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ちょっと長めの図書紹介⑩

2022(令和04)年12月、
「生徒指導提要」が改訂された。
12年ぶり──ということも話題を集めたが、
それに加えて
「デジタルテキスト」という形式も
新鮮である。
全面改訂から2ヵ月少々で
「第1.0.1 版」(2/23)がリリースされた。
今後もタイムリーな改訂が期待できるだろう。

本稿は、
「生徒指導提要」の紹介ではあるが、
「生徒指導提要」自体の紹介ではない。
学事出版から発刊された
『生徒指導提要(改訂版)全文と解説』の
紹介である(以下、本書)。

文部科学省としては、
「デジタルテキストとしての活用」を
想定しているようだが、
「教育委員会等からのご要望を踏まえ、
 冊子版も発売されることとなりました」と
ウェブサイトには書かれている。
そして、
真っ先に冊子版=書籍として発売されたのが、
本書である。

本書の特徴は、
第一に「解説」の掲載にある。
まず、300ページもある
デジタルテキスト版(以下、デジタル版)の
本文が組み直し(リデザイン)され、
200ページに収まっている──にもかかわらず
各論的な「解説」論文を7本も追加した
(概要解説+ポイント解説6本)。
冒頭に解説を置き、
その続きとして本文が始まる構成であり、
ポイントを押さえてから
本編を読むことができるつくりとなっている。

そのため、解説の価値は高く
本編の理解を助けてくれることは、
間違いない。
──というよりも
解説を読むだけで本編を理解した気分になり
「知ったかぶり」……いや……
「生徒指導提要」のさわりを
アウトプットできるようにもなるだろう。

「解説」といえば、
ほぼ同時に発売された
2023年4月号『月刊 生徒指導』(学事出版)も
同時に読むことを勧める。
「『新・生徒指導時代』の幕開け」という
特集が組まれ、ところどころに
「生徒指導提要(改訂版)」への言及がある。
本書の付録としてぜひ手元に置いてほしい。

ちなみに次号の特集は、
「ICTで生徒指導がラクになる」だそうだ。
本書の「解説」では深く触れられていないが、
本編では
「1.5 生徒指導上の留意点」の節で
「1.5.2 ICTの活用」という
項目が置かれている。
その後の特集も
「体罰・不適切な指導の根絶に向けて」
「いじめ防止対策推進法は見直されるのか?」
「見えない『性被害』」などが
予定されているようだ。
また、連載記事も興味深く、
「新しい提要、新しい生徒指導」(八並光俊)
「学びのための校則改正」(河﨑仁志)等は、
本書のスピンオフや実践集となるだろう。

本書の特徴に戻ろう。
第二は「読みやすさ」である。
デジタル版はA4ベースの1段組、
本書はB5ベースで余白こそ少ないが、
2段組のレイアウトに組み直されている。
好みはあるだろうが、
個人的にはデジタル版より読みやすい。
1行の文字数が少ないと視線を固定でき、
疲れづらい、たぶん。
また「色がない」という
モノトーンも疲労感を軽減している、たぶん。

もちろん、デジタル版が優勢な部分もある。
解説がほしい「単語」や
「法律」に触れてもその説明や情報が
ポップアップされることはない(当然)。
「リンク」に関しては本書が劣勢である。

しかし、
「デジタル教科書」の扱いと同様に
書籍としての本書とデジタル版を
必要に応じて併用していくことで
より効果が高まると考える。
知識を定着させるための読書には本書を
内容を日々活用するときにはデジタル版を──
という方法も考えられるだろう。

やはり読書に集中したいときは
紙ベースが便利である。
わたしもデジタル版が公開され、
すぐにダウンロードをしたが、
2ヶ月経っても読了には至らなかった。
だが、
本書は2日間で読み終えることができた。

しかし、
検索機能ではデジタル版の圧勝である。
「事務職員」と検索をかければ
すぐにヒット──なんと2か所(笑)。

本書の内容
そのものには触れないつもりだったが、
せっかくなので「事務職員」が登場した、
そのポイントだけ触れてみよう。

「生徒指導提要」は
教職員向けの基本書とされ、
「チーム学校による生徒指導体制」という
章立をしていることから、
本文の主語は、
ほとんど「教職員」(361ヵ所)だが、
学習や学級指導、授業などに関するくだりで
限定的に「教員」を使っている(75ヵ所)。
もちろん教職員には
事務職員も含まれているが、
ほかに含まれている職種と比べて
その役割に具体性が示されていない。
強いて言えば「連携・協働」である。

当時の中教審答申では、
「チームとしての学校」が
求められる背景として
「子供と向き合う時間の確保」があった。
教員の専門性を発揮させるために
時間を確保していこうということだ。
今回も「チーム学校」にかかわるくだりで
事務職員が僅かに登場している意味は、
「連携・協働」により、
教員が生徒指導に向き合えるように
負担を減らす
というねらいがあるのだろうか──
そこまでは本書から読み取ることができない。
事務職員と生徒指導については、
そのうちどこかで語るつもりである。

何はともあれ
大部分が無料でダウンロード可能である本書に
それなりのお金を払って購入するのか?!
──と考えるひとは多いだろう。
しかし、その価値はじゅうぶんにある。
電子書籍が苦手なひとにもお勧めしたい。

編集担当・二井豪さま、
ご恵贈ありがとうございました。

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『月刊 生徒指導』
https://www.gakuji.co.jp/script/magTop.php?fieldcd1=820

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