物事は多方面から見よ
このあいだ、仕事で街中を歩いていると涼しく心地よい風が吹いてきた。
あぁ、春が来たのだと思うと同時に「あれ、これはマッチングアプリをしていた時の季節と同じだなぁ」と、匂いで元カレを思い出すとか音楽で懐かしき青春を思い出すということがよくあると思うが、似たような感じでマッチングアプリをやっていた時のことを思い出した。
春の風でこんなことを思い出す奴は日本中探してもそういない。もっと他に京都で見た桜などを思い出せよ、と心底思う。
昨年の2月に元カレに別れを告げ、当時26歳のわたしは次の人を探すべくマッチングアプリを始めた。会社と家の行き来だけでは恋人などできないのである。
当時マッチングアプリに良い印象は全くなく、そもそも新しいことを始めるのが苦手なわたしにとっては尚更二の足を踏むようなことだった。
今も出会う手段としてオススメはすれど、体感8割くらいはおかしい人たちの集まりだったので注意するように周りの友人たちには言っている。
そんなことを言うわりにはOmiai、Pairs、ゼクシィ、タップル、with、Dine、Tinderなどさまざまなアプリを使ったが、今回はマッチングアプリを始めた当初に使っていたOmiaiとPairsでの話をしようと思う。
マッチングアプリは登録した当初はピックアップされるからかLikeが多く来やすいシステムとなっている。(アプリによっては「いいね!」だったりする)
Likeが来た相手に自分もLikeをするとメッセージができる仕組みである。もちろん自分からもLikeはできる。
鬼のようにくるLikeの中から自分の好みを厳選をし、怪しそうな人やタイプでない人を弾きまくる作業。まさしくベルトコンベアーから流れてくる容器にお弁当の具を詰めるような虚無の時間である。
言わば出会い系のようなアプリにかなり疑心暗鬼になっていたので、この作業は特に慎重に行っていた。
慎重に行った結果、1ヶ月ほどやりとりをした男がファスティングの勧誘をしてくる勧誘男だったりしたものだった。
そして勧誘男を引き当ててしまったことに傷心しているわたしの前にOmiaiの新規ユーザーとしてその男は現れた。
その男のことは傘をさしているプロフィール画像だったので「傘男」と陰で呼んでいた。プロフィールに設定している画像は1枚しかなく、傘男の顔は横顔しかわからなかった。横顔はまぁ、好青年という感じの印象だった。
とりあえず傘男とメッセージをすることになり、仕事や趣味などの基本情報を聞いたりと何通かやりとりを続けていた。
が、正面の顔が気になりすぎて「正面の顔写真をくださいって言いたいけどタイプじゃなかった時にそれでやり取りを辞めるのは失礼すぎるよなぁ」と思いながらモヤモヤしていた。
ちなみにわたしにとって見た目がタイプかどうかということはわりと重要な条件である。
「横顔イケメン」などという言葉はわたしの人生経験上全く当てにならない言葉であったが、当時マッチングアプリのことを色々と相談していた友人Tに傘男の写真を送って意見を聞いてみると、一言目には「女を殴りそう」というふざけたことを言っていたが、二言目には「横顔はいい感じやん!」とのことだった。
この友人Tは何故か傘男のことを激推ししており、わりと横顔イケメンを信じている類いの人間であった。
ただ、「わたしの価値観で選別をしているといい男を逃してしまうような気もするなぁ」とこの時は思っていたので、すんなりと友人Tの意見を取り入れたのだった。
そんなこんなで会う約束をする流れになっていた時に同時進行で使用していたPairsをなんとなく見ていると、なんと傘男が新規ユーザーとして現れたのだ。
知らない人のために書いておくとPairsには足跡機能があるので、誰がプロフィールを見たかということが相手にわかってしまう。この機能があったためプロフィールを見ることを少し躊躇した。
しかし。だがしかし。
プロフィールにはOmiaiにはない他の写真があるかもしれないのだ。
しばらく悩んだ末、見た後はブロックをすればいいかと思い、意を決してプロフィールを見てみることにした。
予想は的中でプロフィール画像はOmiaiと違って5枚ほど設定されていた。貪るように画像をスライドしていくと、正面の顔がわかる写真が何枚かあった。
その写真を見た瞬間、「全然タイプじゃねぇ!!!!」と心の中で叫ばずにはいられなかった。
写真の中の傘男は横顔からは全く想像できない正面の顔をしていたのだ。
そのギャップの激しさにげんなりして急に胃がもたれはじめたのを覚えている。体は正直すぎるが、誠に失礼である。
わたしは常備していた胃薬を飲み、友人Tにすぐさま連絡をした。
わたしからすれば「やい!騙したな!」という感情だが、友人Tからすれば騙しているつもりは微塵もないだろう。
友人Tは「横顔イケメンやったら正面もイケメンと思ってたわ〜」と呑気に言ってきたので、ほらみろ!とドラえもんがのび太に言うかの如く、横顔イケメンを信じてはいけないということを熱弁したのだった。
傘男には申し訳ないが、胃もたれするほど全わたしが会ってはいけないと信号を出してきたためそのあと連絡を返すことはなく、もちろん会うこともなかった。
今思えば結局失礼な終わり方をしている。
このように会ったこともない男のことを顔半分だけで判断するのは、胃もたれを引き起こすことがあるため非常に危険である。できればやめた方がいい。
物事は多方面から見なければなぁと思った一件であった。
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