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ライン
子どもの頃住んでいた家の近くには、
タマ電が走っていた。
1両か2両のワンマン電車だ。
線路と道路を隔てる柵は、
背の低い木の杭が並んでいるだけだった。
杭の透き間から、あるいは、乗り越えて、
その線路の上を、よく歩いた。
単線の線路は、幅も狭くて、レイルも細くて、
不安定な足もとが楽しくて、
綱渡りみたいにして、ゆらゆら歩いた。
線路だけじゃない。
幅1mほどの疎水に渡された、
ちょうど靴の幅ほどの、コンクリートの桟の上。
ブロック塀のてっぺん、
アスファルトに引かれた白線の上。
何の目的もないのに、ただ歩いていた。
落ちないように、
はみださないように、
足元だけを見て、無心に歩いた。
敷かれた「線」の上を歩くなんてまっぴらだ、
そんなふうに思うようになったのは、
いったいいつからだったろう。
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