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現代詩

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書きためた現代詩です。
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2024年4月の記事一覧

【詩】餞

父が卒寿を迎えたある日に 私に施設から長電話をしてきて 何気ない調子でぽつんと言った 「お…

葉山美玖
1か月前
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【詩】八月の雨

くらい蒸し暑い午後に 男のことを考えるのに飽きて ぶらぶらと生姜焼き定食を食べに出かけた …

葉山美玖
1か月前
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【詩】あまえない

一万円札なんまいかつかって あなたに謝りに行った そしたらそこには あなたの一万円札なんま…

葉山美玖
1か月前
5

「納屋」を読め!

詩誌「納屋」第一号が刊行された。吃驚した。こんなに刺激的な対談と詩を読んだことがまず今ま…

葉山美玖
2か月前
8

【詩】私の咎

コロスコロス 私は殺す 五才の時の朝焼けを殺害する 十七才の時のうろこ雲を殺害する 三十二才…

葉山美玖
2か月前
9

【詩】おんな浪裏

わたしのおとこがほれている おんなのにっきをよんだ しきゅうがほしかったという ぐちゃぐち…

葉山美玖
2か月前
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当事者が声を上げるとき

ここにUPするのは、かなり昔、もう10年以上前に書いた詩だ。この詩は、当時今はもう無いYahoo!ブログで、三カ所に転載させてくださった人がいた。その頃の、何も持っていなかった私の心の叫びだった。 だがこれは、当時の主治医にも、そして詩のほとんどの合評会でも黙殺された。彼らが言うには「もっと前向きになりなさい」「誰にも愛されたことがない人なんているわけないでしょ」と、言うのだ。 でも、私はこの過去の詩を思い切ってここに再度上げる。 当事者には当事者の声がある。ただ、マジョリテ

【詩】揺れ、(る)

あなたの迷彩色のジーンズに   指が触れ わたしの     つい この間切ったショートヘア…

葉山美玖
2か月前
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【詩】SHUNGA

JRを王子で降りて、荒川線にふたりで乗った。都電は、侘びし気な雰囲気の客でいっぱいだった…

葉山美玖
2か月前
3

【詩】朝の街灯

あなたの精液を根こそぎ搾り取った朝 井の頭公園の夏というより春めいた街灯を歩き 各停の始発…

葉山美玖
2か月前
6

【詩】開花

山を越えて はるかにふたり。 父は死に わたしはいきる。 ほんとうにだましたのは どっち。 …

葉山美玖
2か月前
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【詩】悪魔祓い

私の頑固な顎があなたを追い出してしまった。テーブルには、桃色のローストビーフが客の肥えた…

葉山美玖
2か月前
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【詩】六月

こまつなとだいこんをきざんで かつおのだしをとって あさのみそしるにいれる はまぐりごは…

葉山美玖
2か月前
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【詩】ミント色の靴

父とまたしても喧嘩して しばらく会わないことにして 靴の裏をぺたんぺたんと 地面にくっつけて歩いていると 私はようやく自分の足で歩くことができた どこまでも真っ直ぐに 一人きりで歩いて行くことは 自信はつくけれど とてもとても頼りないことで 私は素直にボーイフレンドの前で泣ける気がした 暗い道路には信号の青が照り映えていたけれども いつもの食堂は臨時休業だった 部屋の鍵をかちゃりと開けて たらこと大葉のスパゲッティを茹でて レタスと林檎のサラダに人参ドレッシングをかけ