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資金調達であらかじめ知っておきたかったこと

scoutyでコーポレートを担当している野崎(@mikupaccho)です。
この記事は scouty Advent Calendar 2018 の24日目です。


2018年12月21日にプレスリリースを打ちましたが、総額3億円の資金調達が完了しました。

前回の資金調達と異なり金額が大きいこともあり、多方面にご迷惑をお掛けしながらなんとか完了出来たので、その経験をせっかくなので note に残しておこうと思います。ですが、バリュエーションについてや、プレゼン方法、どのベンチャーキャピタルから資金調達するべきか etc. は、各社の戦略によると思いますので、そういったテクニカルなところではなく、管理部門的な視点からの振り返りを書いて行きたいと思います。有識者の方々は、そっと、暖かく見守っていただければ幸いです。

前提

今回の資金調達では、投資家へのプレゼン・IR資料作成をCEOの島田(@hshimada_)が、その他の財務関連の資料作成・契約書作成、締結を私が担当しました。これは、個人的なお気持ちですが、資金調達はCEOが一人でまわしてしまうことも多いかもしれませんが、シリーズB規模の資金調達だと一人だと相当負荷が掛かります。また、IPOを考えているスタートアップは、色々正確にこなしていかないと後々の審査で困ることがある(可能性が高い)ためCEOとCFO(上場準備を担当している管理部門)のタッグでやっていったほうが良いと思います。

反省一覧

1. 着金までのキャッシュフローを明確にすべきだった
2. 全体を通したスケジュールを立てるべきだった
3. 投資家へのプレゼンから関わっているべきだった
4. 提出資料の対応を効率化すべきだった
5. 前回の契約書類を読み込むべきだった
6. 契約書類のバージョン管理が煩雑だった
7. 契約書類の押印問題の認識が甘かった

1. 着金までのキャッシュフローを明確にすべきだった

元々、数年先まで予測した資金繰り表を作っており、このタイミングで大きなキャッシュが必要になるし、ここでキャッシュがなくなる、ならばこのキャッシュ残高になったら資金調達に動こう、みたいな大まかな計画はありました。その資金繰り計画から逆算して着金のスケジュールを立てていたのですが、やはり後述する通り全体のスケジュールは遅れるものと思って、着金がどれくらいビハインドするかも加味した資金繰りについてもっと考えておくべきでした。

実際には、着金スケジュールは遅れたもののキャッシュ残高に影響はなかったので良かったですが、これが数ヶ月ビハインドしたことを考えると少しゾッとしました。一応、着金が遅れた時のために並行してデットでの調達も動かしていましたが、資金調達中の心の余裕のない時こそ、様々なハプニングもおり込まれた資金繰り表を前もって作成しておくことで、心の平穏を保つべきだなと思いました。

2. 全体を通したスケジュールを立てるべきだった

これは完全に私の計画が甘かったのですが、資金調達は着金までのスケジュールを立てておけば大丈夫だと思っていました。しかし、資金調達は着金まで、ではなく登記申請まで、でした。登記申請まで視野に入れたスケジュールを立てるべきでした。なぜなら、登記申請は投資家が株主になったタイミング(=払込期日)から2週間以内にやらなければならず、 IPO 準備中の弊社は、なんとかして間に合わせなければならなかったからです。

また、これは、私が会社法を理解していなかったせいなのですが、「払込期限」と「払込期日」では、投資家が株主になるタイミングが異なるのでここらへんに注意を払っていなかったのも、反省すべき点です。

他にも、特に投資契約書や株主間契約書は修正があったり、不備があったりするので、投資家が決まったタイミングから作成を始めるというよりは、投資家まわりをしている間にある程度バリュエーションや条件が固まるはずなので、そのタイミングからドラフトは作り始めるべきでした。そういった、初動の遅れがスケジュール全体に影響してくるので、全てを把握した上での全体を通したスケジュールを立てるべきでした。

3. 投資家へのプレゼンから関わっているべきだった

今回、 CEO の島田と二人三脚で実施していたと言うものの、ベンチャーキャピタルへのプレゼン時には同行せず、当初は必要書類の作成依頼を受けて、作成していただけで、深く関わっていませんでした。投資家が最終決定するかしないかくらいから契約締結まわりを巻き取ったのですが、そもそもどう言う風に話が進んでいたかのキャッチアップの遅さが契約書作成時に影響したので、次回は最初から密に関わって行こうと思います。

また、弊社の場合、島田が Product Manager も兼務しているため、資金調達には工数をかけすぎないようにサポートすべきだったなと反省しています。プロダクトへの工数が割けないと言うのは、本当に元も子もないと思いました。

弊社は島田が Product Manager も兼務しているからこそ、島田がプロダクトに割ける時間が減ったのが顕著にわかりましたが、他のスタートアップでも CEO はなるべく資金調達には工数をかけすぎないように、周りのメンバーがサポートしたほうが良いです。島田にしか scouty の未来は語れないけれど、そのほか、私が島田の代わりに出来ることはたくさんあったので、次回はもっと社内でのリソース配分も考えて進めて行こうと思いました。

