夜永唄。
夜が、こんなに長いなんて…
時計の針は、3 時を回っただろうか。
枕に突っ伏して深く深呼吸をした。
五月蝿いな…
秒針の音が、私を追い立てる様に やけに耳につく。
乱暴な手つきで両耳にイヤフォンを押し込んで、余計な雑音や雑念をシャットダウンする。
それだけで、別の世界に Trip していくような感覚が、今はとても心地いい。
聞こえてくる曲は、最近『 夜 』をテーマに作ったプレイリスト。
あ…
思わず零れた、声にもならない言葉。
漸く薄れてきた意識の中で、耳に入ってきたのは、何度も繰り返し聴いた あの曲。
歌詞に自己を投影して感傷的になる行為を、誰も、一度は経験したことだと思うが…私とその唄は、あまりにも似過ぎていた。
そう…私はまだ、あの人の存在を無くせないままだったのだ。
別れて半年。
時折、気まぐれの様にあの人が私に向ける言動を、私は、全く理解出来ずにいた。
本当は、その意味を問いただしたかったし、詰め寄ってでも確信に触れたかった。
でも、それに触れてしまったら何かが変わりそうで…頭の中に霧がかかっていながらも、どこか微温湯で心地いいこの現状に、甘んじて身を置いていた。
分からないことがある度に、付箋を付けていった。
1 つ、また、1 つ増えると…それは、付箋で一杯になってしまい、もはや何を求めているのかも、私自身分からなくなってしまう。
既に、私があの人を想うそれは、付き合う前に感じた純粋な想いとは少し違い、どこか、' 答え合わせ ' をしたいという 執着にも近いものへと形を変えて、私を縛っていたに違いない。
そんな、前にも後ろにも進まない私を、何度も友人は窘めて言い諭してくれた。
分かってる。
何度も、自分自身に言い聞かせた言葉を、私はまた呟く。
頭と心が、上手にリンクしてくれたら…毎日、泣いて腫らした目をしなくてよいのだろう。
数学のように ' 証明 ' が出来たなら…あの人の言動を前提や仮定から推論規則によって、想いを導くことも出来るだろう。
教本もなければ、回答もないこの難題は、今夜も私の頭を酷く悩ませ…
『 分かってる 』という非常に頭の悪い言葉で、自身を慰めるより他にない。
そうして今夜も、悩み疲れた私は 静かに落ちていく。
これまで、何度 こんな夜を超えてきただろう…
夜が、こんなに永いなんて…
【追記】
永遠にも思える この悩みを、敢えて『 永い 』と表記しました。
神はサイコロを振らないさんの『 夜永唄 』に敬愛を込めて…
https://youtu.be/Nij9BiHzP7E @YouTube
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