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推し、自撮りが上手くなる

 ジャニーズがSNSに進出し始めて早数年。私の推しである伊野尾慧さんが所属するHey!Say!JUMPさんはSNSを始めた時めちゃくちゃ若手組、というわけではなかった。だから、ブログなどにあげる写真をはじめとして、メンバー全員SNSを始める前は自撮りが少し下手だった。気がする。少し見切れていたり、ぶれていたり。とにかくインカメラで撮るのに慣れてないんだろうな〜という感覚があった。外側のカメラで撮られるのには慣れているのか、自然な笑顔をむけている写真が多いのだが、インカメラになると途端に表情が固まる。そんなところが愛おしい。まるで高貴な天使が下界に降りてきて、庶民の生活に頑張って慣れようとしているのを見守るかのような、そんな気持ちだった。メンバー全員がインスタライブで苦戦し、コメントの消し方が分からず、フィルターを使って大はしゃぎするアラサーアイドルたち。可愛すぎて私の心臓を捧げたくなるレベルだ。

 ただ、最近のSNSを見ていると思う。「今日はこんな収録がありました!」「今日は〇〇の××くんと会いました!」という言葉と共にアップされる写真。そこには全員が鮮明に写っていて、少しおちゃらけるくらいの余裕も見て取れる。

え、推し、自撮り上手くなってね??

SNSを始めた当初は、インスタライブの機能だけではっちゃけてたアラサーアイドル(失礼)達が、気づけばインカメラを使いこなし、全員が画角に入るような写真の撮り方を学び、インカメラに向けてもアイドルスマイルをぎこちなさなしにできるようになっているではないか。

 以下、拗らせオタクの届かない叫び声である。

自撮りが上手くなるってことは、それだけSNSを見てるってこと???てことは私のSNSも見られてるということだし他のオタクのSNSもたくさん見て学んでるということですか??推しくんはアラサーなのに世の中の全てを知らないっていう無垢な感じでいてくれよ〜〜〜

 横川良明さんの「人類にとって推しとは何なのか」という著書を最近拝読させていただいた中で、「童貞でいて欲しい推し」という言葉が出てきて、共感のあまり震えてしまった。SNSがどんどん上達する推しは、多分若い女の子との絡み方もどんどん上手くなり、最後には若い女優なんかとどんどん仲良くなって、、、、、などと想像してしまうのが拗らせオタク。SNSと自撮りのインカメラを使いこなしている奴に童貞なんていないと思っているので(あくまで個人の意見です)、SNSがどんどん上手くなる推しを見ると、「あゝ、もう彼は経験が少ないただの無垢な男の子ではないんだな。」などと感傷的になってしまう。(むしろ32歳でなんの経験もなかったらそれはそれで嫌なのだが。拗らせている。)

 最近、社会学を研究されている方に推し活についてお話を聞く機会があったのだが、今の推し活はこのような「屈折した母性」が問題点であるとおっしゃっていた。確かに私たちオタクは時折推しのことを「うちの子」「私が産んだ」「私が育てた」などと発言していたり、先輩や事務所に対して「うちの〇〇がお世話になってます」などと発言したりしている。これがトラブルを招きかねないというのは明白なのだが、オタクはなぜそれでも「ママ化」してしまうのか。
 昨今の推し文化はオーディション番組や、ジャニーズJr.にスポットを当てた番組や企画などで、「育てる」という感覚が大きくなっている気がする。私が今の推しに出会った時はすでに推しはデビューしていたので、そんな感覚はそこまで大きくないのだけれど、今の状況だとこのような気持ちになってもおかしくないだろうし、実際私は自分より10いくつも年上のお兄さんの自撮り上達記録だけでこんなクソデカ感情になっているのだから、Jr.から見ている人たちなんてもっともっと大きな感情になっているのだろう。
 推しが自撮りひとつ上手くなっただけで「え、いでちゅね〜〜よしよし」みたいな気分になったり、少し怠惰な姿を見せただけで「真面目にやって、お仕事でしょ」と発破をかけたり、疲れたと口にすれば「よく頑張ってるね、私がいるから大丈夫だよ」と心の中で抱きしめる。そんな「ママ」と化してしまったオタク達にできることは、推したちが巣立っていくのを拗らせずに見守り、大きくなったらまだ下手くそだったピンぼけの自撮りを見つめながら、「大きくなったね、、、」と枕を濡らすことなのかもしれない。
 いつか推しが大きくなった時、私にはそれができるだろうか、、、、昔の写真を引っ張り出して、懐古しながら「この頃は、、」と昔と比べながら話してしまうかもしれない。

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