・実施を行っています。

狩俣さんいわく、生徒が身近なことだと感じられるような平和教育をするためには、受け手の立場を第一に考えて授業を行うことが大事なのだそう。

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平和教育以外にも、街づくりに関しての
グラフィックレコーディングを行う様子

そこで狩俣さんは、平和教育を生徒にとって、どのように意味あるものにしていくかを考え模索しながら、沖縄県内の中高大生や県外から来た修学旅行生向けに平和講話やワークショップを行っています。

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高校生向けに平和講話をしている様子

これらの活動を通して狩俣さんは、「こんなことやってみたい!」「こんな社会になったらより良いんじゃないか?」と口にしたときに、それに共感してくれる人がSNSを含めて以前よりも増えた実感があります。また、以前よりも生徒の反応に手応えを感じているそう。

このことから、狩俣さん自身の目指したい方向性は独りよがりなものではなく、周りの人にとっての目指したい未来と重なっていることを実感しました。

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平和教育に関わる同世代の方たちと

わからないものを受けとる
授業への抵抗感

狩俣さんが「平和教育をする人」として活動を始めた背景には、自分自身が平和教育を受けていた時に感じた、わからないものをわからないままに受け取る形の平和学習の時間への抵抗感がありました。

沖縄戦を体験した方の話を直接聞けること自体とても貴重ではあるものの、時代背景や共通言語が異なり、がんばって聞いていても結局わからず、衝撃的な部分だけが小学生だった狩俣さんの記憶に残ったそうです。そのため、相手がなぜ話してくれるのか考えることもなくただ時間が過ぎていってしまいました。

伝えるだけでは不十分。
ハッとさせられた高校生の問い


狩俣さんはある高校生の言葉をきっかけに、自分が平和教育を行う意味について改めて考えさせられたと言います。
ある日、平和学習のワークショップ終了後、東京の高校生にこんな問いを投げかけられました。

「平和が大切なこともわかるし、戦争がよくないこともわかってる。でも、自分はどうすればいいんですか?どうすればいいか、みんな教えてくれないじゃん。」

そんな核心を突くような問いに対して当時の狩俣さんは濁して答えることしかできず、そんな自分に逃げている感覚を覚えたそうです。

その出来事をきっかけに沖縄戦を伝え、知ってもらうだけの平和教育を行うのではなく、そこから自分たちが生きている今の社会と向き合い、「自分たちは平和な社会を作れているのか?」と一緒に考えることが大事だという考えにたどり着きました。

そして、一人ひとりが学びを自分ごとにすることで、最終的には自分一人の力ではどうしようもできない構造的な問題がない社会をつくることを目指しています。

その一歩目として、生徒たちがわかって、考えて、自分たちが生きている“今の社会”を見つめるきっかけになるような平和教育を行おうと活動を続けています。

記事用の写真(最新版)

高校生向けにワークショップを行う様子

わたしは狩俣さんの話を聞いて、平和教育を行うことは自分が手にしている権利や脅かされている権利に気付いたり、自分が生きている今の社会を見つめなおすことにつながることだと感じました。

「あなたには○○する権利がある」
と伝えること、
「わたしには○○する権利がある」
と知ることは、
生きる力を渡したり、
生きる力を受け取ること
なのではないか
と思いました。

この機会にあなたも、あたりまえだと思っていたことを見つめなおしてみませんか?
そして、日常で感じている違和感をぜひ周りの人に話してみてください。そんな小さな一歩がこれからの社会を変える力になるはずです。

狩俣日姫(かりまた・につき)
1997年生まれ。沖縄県宜野湾市出身。高校卒業後、オーストラリアにワーキングホリデーへ。帰国後、友人のつながりで修学旅行生向けの学習コンテンツを提供する教育ベンチャーで働き始める。その後、徐々にフリーで平和教育を行う。

編集後記:
狩俣さんにとって平和教育を行うことを通して、生徒のなかで生まれたまっすぐなギモンに向き合うことは、たくさんの葛藤があることを感じました。
そして狩俣さんの活動から教育をおこなう者として、教わる側以上に考え悩みながら活動を行っていることが垣間見え、そこに向き合っていることに対して尊敬の気持ちを抱きました。

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