4. 提出資料の対応を効率化すべきだった

ベンチャーキャピタルへプレゼンをする際、たくさんの資料の提出を求められます。財務諸表もそうですが、資本政策表とか株主名簿とか、最新の登記簿とか、IR資料だけでなく様々な資料の提出を求められます。そもそも、資本政策表とか株主名簿は最新のものに書き換えて保管しておくべきなのですが、なかなかそういった細かい作業をおろそかにしがちだったのが本当によくなかったです。当たり前ですが、決してめんどくさがらず、後からツケが回ってくると思って、ストックオプションや株式分割など実施した度に全て書き換えて最新のものにしておくのをおすすめします。

今回の資金調達のために全部最新のものに書き換えて、1社ごとに個別に送っていたのですが、ここもGoogle Drive でシェアするとか何か効率的なシェアの仕方があったと思います。ここらへんについて、まだ解決策は思いついていないのですが、次回は対策していきたいです。(何かおすすめのアイディアがあれば教えてください。)

5. 前回の契約書類を読み込むべきだった

どういった条件での発行にするかによると思うのですが、前回はどう言った条件で調達したか把握するためにも、前もって前回の契約書をちゃんと読み込むべきでした。なぜならば、新しい投資家に前回同様の条件を与えるのか、とかどこかの条件は削除するのか、とかは大きな意思決定だからです。

また、投資契約書はなにやら難しい単語が多く、条文がざざーっと並んでいるとその量に圧倒されてしまいがちです。用語も聞いたことはあってもいざ契約書を作成する!となった時ちゃんと理解しているか不安なものも多いはずです。なので、すでにエクイティでの資金調達をしていれば、前回の契約書を読みこむことをおすすめします。当たり前のことですが、特に初めての場合は、バタバタしているかもしれませんが、法律用語やその権利の発生条件などは確実に抑えておくことをおすすめします。

また、前回の契約書をしっかりと読み込んでおくことで、今回作成した契約書の不備をもっと早く発見できたりもしたんだろうと思います。

6. 契約書類のバージョン管理が煩雑だった

今回、各投資家に個別にシェアしていたため、契約書類の修正が多く契約書類のバージョン管理がカオスになっていました。これは、めちゃくちゃ、とても、かなり、当たり前のことなのですが、タイトルは絶対規則的にした方が良いです。特に弁護士に投げたあととか「【最終版】20181205_scouty投資契約書_〇〇法律事務所review済」とかのタイトルになっていたりするので、カオスなタイトルが付いていると送り間違えや印刷ミスを起こす可能性が高くなり、リスクしかありません。特に、定款変更案は、登記にも関わってくるので絶対間違えられません。定款変更案に修正が加わった時は、特に注意して差分を追うのをおすすめします。

実際、最終版の確認が終わり印刷したところ、バージョン間違えて印刷していたため、再印刷することになりました。投資家に投げる契約書類は、何か工夫をしないとバージョン管理で死ぬな、と思いました。(死んだ)

7. 契約書類の押印問題の認識が甘かった

投資契約書は新規の株主、株主間契約書は新規の株主と既存の株主に押印してもらうことになります。回を重ねれば、重ねるほど多くの株主からの押印が必要になります。しかも、製本したものに割印もしなければならないので一部押印してもらったものを送る、ということも出来ません。また、郵送で押印をまわしていくととてつもなく時間がかかるため、早めに準備をしておき、押印のスケジュールも配慮すべきでした。

そもそも、投資家の方々は海外にいたり、お忙しかったりする方が多いので押印のスケジュール調整がとても難しかったです。またVCも押印までに申請が必要だったりと、時間がかかることを想定しておくべきでした。そういった、投資家のスケジュールに関しても配慮して、全体のスケジュールを組むべきだったなと反省しています。また、次回の資金調達では可能なら、クラウドサイン etc. を使ってオンラインでの署名・押印にしたいです。

まとめ

今回、 scouty にジョインしてから初めて資金調達に携わったのですが、様々な方面に多大なご迷惑をかけてしまいました。なんとか終われたのが奇跡なんじゃないかと思うくらい、最後のプレスリリースまでバタバタとしてしまいました。(ご対応頂いた投資家のみなさま本当にありがとうございました。)ただ、本当に、物凄く良い経験になりました。次回の資金調達は、今回よりもうちょっとスムーズに出来るようになっていたいです。

毎日忙しく、常に何かハプニングが起きているベンチャーでエクイティでの資金調達は、メンタルがすり減る業務 No.1 な気がしているのですが、この note を読んで頂いた方は、ぜひ計画的にスケジュールを立てていただき、私と同じ失敗をしないでいただければ、とても嬉しいです。同じような経験をしている方、おすすめのアイディアがある方はぜひ、ディスカッションさせていただければ、幸いです!ご質問もあれば、質問箱にどうぞ。


今後、スタートアップ界隈のみなさまの参考になるような情報を色々発信していく所存ですので、何卒よろしくお願いいたします。

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