横山ミィ子

一級知的財産管理技能士(コンテンツ)/特許事務/G・オーウェル研究/少年画報社「思… もっとみる

横山ミィ子

一級知的財産管理技能士(コンテンツ)/特許事務/G・オーウェル研究/少年画報社「思い出食堂」シリーズ(時々)/長澤唯史先生著『70年代ロックとアメリカの風景: 音楽で闘うということ』イラスト/ HP http://kobutachan.jp/インスタMiko YOKOYAMA

マガジン

最近の記事

問わず語り 横山ミィ子『蛤天丼』

2023年9月19日発売の少年画報社コンビニコミック『思い出食堂 Bランチ ナポリタン編』に、10ページの読み切り漫画作品『蛤天丼』を掲載して頂いた。どうぞよろしくお願いします。 小学生の女の子二人が主人公だが、描きたかったのは彼女たちの周りにいる大人たちだった。子どもたちを見つめ、きちんと向き合い、言葉でもって説得できる大人たちを登場させたかった。大人というのは、別に子供たちのことを二の次で好き勝手しているのではなく、やむを得ない事情もあるものだ、という側面である。またそ

    • 岡和田晃さんの評に興味を惹かれ、藤本紘士さん『鳥の餌を盗む』を読みました。文学という文字が織りなす世界の底力を、改めて感じています。残酷な現実を描きつつも、思い出すたびに胸が締め付けられるような、光ある余韻を与えてくれる作品です。 https://www.keikousyaweb.com/おしらせ-1/図書新聞に載りました/

      • 著作権について語る法律家や専門家には、ぜひ、ご自身のお好きな著作者、著作物のお話も大いにして頂きたい。クリエイターや著作物ユーザーにとって「この人の話を聞きたい」と思わせるのは、法律の知識とともに、文化活動や芸術作品への愛とか敬意とかの「まなざし」の濃さだと思う。

        • スペインの「発見」とフラメンコ

          マティス展が来るという、2023年の暑く熱い上野公園に足を踏み入れた。といっても目当ては国立西洋美術館の企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」である。その規模は決して小さくなく、セルバンテス『ドン・キホーテ』の挿絵、ベラスケス、ゴヤ、ドラクロワ、ピカソ(小さい作品だがど迫力!)、などスペインを代表するアーティストたちの作品が一堂に会する。私が行ったのは土曜の午後だったが、同日にかなり賑わっていた東京国立博物館の『古代メキシコ展』と比べても、穏やかに観覧でき

        問わず語り 横山ミィ子『蛤天丼』

        • 岡和田晃さんの評に興味を惹かれ、藤本紘士さん『鳥の餌を盗む』を読みました。文学という文字が織りなす世界の底力を、改めて感じています。残酷な現実を描きつつも、思い出すたびに胸が締め付けられるような、光ある余韻を与えてくれる作品です。 https://www.keikousyaweb.com/おしらせ-1/図書新聞に載りました/

        • 著作権について語る法律家や専門家には、ぜひ、ご自身のお好きな著作者、著作物のお話も大いにして頂きたい。クリエイターや著作物ユーザーにとって「この人の話を聞きたい」と思わせるのは、法律の知識とともに、文化活動や芸術作品への愛とか敬意とかの「まなざし」の濃さだと思う。

        • スペインの「発見」とフラメンコ

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 書籍レヴュー
          横山ミィ子
        • 映画レヴュー
          横山ミィ子
        • 著作権
          横山ミィ子
        • ジョージ・オーウェル
          横山ミィ子

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          トップバイラオーラ渾身の作品 内田好美フラメンコ舞台作品『孤独生vol.2/10~対価~』

          ぐるりと扇状に設置された客席について開演を待つ。流れるのはニルヴァーナのアルバム『Never Mind』で、カート・コバーンの唯一無二のエネルギーと存在感にしばし思いを馳せる。内田好美氏のソロ舞台作品の1作目は2022年5月15日に行われた『孤独生」vol.1/10~覚醒~』であった。私が彼女に師事した2006年頃から、いくどとなく彼女のバイレ(舞踊)を観てきたが、1回目の公演では、そのバイレのレベルのあまりの飛躍に驚いた。もう彼女は日本トップのバイラオーラ(舞踊家)と言って

          トップバイラオーラ渾身の作品 内田好美フラメンコ舞台作品『孤独生vol.2/10~対価~』

          川上弘美『真鶴』を読む。主人公の周りにしか焦点が合っておらず、題名にもなっている実在の町がゆらゆらとしか描かれていないのが気になる。私が先月訪れた真鶴町では、初対面の方とよく喋った。地元のコーヒーが美味しかった。坂のきついあの町の、まだ歩いていない道を歩きにまた訪れるつもりだ。

          川上弘美『真鶴』を読む。主人公の周りにしか焦点が合っておらず、題名にもなっている実在の町がゆらゆらとしか描かれていないのが気になる。私が先月訪れた真鶴町では、初対面の方とよく喋った。地元のコーヒーが美味しかった。坂のきついあの町の、まだ歩いていない道を歩きにまた訪れるつもりだ。

          名古屋・大須の「描ける漫画喫茶」漫画空間さんにて、著作権のお話をさせて頂きます。個別のご相談はお受けできませんが、著作権の理解へのヒントをご提供できればと。 詳細はリンク先のブログをご覧ください。オンライン配信は開催時間のみです!https://ameblo.jp/mangakukan/entry-12798819262.html

