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「国外の土地を描くSF:台湾とチベット」おすすめ作品&自作リスト

8月5、6日に開催された第61回日本SF大会Sci-con2023において、「国外の土地を描くSF:台湾とチベット」という企画をおこないました。当日会場で配布した、『おすすめ作品&自作リスト』を公開します。


企画概要

第61回日本SF大会 Sci-con2023
「国外の土地を描くSF:台湾とチベット」
場所:浦和コミュニティセンター第3集会室  時間:8/6(日) 11:30-13:00
河野咲子、榛見あきる、溝渕久美子、渡邉清文

現在、SFに限らず様々なジャンルの小説がWEBメディアや翻訳出版を通じて言語や国の枠組みを超えて読まれることが増えてきた。そうした状況の中、自分が暮らす土地を見つめそれを国外の人々に伝える作品ではなく、あえて国外を舞台にした作品を描く意義も問われ始めている。SFで国外の土地を描くとはどういうことか・その意義は何かを、実際に台湾とチベットを舞台にして小説を書いた書き手2人と、旅の体験から批評を立ち上げるプロジェクトにかかわる批評家が語りあいながら検討していく。

Sci-con2023企画紹介ページより

台湾SF『神の豚』の溝渕久美子さん、チベットSF『虹霓のかたがわ』の榛見あきるさん、批評の立場から河野咲子さんに登壇、渡邉が司会を務めました。
当日の進行は、まず前半で榛見さんと溝渕さんが、それぞれチベットと台湾の歴史と文学作品を紹介し、自身がその場所を舞台に小説を書いた理由や考えたことなどを語りました。後半はそれを踏まえて、河野さんが土地とフィクションについての、読む行為、書く行為を概観して質問を投げかけ、ディスカッションを行うという流れで進行しました。
以下のリストは、そこで紹介された文学作品を中心としたものです。

おすすめ作品&自作リスト

溝渕久美子

黄崇凱、天野健太郎訳「カピバラを盗む」(『たべるのがおそい』vol.3、書肆侃侃房、2017年。
呉明益、天野健太郎訳『自転車泥棒』、文藝春秋、2018年
呉明益、天野健太郎訳『歩道橋の魔術師』、白水社、2015年

溝渕久美子『神の豚』東京創元社、2021年
 ※以下にも収録
 『創元日本SFアンソロジーIV 時間飼ってみた』東京創元社、2021年
 『ベストSF2022』大森望編、竹書房、2022年
溝渕久美子「台北パテーベビー倶楽部」(『紙魚の手帖』vol.05、東京創元社、2022年 所収)

榛見あきる

ツェワン・イシェ・ペンバ、星泉訳『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』、書肆侃侃房、2020年
ラシャムジャ、星泉訳『路上の陽光』、書肆侃侃房、2020年
星泉・三浦順子・海老原志穂編訳『チベット幻想奇譚』、春陽堂書店、2022年
※ アンソロジー 著者:エ・ニマ・ツェリン/ゴメ・ツェラン・タシ/タクブンジャ/ツェラン・トンドゥプ/ツェリン・ノルブ/ツェワン・ナムジャ/ペマ・ツェテン/ランダ/リクデン・ジャンツォ/レーコル

榛見あきる『虹霓のかたがわ』ゲンロンSF文庫、2020年
 ※初出は『ゲンロン12』、ゲンロン、2020年

河野咲子

前田愛『都市空間のなかの文学』ちくま学芸文庫、1992年
桑田光平・田口仁・吉野良祐 編『東京時影 1964/202X』羽鳥書店、2023年
多和田葉子『カタコトのうわごと』青土社、2007年

ロカスト編集部『LOCUST vol.04 特集:長崎への困難な旅路』、2020年
ロカスト編集部『LOCUST vol.05 特集:北にちりばめられて』、2021年
ロカスト編集部『LOCUST vol.06 特集:福島というパリンプセスト』、2022年

河野咲子『水溶性のダンス』ゲンロンSF文庫、2023年
 ※初出は『ゲンロン13』、ゲンロン、2022年

渡邉清文

洪凌(Lucifer Hung)、櫻庭ゆみ子訳『フーガ 黒い太陽』、あるむ、2013年

『故人AI x 不死化社会アンソロジー トランジ 死者と再会する物語』、能仲謙次榛見あきる武見倉森揚羽はな菊地和広渡邉清文稲田一声、2023年

まとめ

会場となった会議室は20名弱の席しかないところに、立ち見の方もいらしてくださり盛況でした。来場くださった皆さま、ありがとうございました。
短い時間のディスカッションながら、自分にとっては興味深い話ができたと思っていますが、聞いていただいた皆さまも愉しんでいただけたのなら何よりです。
最後に、関連資料のリンクを共有いたします。

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