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好きな短歌

随時更新
ただ好きな短歌を羅列するだけ
こうやって並べてみると、私ってわかりやすくて多幸感溢れた短歌が好きなんだな

木下龍也

「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが日々にあったっていい

愛された犬は来世で風となり あなたの日々を何度も撫でる

いつからか頭のなかで飼っている悩みがついにお手を覚えた

独白もきっと会話になるだろう世界の声を全て拾えば

あの虹を無視したら撃てあの虹に立ち止まったら撃つなゴジラを

あとがきに僕を嫌いな奴はクズだよと書き足すイエス・キリスト

読み終えてややふっくらとした本に あなたの日々が挟まれている

詩の神に所在を問えばねむそうに答えるAll around you

生きてみることが答えになるような問いを抱えて生きていこうね

引っ張ってくれるタイプの犬だった ときおりぼくにふりむきながら

はなびらはやさしい地雷 踏むたびに胸のあたりがわずかに痛い

守れなかったものだけがひかるなら月はだれとの約束だろう

邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない

この夏を正しい水で満たされるプールの底を雨は打てない

それは風、もしくは言葉寸前の祈りに近い叫びであった

春なんて根こそぎあげるその代わりずっと消えない夏をください

岡野大嗣

ポケットに入れた切符がやわらかくなるまでひとり春を寝過ごす

人の痛みがよく分からないときがあります レジ応援お願いします

ぼくの聴く音楽こそが素晴らしいと思いながら歩く夜が好きだよ

もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ

岡本真帆

愛だった もしも私が神ならば いますぐここを春に変えたい

無駄なことばかりしようよ 自販機のボタン全部を同時押しとか

ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし

ありえいくらい眩しく笑うから好きの代わりに夏だと言った

宇宙人みたいな人だ 何よりも赤い金魚が怖いだなんて

パスワードの中に犬の名住まわせて打ち込むたびに君に会いたい

その他

だいじょうぶ急ぐ旅ではないのだし急いでないし 旅でもないし 宇都宮敦

とおくまでいこうねバニラ高収入バニラバーニラこのはるやすみ 篠原仮眠

感情の置き場所だけは奪われぬ言葉はずっとずっと一緒だ 東直子

ふたりしてひかりのように泣きました あのやわらかい草の上では 東直子

さみしくて見にきたひとの気持ちなど海はしつこく尋ねはしない 杉崎恒夫

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい 笹井宏之

きれいごとばかりの道へたどりつく私でいいと思ってしまう 笹井宏之

朝がくるまえにあなたの窓という窓をみがいて帰りますから 笹井宏之

縦書きの国に生まれて 雨降りは物語だと存じています 飯田和馬

抱きしめるとき目を閉じているけど光っています本当はとても 工藤玲音

体内に三十二個の夏があり十七個目がときおり光る 小島なお

あっ、ビデオになってた、って君の短い動画だ、海の 千種創一

このアカウントは存在しません 桃は剥くとしばらく手から香るから好き 千種創一

私には才能がある気がします それは勇気のようなものです 枡野浩一

それを見る僕のたましいの形はどうせ祈りに似ていただろう 枡野浩一

夢の中では光ることと喋ることは同じこと。お会いしましょう。 穂村弘

こんなめにきみを会わせる人間は、ぼくのほかにはありはしないよ 穂村弘

サバンナの象のうんこよ聞いてくれ だるいせつない こわいさみしい 穂村弘

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 小野小町

詩集から顔を上げれば息継ぎのように僕らの生活がある

祖母じゃない老婆が屈み込んでいて毛髪じゃない草を抜いてる

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