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「秘密の森の、その向こう」

もうずっと映画館で映画を観ていない。それでも、映画評は読む。なぜか懸命に読んでしまう。
これも読売新聞の映画評にあった「秘密の森の、その向こう」。
監督・脚本は、フランスの才人、セリーヌ・シアマ。

両親と一緒に亡くなったばかりの母方の祖母の家を片づけに行く、8歳の少女、ネリー。家の裏手には、森。ネリーの母は子どもの頃、そこに「小屋」を作ったという。

が、その母がある朝とつぜんいなくなってしまう。家を出て行ったと言う父は、理由も語らず、「そのほうがいい」と言うだけ。

『平凡な映画だったら、ここから家族の問題が具体的に描かれていくのだろうが、シアマは大胆不敵にかじを切る。』

ネリーは、裏の森でひとりの少女と出会う。同じ年頃の、小屋のようなものを作っている少女と。

ああ。
そうか。そうきましたか。
祖母と、少女だった母がいた古い家。
静かな森。
小屋。
これはもう、好き。
理屈なしに好きな世界。

『劇中、ネリーはほどなく、いろんなことに気づいていくのだが、ひるまない。思慮深い表情、小さな背中からにじむ意志。りりしい。

でも彼女は決して特別な子供ではない。大人はみんな思うだろう。自分もかつてこんなふうに立っていた。こんなふうにちゃんと考えていた。こんなふうに笑っていた。それなのに、と。』

なんだかまるで江國香織の小説のよう。
いやきっと、この映画評を書かれた方(残念ながら無記名だった)は、江國香織の世界が好きに違いない。もちろん、わたしもとても好きなので(いっとき読むことや書くことが辛くてどうしようもない時期があって、そんな時でも江國さんの本だけは読むことができた)、だからこそこの映画には惹かれる。ひとごとではない、とでもいうように心惹かれる。

映画も観たいけれど、ノベライズしてほしいなぁ。
もちろん、邦訳は江國香織さんで。

原作、ノベライズはないのかな、と探していたら、ムック本はありました。


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