          名古屋・大須の「描ける漫画喫茶」漫画空間さんにて、著作権のお話をさせて頂きます。個別のご相談はお受けできませんが、著作権の理解へのヒントをご提供できればと。 詳細はリンク先のブログをご覧ください。オンライン配信は開催時間のみです!https://ameblo.jp/mangakukan/entry-12798819262.html

          漫画という最高の表現 井上雄彦『SLAM DUNK』

          2022年12月に封切りされたという映画『THE FIRST SLAM DUNK』が、2023年4月現在でもまだ公開中である。文句なしのロングラン、大成功といえよう。私は1月に鑑賞したが、「井上先生のあの絵が動いている」という映像は強烈な体験であり、しばらく興奮冷めやらず、原作全巻に戻るに至った。 リアルタイムで読んでいたのは中学から高校時代だったが、当時ひたすら「カッコいい」「面白い」という感想しかなかった当作品も、今読み返すとその魅力の秘密に大いに気付かされている。あく

          漫画という最高の表現 井上雄彦『SLAM DUNK』

          実演家~パフォーマー~への讃歌

          法律を勉強していると、架空の人物のことなどを「甲」「乙」と呼んだりするが、「実演家」という言い方もそれに負けず劣らず顔の見えない印象だ。著作権法において、著作者は「著作物を創作する者」とされ、実演家は「俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者」とされている。言い換えをしてみると、「役者、ダンサー、ミュージシャン、指揮者、コメディアン、噺家(はなしか)」などのパフォーマーの皆さんのことである。改めて見ると、実演家は著作権法の最初に言及されてい

          実演家~パフォーマー~への讃歌

          けいこう舎さんの『短編小説を愉しむ文芸誌 吟醸掌篇』を購入しました。わくわく。

          けいこう舎さんの『短編小説を愉しむ文芸誌 吟醸掌篇』を購入しました。わくわく。

          知財検定1級(一級知的財産管理技能士)(コンテンツ)に合格しました。

          知財検定1級(一級知的財産管理技能士)(コンテンツ)に合格しました。

          音楽でありかつ文学 筋肉少女帯『サボテンとバントライン』

          マイク・ニコルズ監督『卒業』、ジョン・シュレシンジャー監督『真夜中のカーボーイ』、ミロス・フォアマン監督『カッコーの巣の上で』などの、「アメリカン・ニューシネマ」の映画を最近ぽつぽつと観てきた。初めはその(『卒業』のダスティン・ホフマンの)軟弱な精神に憤怒していた私も、「体制に反抗した結果挫折していく若者たち」にシンパシーを感じた、若者たちの思いが、ぼんやりと見えてくるようになった。 本記事のタイトルに上げた歌も、アメリカン・ニューシネマへのシンパシーから生まれたものと考え

          音楽でありかつ文学 筋肉少女帯『サボテンとバントライン』

          フラメンコという表現ー西脇美絵子さんの訃報に寄せて

          偶然のきっかけで、フラメンコ界の重要人物(注)、西脇美絵子さんの訃報を知った。2022年10月の「第31回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」」の選考委員をなさっていたとのことで、最後まで、日本の若きフラメンコ・アルティスタたちに向き合っていたのだと思うと万感迫る思いである。 このことをきっかけで選評を読むに至ったが、全編を通し、「気持ちが伝わってきた」「うまく表現されていた」という評に、「どういう気持ちが」「何がうまく表現されていたか」が書かれていないのが気になった。小

          フラメンコという表現ー西脇美絵子さんの訃報に寄せて

          問わず語り 横山ミィ子『お雑炊』

          12月5日発売の少年画報社コンビニコミック『年末年始思い出食堂 三太の新春大感謝祭』に掲載して頂きました。どうぞよろしくお願いします。 本作は壺井栄の小説『二十四の瞳』に依拠(いきょ)し、木下惠介監督の同名映画を参照して制作した、いわゆるオマージュ作品である。 私は作品制作時に音楽を聴くことができない(だんだん聴こえなくなり、気づいたらCDが終わっている)のだが、人の話は聴けるので、漫画を描いている時にBGMとしてラジオ番組やポッドキャスト、落語を聴くことが多い。そんなこ

          問わず語り 横山ミィ子『お雑炊』

          男性が描く女性と子供たちの物語 久松静児監督『月夜の傘』

          冒頭で子供たちがシューベルト作曲『野中の薔薇』を歌っているが、向田邦子は「のなか」を「よなか」、つまり『夜中の薔薇』だとずっと思っていた、というエピソードがある。『月夜の傘』も、月夜に傘は要らないのであって、なにか「夜中の薔薇」みたいな勘違いか、言葉遊びのようなものを考えていたら、見つけたのが「月夜の蟹」。月夜に捕れる蟹は身がやせていて美味しくないことから、「見掛け倒し」を意味することわざだそうである。本記事で取り上げる映画(本作品)の原作は壷井栄の同名の小説。壷井栄といえば

          男性が描く女性と子供たちの物語 久松静児監督『月夜の傘』

          プロの仕事が響き合う 蛭川伊勢夫監督『東京の空の下には』

          易者である藤川(宇野重吉)の人生の一幕。その顧客や家族、仕事仲間、近隣の人々に悩まされ、翻弄されながらも、人情や真理に背中を押され、新しい道を見つけていく。 この頃、映画を観るときに気になるのは、「誰を」「どのように」描いているか、ということだ。強者なのか、弱者なのか。弱者はどうしてそのような境遇にあるのか。その行動の背景には何があるのか。人は何に潰され、何に救われているのか。ストーリーもわかりやすく、気負わずに観ることができながらも、地べたで必死で生きている登場人物たちに

          プロの仕事が響き合う 蛭川伊勢夫監督『東京の空の下には』