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おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 68 原理

キルギス 
2023.0928 Thu

20余年前…。というか、もう四半世紀近く前の話です。
新宿2丁目、深夜0時。ようやく退社し、独り京王新宿駅へとトボトボ歩いていた若き日のわたし。
わたしの頭の中で、1つのフレーズがリフレインしていました。
『好きなことやらないで、なにやるの?』

新卒で入社した会社では、営業を担当していました。たしか、働き始めて初めての夏前には退社していたはずです。
その後、上京。住み込みしか選択肢がなかった為、新聞配達を2か月、鳶を1年半ほどやり、ようやく念願の文章系の仕事に就きます。
初めての文章の仕事、それは自動車チューニング雑誌の編集でした。

フロントノーズが下方に向かってなだらかに傾斜するスラントノーズ。反対にボンネットの先端がせり出すのが逆スラントノーズ、通称“逆スラ”。何度だって言いますよ。『カッコイイとは、こういうことさ。』

忙しい。というよりも、とにかく時間が足りない。そんな仕事でした。
1か月で、300ページくらいの雑誌を、実質3人~3.5人くらいの編集者で制作するのです。それって端から無理がありますよね? 毎日10時前に出社して、退社は早くて深夜0時。明けた始発で帰宅することは茶飯事、会社で寝起きすることもザラでした。土日はもちろん取材日です。一番ヤバかった時期は、2週間で2日しか帰宅できませんでした。
そうです。完全に狂っていましたね、会社もわたしも…。

その夜は、早めの帰宅でした。と言っても、深夜0時前ですけどね。
仕事はもちろん残りまくりです。はっきり言って、山積みです。しかし、わたしは“帰宅”という選択肢を選びました。なぜなら、わたしはキレていたからです。なににキレていたかって、ラジオから聞こえてきた、LOVE PSYCHEDELICOのボーカルKUMIの言葉にです。

愚かなこと。そうわかっていてもしてしまうんですね、比べるってことを。なんにだって苦労はあるのに…。そもそも、『幸福になる』ことよりも『幸福を感じる』ことのほうが重要なんではないでしょうか。

深夜、会社で流しっ放しのFMラジオから、その声は聞こえてきました。声の主は、当時売り出し中のロックデュオ、LOVE PSYCHEDELICOのボーカルKUMIでした。
なんでも、彼女のプロデュースするカフェが、渋谷だか代官山だかにオープンするとのこと。
“ええ気なもんやんけ…!”
調子こきやがってよ…。そういう意味合いのことをわたしは心の中で呟きました。
『なぜカフェをオープンしたんですか?』
そんなDJの問い掛けに、彼女は彼女なりの意見を言っていたように思います。
それなりの意見を言った後、続けて彼女はこう言いました。
『わたし、ホントに思うんですよね。“好きなことやらないで、なにやるの?” って』
その言葉を聴いた30秒後、わたしはPCの電源を切りました。

どうしようもない気分で、新宿駅まで歩きました。もちろん、わかっていました。わたしが我慢できなかったのはKUMIの言葉ではなく、わたし自身の現状であることに…。

ある人は「なだらかで継続的な経済上昇が幸福をもたらすカギとなる」と言いました。世界の中にある日本。日本以外に多くの国と人が存在する世界。とりあえず、おいしいご飯を食べましょう。


今日、キルギスはビシュケクのレストランで、わたしは知り合ったばかりのナイスガイTちゃんと飯を喰っていました。Tちゃんレコメンドの食堂で食べる肉詰めパイは、いままでに喰ったどの肉詰めパイよりもダントツで旨く、気分良く食事をしていました。
と、そんな我々に声を掛ける人物が。しかも日本語で。
「“さくら”に泊まってらっしゃるんですか?」
声の主は、日本人女性でした。
速攻で相席を勧めるわたし。椅子に座り、自然な感じで話し始める彼女。話の合間を見切り、ここぞのタイミングでメニューを渡し、そして…。
「これ、あれですね…。わたしの食べたいメニューが全部終わっちゃってますね。…ちょっと別のアテがあるんで、そっちの店に行ってみます」
そう言い残し、来たときと同じく、彼女は颯爽と店を去って行きました。

海外旅行の面白さっていろいろあるんでしょうけど、“面白い人の話を聞く” ってのもその魅力の一つでしょうね。やっぱり個性的な人 “世間の外側の人” が多いですから、バックパッカーには。

「スゲー面白い人やったな…」
堪え切れず、わたしが口火を切りました。
「“さくら”で待ちましょうよ、あの人が帰ってくるのを!」
一も二もなく同意するTちゃん。
だって、考えてもみてください。日本から遥か彼方、中央アジアはキルギスの首都で出逢った日本人同士。邂逅とも言えるその出会いを、目当てのメニューが無いからキャンセルする。それって、なかなかのことだと思うのです。しかも、その去り際に不快感を感じることは一切ありませんでした。
めちゃくちゃに興味が出ましたよ、その女性に。いままでどんな旅をしてきたんだろう。日本でどんな生活を送っていたんだろう。
宿のチャイハネで待つこと1時間、彼女は帰ってきました。
はたして、彼女の紡ぐ話はとんでもなく興味深く、面白いネタが満載でした。

なんかよくわからんけど、変なガイジンがチャリ漕いでるから声掛けてみよ! そういうシンプルな好奇心が個人旅行のエッセンスになったりするんですな、意外と。

『好きなことしないで、なにやるの?』
言葉に出して確認してはいませんが、ある意味での彼女の行動原理はこれだと思うのです。たぶん、いえ間違いなく…。
そして、ある意味での私の行動原理もこれです。
『好きなことしないで、なにやるの?』

わたしはこの行動原理を選択しました。
そして、今後、なにがあっても後悔はしないでしょう。

チャイハネってサイコーに好きなんですよね。ここで飯喰ったり話したり、本読んだり日記書いたり。中央アジアの気候と文化にぴったりのコミュニケーションスポットです。

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