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「街は生まれなおしている」シンポジウム参加レポート

2/26(日)まで、仙台フォーラスで開催していた複合参加型アートイベント「街は生まれなおしている」のシンポジウムに参加した。

未満建築デザインファームとしても、作品の出展及び登壇していたが、会場でのクロストークや質問がとてもよかった。

プレゼンしたのは未満建築デザインファームの代表

東北大学文学部の文化人類学の研究者の越智郁乃先生は、人の移住から生まれる文化について研究されていた。

初期の研究は、墓地の調査。
墓地は一見、静的な動きのない場のような印象だが、実は、亡き者の場を守る観点から、何度も手入れしたり、拡大したり、補修しながら後世に受け継いでいくため、実は家族という身近な関係性の中に文化が育まれるといった視点があるそうだ。

また、今回のアートイベントと関連した話題提供としては、フランスのナント市の文化事業が紹介されていた。
とくに夏の芸術祭では、仮設的に設けられたアート作品について、評価が高いものは、会期が終了したあとも常設していくそうだ。

行政が文化事業に対して予算を割いていることも大きな点だが、良いものを残し続けていく、許容力や寛容性が感じられる。
アフタートークで、越智先生に個別に話を伺うと、フランスは、国、州、市が一体となって文化事業に予算を充てている国柄も継続性に繋がっているそうだ。

また、「芸術の都、フランスだからできた」と思われがちだが、古典美術や芸術に関心が高いからこそ、格式高い美術は認めるが、市民参加型のアートは、鑑賞の対象とみなさない人も多いという。

だからこそ、そのような格式や権威ある芸術作品だけを大事にするのではなく、表現として誰もがアートを生み出せる環境づくりに行政が介入して表現の場をバックアップしている。

そう考えると、行政が予算を割いている理由も、日本が福祉などに予算を割くのと同等のように思える。

ナント市の「真夏の芸術祭」の特徴としては、①既存の物を積極的に取り込むこと、②在住の作家とのコラボが多いことだそうだ。

越智先生が担当している東北大学の文化人類学実習(3年~4年次)では、気になるテーマを見つけ出し、実際に参加して自ら観察してくることを課題としている。

最近、学生の成果を見ていて、学生が気になっているポイントには、大きく2つの傾向があることが分かった。

①シェアスペース
 誰でも気軽にチャレンジでき、間借りで出店経験ができることなど
 自らも出店してみた感想、観察結果を報告している学生もいる。
②個性を求めていること(個性的であること)
 チェーン店ではなく、個人経営のお店。効率性ではなく、こだわりが感じられる商品を扱っていること。(スパイスカレーやクラフトビール、骨董市など)

会場質問


質問:使いたい場所があったとき、どこにまず相談したらいいか分からない。

回答:すべての貸し借りをシステム化して解決を図ろうとすると、貸主の顔が分からないから多少乱暴に扱っても良いのではないかと、勘違いする人もいるので、たぶん行き詰まる。
むしろ顔が見える関係の中で、オーナーの顔が浮かぶような関係性で場を貸し借りしたほうが「大事に使おう」という気持ちが芽生えるのではないか。

感想:まちの歴史をもっと大事にしてほしい。まちづくりにちゃんと活かしてほしい。

感想:昔、日本初の工業デザイン研究所があったが、失くしてしまった。本当にもったいない。

質問よりも、感想が多かったのも、このアートイベントやシンポジウムの設定が的を得ていたからだと思う。

こうした、街を立体的に使う、アートイベントは定期開催して、仙台の当たり前の風景にしていきたい。

シンポジウム終了後には、仙台フォーラスの外壁にて、大槻英世さんによる壁面アートが行われた。

高所作業員として働きながら、アーティストの活動を続ける大槻英世さん。

本業である高所作業員としての自分と、アーティストである自分を1つに重ね合わせたライブパフォーマンス。とても良かった。

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